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悪役令嬢に転生したはずが、主人公よりも溺愛されてるみたいです[web版]  作者: 菜々@12/15『不可ヒロ』1巻発売
本編

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17 第2皇子を救ってやるとしますか


ひやり……。



あ……気持ちいい。



おでこに冷たい何かが当てられた気がする。

誰かが優しく頭を撫でてくれている。

違う誰かは両手で私の左手を握りしめてくれている。



なんだろう……すごく安心する……。



目を開けると、金色の髪の毛の隙間から覗く薄いグリーンの瞳と目が合った。

元々白い肌をしているその人は、さらに白く……いや真っ青な顔をしていた。



エリック……お兄様……?



「リディア!目が覚めたか?」



エリックの問いかけに、こく……と力なく頷いた。

その時左手をさらにギュッと握られた。

そちらを見ると、イクスが泣きそうな顔で私を見ている。



手を握ってくれてたのはイクスだったのね。


イクスのこんな顔……初めて見た。

いつも落ち着いてクールな姿しか見てなかったから忘れていたけど、まだ17歳の少年だったわね……。



私はイクスに笑いかけて、手を握り返した。

まだあまり力は入らなかったけど。


イクスは安心したのか、「はぁーー……」と大きなため息をついて、握っている手に自分のおでこをコツンと当てていた。

イクスの後ろでは、メイが泣いている。



私…なんでベッドに寝ているんだっけ?



「第2皇子の話をしていたら、急に苦しみだして倒れたんだ。

顔も真っ青で、少し痙攣もしていて……。

みんなすごく心配したんだぞ。

リディアがそんなにも第2皇子に会いたくないと思っていたとは……」



そ、そんな状態だったの?

そういえばすごい頭痛に襲われたような……。



エリックは相変わらず無表情だが、どこか苦しそうに見える。

手は私の頭から頬に移動していた。

頭を撫でてくれていたのは、エリックだったのね。



「心配かけてごめんなさい。

もう、大丈夫だから……。

ちょっと頭が痛くなっちゃっただけなの。

それに……第2皇子に会いたくないなんて思ってないですから」



半分本当で半分ウソだ。

できる事なら、会いたくない。

王宮なんて関わりたくもないわ。

私は平穏で落ち着いた暮らしをしたいんだから。


でも、毒殺される事がわかっているのに放っておくなんてできない。



「でも、こんな体調で……。

明日動くのはキツいだろう。

会うのはまた後日にしてもらった方が……」



エリックの心配は素直に嬉しかった。

後ろでイクスやメイもうんうん頷いている。

みんなから大事にされているようで、つい顔が綻んでしまう。



「大丈夫です。ゆっくり寝て休みますから」



そう言ってエリック、イクス、メイに笑いかけた。

3人はまだ心配そうな顔だ。

無理して欲しくないって目で訴えてきているけど、気づかないフリさせていただきます。


「じゃあおやすみなさい!」と言って目をつぶった。



第2皇子の件をどうするか、考えておかないと!

本当は今すぐ起き上がって、紙に書いてまとめたいところだけど……そんな事、この3人が許してくれる訳ないわよね。



寝たフリをした状態で、考えるしかなさそうだ。

私は先程思い出した小説の内容を浮かべた。



えーーーと……第3皇子派閥のレクイム公爵に、少しずつ毒を盛られていた第2皇子……。


身体が弱いとされているのは、その毒のせいじゃないのかしら?

だとしたら、幼い子どもの頃から毒を飲まされていたのかも。

とんでもない男ね!そのレクイム公爵ってヤツは!!

どうして今まで気づかれなかったのかしら!


そもそも、皇子の食事は常に毒味をされているはず。

すぐに死んでしまうような強い毒なら、皇子が口にする事はないだろう。

だから……確実に皇子が食べるように、弱く即効性のない毒を使ったのね。


たとえ弱い毒でも、何度も何度も摂っていたら猛毒になる。

いつ死んでしまうのかわからないのだから、1日でも早く第2皇子に会わなくては!!

頭痛だったからって、先延ばしになんてしてられないわ!



先程頭の中に入ってきた情報の中に、この毒の解毒に効く薬草の名前もあった。

それを飲み続ければ、良くなるはずだわ。


問題は、どうやって毒の事を伝えたらいいのか……。

いきなり言って、信じてもらえるかしら?


無理よね。

どうする?また神のお告げとか言っちゃう?

厨二病みたいで恥ずかしいのよね……あれ。


まぁ、なんとかなる……かな。



しばらくして、3人が部屋から出て行った気配がしたが、本当に睡魔に襲われていた私はそのまま眠ってしまった。


この時は第2皇子の事ばかり考えていて、私の犬猿の仲である兄……カイザの存在をすっかり忘れていた。


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