10 ドラゴン素材。
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階段を上がったショッピングモールの中にもちらほらと人の姿が見える。
外に出ると駐車場にもちらほらと人がいるがそれよりも……。
「壁?」
このショッピングモールの周りを木材で作られた壁が囲っていた。
高さは5メートル程で木材だが結構しっかりしてそうだ。
壁の一部が両開きの扉で開いている状態。
その両脇に男性が立って門番のような感じに見える。
俺はスマホを取り出してどれくらい時間が経っているのかを確認する。
前回地下駐車場のことがあったからね、スマホに自動調整を付与してあるのだ。
スマホを開いて自動調整を起動させると、時間と日付が変わった。
えーっと……前回入ったのが11月の頭で…………地球では1年ちょっと経ってる!
ダンジョンに入ってから約3年ちょっと経ってるけど、こっちでは1年ちょっとか。
…………時間の流れが分からないな。
異世界も含まれてるし。
仙台の人達は何処にいたのか分からないけど、かなりの人数がちゃんと生き残ってたんだな、良かった。
そしてちゃんと復興も進んでるようで安心した。
すると門から集団が入ってくるのが見えた。
「あっ、自衛隊だ」
ちょっと話を聞こう。
「すみせーん」
先頭を歩いていた男性に声を掛ける。
「はい? どうしました?」
俺は現在復興はどれくらい進んでるのかを聞いた。
彼の話によると、現在全国の街中にあるダンジョンを壁で順次囲って、山等のダンジョンは壁で囲う事は難しいので、近くの街を壁で囲っている途中らしい。
山の中は魔物が沸いたままだが街の中の魔物は一掃したようで、徐々にセーフティエリアを確保しているようだ。
そして東京は殆ど復興が完了しているようで、東京付近にある発電所を魔力で動くようにした事で街の電気は復活。
現在は東京の街も壁で順次囲ってる途中で、更に崩壊した建物を撤去して更地にして新しい建物を建てていってる所だとか。
何故僅か1年ちょっとでそこまで進んだのかと言うと、職業の証を自衛隊がダンジョンで取得した一部を民間人に配布し、戦える民間人が更に自分達で証を取得し、職業を得る人が一気に増えたお陰である。
しかし、現実はそう上手くは行かないのが常、北海道の復興は殆ど進んでいないと言う。
それは何故か?
その原因が。
『ドラゴン』である。
「マジですか!? ドラゴン!?」
「はい、既に民間人は知ってることだと思っていましたが……」
ダンジョンに籠っていたので。
それよりドラゴンってマジでいたのか。
変な魔物ばかりだったのに、ここに来てまともな魔物? 生物が現れるとはな。
話によるとドラゴンには、現代兵器が全て効かなかったらしい。
そりゃ普通? の魔物にも魔力が無い武器は殆ど効かないんだし、ドラゴンなんてハイズールとは桁違いだろうしね。
いや、この世界のドラゴンがどんな生物かは分からないけど、ラノベ知識だとそうだよな。
なるほど、ドラゴンかぁ……。
「行く?」
感心していると横から由奈が聞いてくる。
俺は由奈を見てニヤッと笑い答えた。
「当たり前だろ?」
ドラゴン素材を手に入れるこんなチャンスは2度と無いかもしれないからな!
以前神社ダンジョンで素材を賽銭箱に入れたらって話をした後日、世界の図書館で色々調べたのだ。
ドラゴンのどの部位が良い素材になるのかをね。
ラノベ知識だと全部使えるというのが当たり前だが、現実は違った。
角があるドラゴンなら角が良い素材になるし、角が無いドラゴンは全身の皮が良い素材になるといった具合に、ドラゴンによって使える素材が変わるのだ。
しかし、そんな中でも全てのドラゴンに共通している良い素材がある。
それが『ドラゴンハート』つまり心臓だ。
ドラゴンの心臓は魔力とドラゴンの気『竜気』や『ドラゴンオーラ』という物が混ざった物で最高の素材になるらしい。
武器、防具、薬、半永久エネルギー源等の使い道がある。
勿論、ドラゴンの血も魔力が大量に含まれているが『竜気』は含まれていない。
俺達も『気功』を使う時は『身体の細胞から溢れるエネルギー』を使う。
なので血液には含まれていない。
それはドラゴンも同じである。
ああ、それともう1つあった。
共通して良い素材。
それは『骨』である。
言わずもがな、硬度が馬鹿程高いようで現代科学では加工することすら不可能である代物だ。
では素材として意味ないじゃん? って訳でもない。
ちゃんと加工方法はある。
ドラゴンボーンの加工を可能にするのは『魔力制御』なのだ!
ただ魔力を流すだけでは意味が無い。
気が付く人は気が付くかもしれないがな。
まあ細かく言うと、骨の魔力に自分の魔力を混ぜて硬度を下げるんだが、これが失敗するとただの骨になってしまう。
ちゃんと加工した後、自分の魔力だけを抜かないと使い物にならない。
更に成功しても魔力制御が甘いと硬度が落ちたりするので、かなり練習が必要になるだろう。
俺達は自衛隊員にお礼を言って敷地から出ると、なっちゃんの実家へ向かった。
その道中。
「北海道にはどうやって行くの?」
と由奈が聞いてくる。
「ん~……船出てるかな?」
「流石に出てないと思うけど?」
となっちゃんが言う。
北海道への道かぁ……。
「船が出てたらそれで行く、無ければ自分で船作って行くか」
後は線路を歩いて行くぐらいしか思いつかない。
ちなみにもうすぐ年末である。
年越しそば食べないと。
そうそう、由奈の見た目は大して変わっていないが、職業はおすすめした『魔女』になったぞ!
これが本物の魔女っ子だ!!
無骨な杖は拒否されたけどね。
まあ、かなり強くなったと思う。
全員が。
ドラゴン狩れるかな?
異世界のダンジョンに居た階層ボスより弱いって事は無さそうだけど……ちょっと気分が落ちてしまった。
何故かって?
階層ボスを思い出してしまったからだ。
どんな魔物が居たのかはその内ね。
読んで頂きありがとうございました。




