18 北海道。
評価、登録、いいね、感想をして頂きありがとうございました。
誤字脱字報告ありがとうございました。
三橋さんとの商談を済ませた俺たちは宿に戻り、ドラゴンが居ると言われる北海道に行く方法を話し合っていた。
「やっぱり北海道新幹線の線路を歩いて行くしか無いかな?」
「いや、他にもあるだろ!?」
「流石ヨウ君、一番あり得ない方法を思いつくとはね」
「やっぱり船は出てないのかな?」
「魔法で空飛べたら楽なのにねぇ」
「おっ、美晴が飛んでいる所を見るのも良いな」
「下から覗いちゃだめよ? あ・な・た」
若干2名ズレているが、概ね決まりそう? だった。
しかし、そこでユウが提案する。
「宮本さんの船を魔導化できないのか?」
なんと!?
目から鱗とはこの事か!?
目を見開きユウを見る。
「何だよ?」
「いや、まさかユウからそんな方法が出てくるとは思わなかったから驚いてた」
「どういう意味だよ!?」
そのままですが?
そうか、宮本さんの漁船なら行けるかな?
俺は既に線路を歩いて行く事しか考えてなかったわ。
そういう訳で宮本さんの所へ行き船を魔導化しても良いか聞くと、快く了承してもらえたので船を泊めてある港へ向かう。
宮本さんの船は結構大きい。
これなら北海道に行けるかな?
「宮本さん、船が動けば北海道まで行けますかね?」
「ぁあ、この船ならぁ行けるよ」
では、という事で船をクラフトで魔導化しました。
「ほんに船が動いてらぁ! こりゃあ良い!!」
どうやら喜んでもらえたようで良かった。
「じゃあ明日、朝一に北海道へお願いしますね」
「おう、任せとけぇ! はぁ~、これでやっと漁に出られるなぁ」
感慨深そうに船を撫でる宮本さん。
俺達は宮本さんに触れずにそっと宿へと戻った。
翌日、日の出と共に俺達は宮本さんの船で北海道へと向かう。
幸い天気は晴れていたので順調に進み、3時間ちょっとで峪舘の東にある小さな街の港に到着した。
「ありがとうございました」
「いんやぁ、船を動くようにしてもらってぇ、こっちこそ礼を言いたい、ありがとうなぁ」
「帰りは気を付けて下さいね」
「ぁあ、ホンマに迎いはええんかい?」
「ええ、何とかします……早く戻らないとドラゴンが来ますよ」
「おっ、そりゃぁ急がにゃならんな、んじゃまた魚を獲りに来てくださいなぁ!」
「必ず行きまーす!!」
そう言って宮本さんの乗った船は離れていった。
船が行って急に静かになる周囲の雰囲気が、嵐の前の静けさに思える。
港から街を見回すが生物の影が全く見当たらない白銀の世界。
ここら辺に来た時は晴れが続いてたから、来る前に積もった雪だな。
ほ~らユキ、お前の名前になった雪だぞ~。
見せるためにバッグの蓋を開けて見せてやるとバッグから顔を覗かせて直ぐに引っ込める。
『寒い~』
おう、猫だな。
直ぐバッグの中で丸まってしまった。
そんなユキも可愛いねぇ。
「スゲー静かだな」とユウが言う。
「ドラゴンが居るって聞いてたけど、暴れてはいないのかな?」
とはなっちゃんの言葉。
「避難場所はどこだろうね?」
由奈は人がどこに行ったのか気にしている。
「たぶんここの人達は峪館に避難してると思うぞ」
大きな街は壁で囲っているみたいだし。
おっちゃんと美晴さんはのほほんとしながらも周囲を警戒している。
この2人も異世界ダンジョンで大分鍛えたからな。
結構頼りになる2人だ。
由奈以外アンデッドだけどね。
俺達はキーに収納してある車を出して北海道の中心辺りへ向かう事にした。
先ずは北海道で1番大きな街、果歩路市辺りに行けば人は多そうなので聞き込みして、ドラゴンがどの辺りに居るのか調べないとな。
雪が積もっているのでタイヤをクラフトで、スタッドレスタイヤに変えると出発した。
そんな俺たちが海沿いを走り北上していると、途中で空を飛ぶ魔物が姿を現す。
大きな羽を広げ飛んでいる姿は、ゲームなどで見るプテラノドンに似ている。
「あれって……ドラゴン? それともプテラノドンか?」
「いや、恐竜は居ねぇだろ……とも言えないか? 魔物が居るもんな」
「結構大きいわね」
「もしかしてあれがドラゴン?」
「大きな鳥に見えるわねぇ」
「あれくらいならワシでも斬れるぞ?」
確かにあれならここに居る誰でも余裕で倒せそうだな。
もしや、あれを見た人がドラゴンとか言ったんじゃないよね?
そうなら流石に温厚な俺でも怒るよ?
間違った情報を流した奴。
「あっ、こっちに来た」
と由奈が言う。
視線を戻すと1匹の鳥? が滑空しながら俺達の方へと飛んできていた。
「ワシがやろう」
そう言っておっちゃんが鞘に入れたままの剣を持って車を降りる。
俺達も車から降りて鳥? を見ると段々とその姿がハッキリとしてきた。
「あれは鳥じゃないぞ、羽毛じゃない」
「コウモリみたいな羽だな」
「やっぱプテラノドンだよ」
「毛の無い鳥みたいで気持ち悪いね」
「あなた気を付けて下さいね」
「任せとけ」
するとおっちゃんの身体の周囲の景色がユラユラと歪み出した。
闘気だ。
剣豪スキルである闘気は、その名前のとおり闘う意思、気を練り力に変える。
その使い方は色々あるのだが、今回は間合いを詰めるためと魔物のヘイトを自分に向けるために使うようだ。
所謂挑発と飛ぶ斬撃だな。
「うむ……まだ洋介のようにスムーズにはいかないか」
俺も同じスキルを持っているので色々教えてる。
地下駐車場ダンジョンに籠っている間、闘気の可能性にテンション上がって結構訓練してたからね。
闘気は魔力や気功と違って『身体』にあるエネルギーじゃなく『意思』のエネルギーを使うから、慣れないと結構難しい。
人の意思、つまり念というのは確実に存在している。
何をするにも念というのは大事だ。
可愛くなる、カッコよくなる、仕事を成功させるなど。
普段の生活でも念というのは無意識に人は使っている。
憎しみや怒りなどの念が集まって、居ないはずの霊体が生まれる事だってあるのだ。
人から生まれた念は人に影響しやすいって事だな。
そんな事を考えているとおっちゃんが居合斬りの構えから、一気に剣を抜いて斬り上げた。
「フンッ!!」
魔物とは15メートル程の距離が空いていたが、おっちゃんに向かっていた魔物は空中で真っ二つになり、到達する前に絶命した。
「……まだまだだな」
とおっちゃんが呟く。
いや、十分できてると思うけど!?
魔物から魔石を取り出し確認すると『ドラコスの魔石』となっていた。
やっぱドラゴンじゃなかったか。
一瞬ワイバーンかと思ったんだけどな……残念。
読んで頂きありがとうございました。




