23 守ってやる発言やばくないですか
結局部屋までカイザのお姫様抱っこで来てしまった。
うぅ…なんだか悔しい…。
とりあえず近くのベッドに腰をかける。
同じ部屋にいるイクスからは少し不穏な空気が漂っているし、メイも心配そうな顔で私の様子をうかがっている。
2人ともカイザに会うのは久しぶりなはずだ。
犬猿の仲だった私とカイザの今の状態を見て、戸惑っているに違いない。
2人とも、私とカイザを交互に見ている。
まぁ……戸惑っているのは私も同じなんだけど。
もっと仲が悪いと想像していたけど、違ったのかな……?
まさか馬車から部屋まで運んでくれるなんて。
どうせならイクスに運んでもらいたかったというセクハラな考えは置いておいて、一応お礼は言わないとだよね。
「ありがとう……」
うまく素直に言えず、素っ気なくなってしまう。
カイザからの返事はない。
チラッとカイザを見ると、彼はなぜか上着を脱ぎだしていた。
!?!?
は!?なに脱いでるのこの人!!
ここ私の部屋なんですけど!?
やだ!薄いシャツの上からでもわかる、胸筋!
素敵……じゃなくて!!
「ちょ……ちょっと!カイザお兄様!?
なにをしているの!?」
「カイザ様!?」
カイザのこの行動は、私だけではなくイクスやメイをも驚かせていた。
「今日はここで寝る」
さも当たり前かのように、堂々と言ったカイザ。
ポカーーンと口を開けたまま放心してしまった私達。
え……こいつは何を言ってんだ?
「ご、ご冗談を……」
「冗談じゃない。本気だ」
一点の曇りもない綺麗な瞳……っておい!!
言い返そうとした私の口に、カイザが人差し指を当ててきた。
しゃべるな、という事だ。
ジロっと睨むと、カイザはメイに退室するように伝えた。
メイは不安そうに私の方を振り返りながらも、ドアに向かって行く。
メイが出て行ったのを確認して、カイザが小さな声で言った。
「今日ここに暗殺者が来る可能性がある」
カイザの言葉に、私とイクスが固まった。
暗……殺者?
ここに……って私の部屋?
なぜここに暗殺者が来るのよ。
……まさか、私を殺すため……?
一気に真っ青になる私。
「暗殺者って……リディアお嬢様を狙って!?
なぜですか!?」
イクスも同じくらい真っ青になって慌てている。
彼はなにも知らないのだから仕方ない。
私には、その理由がわかった気がした。
「ルイード皇子が毒に侵されていると、私が報告したからですね……?」
「……!?」
「……そうだ」
イクスはとても驚いていたが、詳しくは追及してこなかった。
私とカイザの様子を、黙ったまま見つめている。
「もしその事が毒を盛った犯人に知られたなら、お前は狙われる事になる。
しかも今夜だ。
ルイード皇子の毒の調べが終わる前に、なにか知っているかもしれないお前を殺しておく必要があるからだ」
カイザの真剣な顔……これが現実なのだというのが伝わってくる。
公爵家との争いが起きるかもしれないとは考えていたが、まさか命を狙われるなんて。
ガクガクと身体が震えてくる。
怖い……。
ぎゅっ
突然、カイザに優しく抱きしめられた。
「大丈夫だ!俺が守ってやるから!」
「お嬢様!俺もお守り致します!」
2人からの守ってやる発言に、一瞬で恐怖が消えた。
えっ……ぎ……ぎゃああああーーー!!!
ま、守ってやる!って……そんな漫画のセリフ!!
実際に言われるなんてーー!!
しかもこんなイケメン2人に!!
てゆーか、カイザに抱きしめられてるんですけど!?
きゃああーー!む、胸板が!!
やばいやばいーーー!!!
命の危険に晒されてるというのに、自分でも呆れてしまう。
今の私は間違いなく顔が真っ赤になっている事だろう。
「屋敷の警備を厳重にしなくてよろしいのですか?」
イクスがカイザに確認をしている。
私が真っ赤になっているとは知らず、2人は真剣そのものだ。
な、なんだかごめんなさい……。
黙ったまま2人の話に耳を傾ける。
カイザは自然に私から離れていた。
はぁ……。
薄着筋肉男子に抱きつかれると、寿命が縮むわ。
「いや。むしろ、軽くしようと思っているくらいだ。
簡単にこの部屋に入れるくらいにな」
「えっ!?」
カイザの理解不能な返答に、イクスは目を丸くした。
もちろん私だって驚いた。
暗殺者を簡単に部屋に入れる??
「今日逃したらまたいつ来るかわからない。
暗殺者を確実に今日捕らえて、その犯人を追い込む必要がある。
二度とリディアを狙えないようにな」
なるほど……。
私を狙ってやって来た暗殺者を、逆に捕まえてやるのね!
カイザの作戦を素直に聞く私とイクス。
「まず、暗殺者は真っ先にベッドで寝ている人物を狙う。
だから俺が布団を被ってベッドに横になる。
他の部屋に行かれたら守れないから、リディアはこの部屋から出るな。
見つからない場所にイクスと隠れるんだ」
うんうん、と頷く。
さすがずっと戦争に出ていただけあって、頼りになるじゃない!
「2人が隠れる場所はー……そうだな。
ここにしよう。ここに隠れてろ」
うんうん……って、え!?
そこ……小さい方のクローゼットじゃない。
そこに隠れなきゃいけないの!?
イクスと2人で!?




