27 ルイード皇子の部屋に放置されましたがどうしましょう
うーーーーん。
どうも、こんにちは。リディアです!
ただ今ちょっと困った事になっております。
え?今?
私、王宮のルイード皇子の部屋にいます。
王宮に到着した途端、陛下の命令だと言われルイード皇子の看護を任されてしまいました!
カイザはエリックと陛下の所へ、昨夜の話をするために行ってしまいました。
イクスは部屋の外で待機中です。
部屋には私とルイード皇子の2人きりなのですが…
皇子が布団を被ったまま出てきません。
昔のアニメでよく見た、子どもが布団被って丸くなっている姿を初めて生で見ました。
1人にしろ。声をかけるな。
と命令を受けている王宮のメイド達が、皇子に何も言わず私をこの部屋に放置して行きました。
皇子は私がいる事にも気づいていないでしょう。
え。これ、私どうしたらいいの?
まず、皇子の専属メイドさんから聞いた話によりますと…皇子の身体から毒が検出された事に大きなショックを受けて、この状態になってしまったそうです。
ご飯も食べない、口も聞かない、でほとほと困り果ててるところに私がやって来たという訳です。
目の輝いたメイド達に、「よろしくお願いします!」って任されてしまいました。
どうやら期待されてるみたいですね。
……いや!!!私にも何もできませんけど!?
私だって昨日久々に会話した程度の仲なのに、一体どうしろと!?
慰められる自信がないわ!
うーーーん。とりあえず、皇子は今どんな心境なのかしら?
悲しんでる?怒ってる?
はぁ…。
部屋に入ってからしばらく入り口で立ち尽くしていたけど、このままじゃダメよね。
私はベッドに近づき、ルイード皇子に声をかけた。
部屋に入ってきたものの、まだ声すらかけていなかったのだ。
「ルイード皇子様。リディア・コーディアスでございます。
ご体調はいかがでしょうか…」
言い終わるかどうかのタイミングで、布団がガバッとめくり上げられルイード皇子が起き上がった。
頭がボサボサになっているけれど、相変わらず幼い子どものようで可愛い姿だ。
え!?普通に起きたけど!?
声かけても無視するって話だったのに…。
クリッと大きな瞳は、少し不安そうな色を滲ませながらも私を見つめた。
だがその目の下にはクマができていて、昨日よりも疲れたような顔をしている。
昨夜から食事を取っていないというのも原因かもしれない。
服は恐らく寝巻きのままだ。薄着だと、皇子が痩せ細っているのがよくわかった。
「リディア…」
皇子の声は少し震えていた。
目にも少しだけ涙が浮かんでいるかのようにも見える。
まるで助けを求めるかのようなその弱々しい声に、胸がぎゅっとなった。
…そうか。ルイード皇子は不安だったんだわ。
突然自分が何年も前から毒を飲んでいた事実を知って…。
誰が毒を盛ったのかもわからない状態だし、周りの人達を信じられなくなっていたのね。
メイド達に顔を見せなかったのも、敵か味方かわからないから…。
だから陛下は私に皇子のことを頼んできたんだわ。
捨てられた子犬のような姿のルイード皇子。
こんな私にも微かにある母性本能が疼いちゃうわ。
私は震えていた皇子の手をそっと握った。
「大丈夫です。ルイード皇子。私はあなたの味方です。
それに…毒が完全に抜けたら、身体も治りますよ。
だからお食事を召し上がってください。
今運ばせますから」
「い、嫌だ…。また毒が入ってるかもしれない…」
皇子は首を振って嫌がった。
毒が発覚したのだから、調理だって相当気を使って厳重警備の中作っているに違いない。
もう安心だと思うけれど…不安に思ってしまうのも仕方ないよね。
「今はしっかり警備された中で作ってるはずですから、大丈夫ですよ」
「でも…」
皇子はまだ決心がつかないようだったが、このまま何も飲まず食わずでいられる訳がない。
私は皇子の返事を聞かず、部屋の外で待機しているメイド達に食事の準備をお願いした。
ご飯食べて解毒薬飲まなきゃ、治るものも治らないわ!!
無理やりにでも食べさせないと!
不安そうな顔をしているルイード皇子を横目に、用意された食事の中からスープを手に取る。
スプーンにすくい、ふーふーと少し冷ましてから
「はい!あーーーん」
皇子の口に向かってスプーンを差し出した。
「え、ええぇ!?」
少したじろぐ皇子。顔は真っ赤になっている。
あれ?これ…この世界ではやっちゃいけない事?
そんな事ないわよね?
「ほら!お口を開けてくださいませ!
あーーーん!」
ずいっと顔を近づけて威圧すると、ルイード皇子は慌てて口を開けてスプーンを咥えた。
ぱくっ。
よし!食べたわね!
看護といえば、これでしょう!
得意気になった私は、それからもサラダやお肉などを皇子の口に運んでいった。
最後に解毒薬を飲ませたら完了だ!
空になったお皿を下げるようメイド達に伝えると、みんな泣きながらお礼を言ってきた。
ご飯を食べない皇子を心配していたのね。
口々に「さすがルイード皇子の婚約者様」って言われている気がするけど…そこはスルーさせていただくわ。
王族との結婚なんて、冗談じゃない。
ルイード皇子が健康になれば侯爵令嬢とは結婚なんてしないはず…。
皇子が元気になったら婚約解消になるはずだもの。




