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今日は楽しい舞踏会。皆、メリケンサックに鞭、木刀、竹刀は持った?

作者: 黒銘菓

 私はミーティア=ドラゴエア、16歳。ティアって呼ばれてるわ。

 今日は楽しい舞踏会。

 お友達のメリノちゃんから招待状が届いたの。

 『例の殿方を連れてきて』って文言付きでね。


 「ここがメリノ家かぁ、立派だな」

 隣で見上げるのは婚約者のフュージート=アンデン、ジートだ。

 「そうね、ティアは全然お嬢様って感じじゃないけれど、でも可愛くて気遣いが出来るとっても良い子よ」

 「ははは、なら君そっくりだ」

 「ふんだ」

 「おいおい、そんなにヘソを曲げないでくれよ」

 「2週間も婚約者を放っておいたら曲がってしまうものよ」

 「ごめんごめん。ちょっと父様の視察で忙しくてね。

 その代わり、今日は必ず埋め合わせするからさ」

 「本当?」

 「本当だよ、嘘なんてつかない」

 「解ったわ。今日は目一杯楽しませて貰うから覚悟してね?」

 「勿論さ」




 「ティア、よく来てくれたわね!」

 「メリノ、誘ってくれてありがとう」

 「その方が、例の?」

 「そうよ私の婚約者の…」

 「やぁお嬢さん初めまして、私はフュージート=アンデン。ジートとお呼びください。

 今宵はお招き頂きありがとうございます。」

 そう言ってメリノの手にキスをした。

 「初めましてアンデン様、お話はティアから聞いてるわ」

 「おや、ティアはなんて?」

 「とっても素敵な情熱を持つ人ってね。さぁ、舞踏会はもうすぐ始まるわ。持ち物は?」

 「私はここにあるわ」

 手に持った小さなバッグを指さす。

 「矢張り私が持とう。紳士として女性に重荷を背負わせるのは気が引ける」

 「大丈夫、これは私が持つべきものだから」




 「なんじゃこりゃぁあああ!」

 ジートは絶叫した。舞踏会は華やかで豪華な食事とダンスがあり、そこには微笑む美女が沢山いる場所だと思っていた。

 「おんどりゃぁタマ取ったらぁ!」

 「このドヘタレがぁ!」

 「私の味方しろこのマザコン!」

 今、彼の目の前に広がっているのは阿鼻叫喚の地獄絵図。

 お淑やかなお嬢様がパートナーを各々(おのおの)の得物でシバいている光景だった。

 「ティア、これは一体⁉」

 「こういうこと!」

 ティアの手にはメリケンサック。それが今、ジートの顎にクリーンヒットした。

 「顎が外れた音ッ!」

 「んぇ(なんで)ほんあおお(こんなこと)?」

 「私は、三股浮気男を殴るために、ここに来た!この浮気者!」

 拳を握り締めて、胸倉を掴む。

 「あっえ(待って)あっえうえ(待ってくれ)

 「問答、無用!」


 昔々、『クズを思いっ切り()とうの会』というものがありました。

 それは参加者を騙すために『舞踏会』と呼ばれていたそうです。

 経験者からの言葉、『産後の恨みは一生』をここに記します。

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