20 来た魔物?
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夜中に俺が張った結界に顔からぶつかった北海道出身の女優、中谷カリンさんをテントに一晩泊めてあげた。
まあ、テントの中を見て驚いて煩かった以外は特に何も無い。
翌日、朝食を皆で食べた後、お茶を飲みながら中谷さんに色々と北海道の現状を聞いてみた。
あっ、彼女はちゃんと人間である。
俺も最初は屍鬼かと思ったが、ちゃんとダウンジャケットを着て防寒対策もしているし、何より魔物特有の魔力を感じないのでテントに泊めたのだ。
っで、話を聞いて分かった事だが、結構ヤバい状況になっているらしい。
先ず北海道で1番大きな街、果歩路市に周辺の街や村の人達の殆どが避難してきた事で、人が増えて魔物がしょっちゅう襲ってくると言う。
何とか自衛隊や民間人が壁を作り持ち堪えている状況らしいのだが、そこで肝心のドラゴンが偶に集まった魔物を食すために夕川市の方から飛んでくると言うのだ。
「人は襲われた事無い?」
「いえ、夕川市はドラゴンの攻撃によって一瞬で崩壊したと聞いてますね」
なるほど、やっぱり夕川市の近くにドラゴンは居るのか。
北海道のほぼ中心辺りだな。
更に聞くとドラゴンは数匹居るらしく、今まで同時に2匹のドラゴンが飛んでいるのを見かけた人もいるらしい。
北海道はドラゴンの巣になったのか?
ラノベのようにこちらから攻撃しなけりゃ大人しいドラゴン、だったら良かったんだけどねぇ。
北海道の守り神的な? 無理か。
俺は中谷さんをテントの外に連れ出し、ドラコスの死体を見せてこいつがドラゴンと呼ばれているのかを確認した。
「違いますねぇ、これは偶に街に飛んでくる鳥ですよ」
よかった、ちゃんとドラゴンは居るんだな!!
では、さっさと向かわないとドラゴンが自衛隊に倒されてしまう。
急がねば。
という訳で、俺たちは出発の準備を済ませ果歩路市を無視して、夕川市へと向かう事にした。
中谷さんには食料が入った普通のリュックを渡して峪舘まで自力で行ってもらう。
あっ、彼女がここに居た理由は既に分かってると思うが、ただの迷子である。
世界がこうなる前日にこっちで撮影があったらしく、スタッフやマネージャーと果歩路市のホテルに泊まっていた所、突然世界が変わって今まで必死に生きてきたらしい。
スタッフは魔物に殺されてしまい、人が増える果歩路市に居るのが不安になり、峪舘へ行ってそのまま東京へ戻ろうと決意して山に入ったが迷子になった。
しかし、山の中でテントを発見して助けてもらおうと思い走った所、結界にぶつかったのが昨夜の話である。
道なりに行けば海沿いに出られるのに何故迷う?
どうやら雪で道が分からなくなったらしい。
北海道の人でもそうなるのかと思ったが言わなかったよ。
俺には道筋看破があるから迷わないだけで、普通は迷うよねって話だ。
一応中谷さんとは連絡先を交換した。
すると彼女は、スマホが使えるようになっている事を知らなかったらしく、すぐ知り合いに連絡しようとしたらここは山の中で圏外。
シュンと落ち込んでいた。
基地局が全て復旧している訳じゃないので、繋がらない所もまだ結構あるのだ。
落ち着いたら必ず連絡しますと言って彼女は去っていった。
ちゃんと道は教えたので大丈夫なはず。
なんとも賑やかな人だったな。
その後俺たちは山の中を進み、車で行ける所は車で走ってを繰り返し、2日目でやっと夕川市へと到着した。
雪が凄い、流石北海道!!
そして夕川市は……。
「スゲー」
「何も無い」
「これをドラゴンが一瞬で?」
「凄いね……更地だ」
「これがドラゴンの仕業ねぇ」
「早く見てみたいな」
そう、結構大きな街の夕川市があった場所は殆ど更地になっていた。
しかもおそらくドラゴンの攻撃の中心であろう場所は、地面が抉れて数百メートルのクレーターができている。
ドラゴンって倒せるの? って聞きたくなってくる。
更に、こんな事が出来る生物が居る時点で、世界は滅ぶんじゃね? って感じだ。
俺たちがボーっと街があった場所を見ていると、遠くの空に小さな影が現れた。
「あっ、自衛隊が来たようだな」
あれは自衛隊のヘリだ。
「ドラゴンに勝てるのか?」
微妙な所だな。
ドラゴンの数を把握していないのが危ない。
「先に倒して素材が欲しかったんでしょ? もう来ちゃったね」
まあ、それは仕方ないよね。
あっちはヘリだがこっちは殆ど歩きと車だから。
「ねえ、これってドラゴンに変に手を出さない方が良いんじゃ?」
と由奈が言うので俺は頭を横に振って答える。
「ドラゴンは放っておいても被害が広がるだけだ、さっさと仕留めた方が良い」
じゃないと、ドラゴンが成長したらそれこそ誰も近寄れなくなる。
本当に北海道がドラゴンの巣窟になってしまう前に。
いや、既になってるかもしれないけどね。
ラノベ知識だとドラゴンは知性があるってのが基本なんだけど、無いものも居る。
現実のドラゴンが友好的なんて事は無かったか。
まあ、そりゃ魔力から生まれた魔物だもんな。
ん? あれ? ちょっと待てよ?
ここのドラゴンは本当に魔力溜まりから生まれた魔物か?
俺が世界の図書館から得た知識によると、魔力溜まりからこれほど強い魔物が生まれるには、相当時間が掛かるはず。
それこそ数百年単位だ。
なのに世界が変わって地球上ではまだ1年半? 程しか経っていないのにドラゴンが生まれるのはおかしいだろ。
それほど北海道は魔力が濃いのか?
いや、そんな感じはない。
そこで俺の超スーパー天才脳味噌が働いた。
「異世界から来た?」
俺の呟きに皆が俺に視線を向ける。
「異世界から来たって、ドラゴンが?」
ユウの問に俺は頷きだけで答えながら頭をフル回転させる。
あり得ない話じゃない。
「あっ、私達みたいにダンジョンの最下層からやって来た! って事?」
なっちゃんが気が付いたように言った。
「それだ!!」
ビシッとなっちゃんを指す。
俺は世界の図書館で異世界への行き方を調べて、ダンジョンの最下層から行ける事を知った時に感じた引っ掛かり。
それが今ハッキリした。
異世界から地球へやって来るであろう存在。
魔力溜まりから生まれた魔物とかじゃなく、ダンジョンを通ってやって来るモノ。
異世界生物の襲来だ。
今回はドラゴンだったが、これがもし知性ある種族で地球より文明が進んでいる人間なら?
侵略してくる可能性が高い。
って、今はドラゴンの話だな。
もし北海道に居るドラゴンが異世界から来たのなら、結構マズい事になる。
それは何故か?
ドラゴンが存在する異世界のレベルの高さだ。
先程言ったように、ドラゴンという強力な魔物が生まれるには数百年単位が必要である。
そのドラゴンが存在する異世界は、明らかに地球よりレベルが高い事になるだろう。
そんな世界からやって来たドラゴンを、地球の人間に倒せるか?
「俺たちも急いで行くぞ!!」
自衛隊が向かった方へと俺たちも走り出した。
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