9 ホラー?
目が覚めスマホを確認すると昨日は早く寝たので朝の6時すぎだった。
「いいね」
目覚めも良いし頭もスッキリ。
レベルが上がった影響かな?
残っている袋のラーメンを食べた後、一服してクリーン魔術で綺麗にするとバックパックを背負ってエスカレーターに乗り、ゆっくり下へと向かっていく。
体勢を低くして天井が切れて下の階を見渡せるようになると、デパートの食料品売り場のように、広大な部屋になっていた。
部屋の中の所々に食料が置かれた棚があり、壁際にはびっしりと果物や野菜、魚と肉まで置かれている。
おっ、あそこはお菓子コーナーか。
見ていると直ぐ下に到着しエスカレーターから降りると、棚の陰から何やら魔物が出てきた。
「……ホラーかよ」
出てきたのは、このデパートのスタッフが着ていたであろう制服で、顔が赤色や青色のメタリックなのっぺらぼうに、体格は様々だが形だけだと人に見えなくもない?
首が少し長かったり手足が細長かったりと、何か見た者に不安感を抱かせる見た目だ。
動きが偶に止まってカクカク変な動きをするので気持ち悪い。
もっとファンタジーな魔物は居ないのか!! と言いたくなる。
ま、ファンタジーと言えばファンタジーなんだけど、そうじゃなくてゴブリンとかオークとかさぁ。
定番の魔物は今の所ゾンビくらいしか見てないぞ?
こいつら、どういう動きをするのか全く見当つかないんだが。
メタリックだから熱や電気に弱いかな?
しかし、あの動きがサイレント的なクリーチャーに見えて仕方がない。
何か気が進まないけど、こいつらを倒さないと食料を全部収納するのは無理そうだし……やるか。
エスカレーターを降りた所は天井が少し下がっているようで、この範囲はまだ部屋の中と認識されていないのか、魔物は向かってこない。
周囲を確認するとどうやら部屋の真ん中にエスカレーターがあるみたいだ。
一歩踏み出すと、スタッフが全員一斉にコッチを見て、カクカクと動きながらこちらに寄ってくる。
「気持ち悪」
正にサイレント!!
とりあえず数を減らすために魔術で燃やす。
右の掌を前に持ってきて上に向けると、魔法陣を掌の上に展開させる。
すると、魔法陣の上に青白い火の種が生まれた。
「現代科学の応用を味わえ」
その瞬間、青い火種が大きく燃え上がり、青い火の龍のように伸びて周囲を彷徨いながら魔物を燃やしていく。
青い火は高温の証。
燃やされた魔物達は青い炎を立ち上らせながら燃やし尽くされていく。
この魔術は、高温の火種を魔術で作りだした後、自分でコントロールしているのだが、魔力の消費がめちゃくちゃ大きいので今の所は10秒程しか続かない。
さて、此処からは近接戦でどういう魔物か確かめながら倒していこう。
残り3体。
12体居たのが9体も魔術で倒せたのは幸いだ。
刀を抜いて右手で持ち腰を落として構える。
するとその瞬間、左に居た魔物が凄い速さで迫ってきた。
さっきまでカクカク動いてたくせに!!
戦闘になると真面に動くのか。
しかも、メタリックな細長い右手が剣のように変形している。
液体金属ですか!?
ガキィーンと刀を斜に構え何とか受け流すと、手を返し上から振り下ろし袈裟斬りにして、すぐさま左足で胴体を蹴って距離を離す。
今ので仕留められたのか分からない、追撃があった場合の為の蹴りだ。
勿論刀に魔力を流しているので斬れたが、ズールの時とは違う手ごたえだった。
ズールより硬い。
ズールの時はスパッと斬れたのに、こいつらはズパッって斬れた感じだ。
この刀で良かった。
普通の武器なら確実にこっちが殺されてるな。
数メートル吹っ飛んだ魔物はピクリとも動かない。
「うわぁ……」
動かない魔物からは身体と同じメタリックな液体が床に広がっていた。
気持ち悪!
続けざまに残りの2体が迫ってきていたので、火の魔術で1体を牽制するが、迫ってきた魔物が思っていたより速く、魔物の蹴りを喰らい吹っ飛ばされる。
床に転がり止まると直ぐに体勢を整えるが、お腹に痛みが走った。
視線を落としてお腹を確認すると、Tシャツがスパッと切れて、腹が少し切れていた。
魔物を見ると足が剣のように変形していて、それが元に戻っていく所だった。
「マジで液体金属か」
未来から来たのかお前ら……。
普通の服なら今ので内臓ぶちまけてたな。
しかし、それが逆に頭がスンと冷静になった。
「まあ、お前らがどういう魔物かは大体分かったし……もういいか」
掌を向けると魔法陣が展開する。
そこから小さな青い火の種が弾丸のように飛んでいき、魔物の胴体に当たった瞬間、魔物を青い炎が包んだ。
「ブルーファイヤ? とか名前付けた方がいいかな?」
まんま過ぎるのでやめよう。
今回の魔物も2つ新しい証をドロップしてくれたので有難い。
『料理人の証』×2
『薬師の証』
『武闘家の証』
『魔導士の証』
12匹倒して5つの証が出るのは、結構な確率では?
まあそれより、やっと魔導士の証が出たので、武闘家になれるのか魔導士はどうなるのかを検証する時が来た。
ちなみにこいつらの魔石をリストで見ると名前が分かった。
『カルマの魔石』
あの魔物カルマって言うらしい。
業ですか……。
さて、気を取り直してさっそく武闘家の証を使ってみる。
しかし何も起こらない。
えっ……ずっと魔導士のままなのか?
転職できない!?
「マジで!?」
これほど説明書が欲しいと思った事は無いぞ!
それから暫く色々試してみるが何も起こらなかった。
…………いや、何か転職する方法はあるはずだ。
職業をアイテムを使って就くって事は、他の証を試す事が出来なくなる。
それだと何て言うか……これを用意した側の気持ちになれば、何となく転職方法を用意するはず……っていう感覚なんだよな。
誰かが用意したのかそういう世界なのかは分からないが。
こういう時に鑑定があれば…………。
「あっ」
そう言えばアウトドア用品の中にスコープがあったはず。
あれにクラフトで鑑定機能を付ければ分かるかも?
バッグからマルチスコープを取り出すと、握ってイメージを固める。
見たモノの情報を表示するように……発動。
「クラフト」
別に口に出さなくてもいいんだが、何となく成功しやすいと思って口に出している。
スコープが微かに光ってスキルが成功した事を教えてくれた。
試しにバックパックを覗いて見る。
するとレンズ越しに情報が表示された。
『【種類】マジックバッグ登山用
【詳細】登山用バックパックに《空間拡張》《重力軽減》《使用者登録》《時間停止》《カット&ペースト》《耐久強化》《自動修復》の効果が付与されたマジックバッグ。中の空間は50メートル四方の空間があり、中の物は時間が停止している。内容物による重さは殆ど感じない。登録されていない者は使う事が不可能。とても頑丈に出来ている。』
「よしっ!!」
鑑定成功!!
スコープなので近い物はちょっと見にくいが。
では証を鑑定してみる。
「……なるほどね」
『【種類】ジョブストーン
【詳細】これは武闘家になる為の物で、使用すると武闘家になる事ができる。《武術の心得》《魔石成長》が付与されている。職業を司る神ラミデルトが作った神の石とも言われている。武術の心得により武術の成長速度が増す、魔力を十分得ると転職可能になる。』
ちょっと忙しくなってきましたので暫く1日1話投稿になります。
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