8 爆弾投下?
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「えーっと、専門学校の話は昨日上に報告しましたよ?」
と、山波さんが言う。
俺は職業とスキルについて現在までで分かっている事を全て説明した。
魔力制御と魔力感知の事から始まり、職業が成長するという事。
そして成長方法も伝える。
スキルを職業なしでも習得できる事も。
すると山波さんは腕を組んで目を瞑り、ジーっと考え込む。
「そういう訳で早急に学園を作り、将来のためにも早めに国民を育てる必要があると思いますよ?」
暫く考え込んでいた山波さんが目を開けて俺を見ながら口を開いた。
「その情報が正しいなら確かに今直ぐにでも始めた方が良いです、が……上を納得させるための材料が足りません、何かありますか?」
ふむ、納得させる材料……普通に将来のためと言っても納得しないのか?
政治は全く分からんからなぁ。
そこでユウが話に入ってくる。
「異世界生物の危険性とか説明すれば……無理か?」
「異世界生物?」
ん? 昨日ドラゴンも異世界生物かもと伝えたはずなのに、山波さんは理解していない様子。
いや、信じていないって感じか?
ここでもう1つ爆弾を落とすとしよう。
「山波さん」
「はい?」
「異世界はありますよ……俺たちは約3年程行ってましたから、異世界」
すると山波さんが固まってしまった。
少ししてやっと復活した山波さん。
「3年も異世界に……時間の流れがダンジョンに似てますね」
「戻ってきた時にはこちら側では約1年程経ってましたよ」
しかし、まだちょっと懐疑的なので俺はスマホを取り出し動画を見せた。
勿論異世界ダンジョンで撮った物だ。
「こ、こんなのが居るんですか!?」
見せた動画にはそれはもう、10階建てのビルより大きな魔物の姿が映っていた。
「それはまだ序の口です……こいつが一番ヤバかったですね」
そう言って最後に戦ったボスを見せた。
動画を見ている山波さんの顔が段々と青くなっていくのが分かった。
「こういう奴も居ますよって話で、今直ぐこんな魔物が地球に来る事はありませんからね? ちなみに、私が売った兵器ですら倒すのは困難です」
山波さんは眉間に皺を寄せて頭を抱えだした。
「自分はちょっと楽観視してました……職業を得てレベルが上がり、以前よりも身体は頑丈になっているしポーションなんて物まである……そう簡単に死ぬ事は無い世の中になったんだと……しかしそれは…………」
あれ? 信じてもらうために見せたのになぜか絶望してるんだけど?
「あの山波さん? これは異世界ダンジョンの魔物なので地球にはまだ出現しませんよ?」
「『まだ』って事はいずれ……」
「あぁ~、そういう意味じゃなくてですね……」
俺はダンジョンを放置するとどうなるか、異世界がスタンピードと魔力溜まりから生まれた魔物によって滅んだ事を説明した。
すると山波さんは真剣な表情で口を開いた。
「つまりダンジョンを全て探し出し、定期的に人や生物が入らないとそうなると?」
「ええ、しかしそれはほぼ不可能です」
「じゃあ……」
「ですがダンジョンの『数を減らす』事は可能です」
「数を減らす……?」
俺は家の風呂場で割ったガラス玉の事を話した。
ダンジョンの核を破壊すればダンジョンは消える。
しかも報酬が旨い事も。
「ユニークスキル……って事は進藤さんも?」
俺は頷いて答える。
「ええ、ですがどういうスキルかは言いませんよ? 個人情報なので」
続けてユニークスキルが、世界中でその人だけのスキルであると山波さんに説明する。
「なるほど……それはかなり魅力的な報酬になりますね、って進藤さんのユニークスキルってもしかして、ダンジョンや魔物の事が分かるっていう……?」
「違います、あれは賢者のスキルです……まあ、この事を公表して国民にも攻略をさせるのかは国が決めて下さい、ですが……自衛隊だけでは全然手が足らないと思いますけどね?」
「ええ、それは分かってます……やはりギルドの設立も早急に進めた方が良さそうですね」
そうそう、体制は早めに作った方が良いと思うぞ。
種族進化の事は他の誰かがした時に伝えよう。
俺だけだと色々聞かれそうだし、身体を隅々まで調べられたりしそうだからな。
金を貰ってもそれはお断りする!
一通り話が済んだと思い一息入れようとした所で、ふと気になって聞いてみた。
「そう言えば、私が賢者という事を上に報告していないんですか?」
腕を組んで顎に手を当てて考え込んでいた山波さんが、こちらに視線を向ける。
「え? ええまあ……進藤さんが賢者という事は方針に関係無い事なので」
なるほど、確かに関係無いか。
ですが……と話し始めた山波さんの話によると、どうやら上の人たちは全体的に賢者を探そうとは思っていない様子。
しかし、一部の者は賢者が誰なのか探しているとの事。
こうなったのは賢者のせいだと言う奴も居るらしい。
なんじゃそりゃって感じだな。
まあ、山波さんによると、総理や大臣は賢者を探すより今やるべき事をやると言った感じらしいので安心した。
そうそう、そんなどこに居るかも分からない誰かのせいにしてる間に、世界は終わってしまうぞって話だ。
ここに居るけどね!
聞きたい事も聞けたので俺たちは、頂いた土地を見に行くと山波さんに伝え、挨拶をして部屋を出ようとした所、山波さんが声を掛けてきた。
「そう言えば進藤さん」
俺は振り返り何? と見る。
「ここのように大きな街以外にも小さな村ができてるのは知ってますか?」
村?
「いえ、知りませんね、帰ってくる途中にも見かけませんでしたが?」
「そりゃ普通は見つけられませんよ、隠れてますから」
「隠れてる? 村なのに?」
「はい、実は……」
そう言って語り出した内容はというと、大きな街に馴染めない人たちが集まって作った小さなコミュニティーが、今は使われていない街の中の施設を拠点にして幾つもできているという話だった。
あぁ、居るよねそういう人たち。
そりゃ無理して大きな街に住む必要も無いしな。
ん?
「えーっと、それがどうしたんです?」
「進藤さんは商人で今は行商人ですよね?」
そう言ってニッと笑った。
「あぁ……私に行商に行けという事ですね?」
「いや、見かけたらで良いんですよ? 彼らも自分たちで頑張って生活してますからね、ただ……物の売買だけでも外とできれば、彼らの中にも秩序ができると思いまして」
うむ、それは確かに?
まあ、商人なんで商売のチャンスがあれば行きますよ?
「分かりました、見かけたら様子を見てみますよ」
「ありがとうございます」
そう言って俺たちは大学を後にした。
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