8 最後の手段。
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地球へ戻るために広い洞窟の通路を進んでいると、更に広い空間へと出た。
特に何も居ないのでそのまま入る。
するとその瞬間、上から四足歩行の2トントラック程ある獣が落ちてきて土煙を上げた。
『グゥルルルルルル……』
土煙が直ぐに晴れると、魔物は牙を剝き出しにしながらこちらを睨み唸っている。
「滅茶苦茶強そうなんですけど」
「これはあれだ……ハンターゲームに出てくるような魔物だな」
「大きい……」
『既に狙われてるね』
そうこの魔物、俺達が入ってくるまで姿を見せなかったのだ。
知能が高い。
頭の左右から大きな角が前に伸び、獅子のような金色の鬣が眩しい。
縦に割れている金色の瞳が俺達を睨んでいる。
このダンジョン、いきなりこんなレベルの魔物が出るの?
この先ヤバくね?
と、のんきにしている場合じゃないな。
「最初から全力で行くぞ!」
「おう!」
「分かった!」
俺は強化魔術で自身を強化し、刀に魔力を流す。
あれから改良して強化魔術は2・5倍の強化ができるようになっている。
これなら身体もギリ大丈夫なのだ。
後が大変だけどね。
ちなみに、魔法でも強化は出来るが強化率が魔術の方が高く魔力消費が少ない。
ユウが魔物の左側から懐に入ると拳を打ち込み全力で気を流す。
同時に俺も右側から懐に入り刀を振り下ろすが、身体の毛で刃が入らなかった。
直後、奴が頭を振り角で俺とユウを弾く。
刀で防ぎながら自分で後ろに飛ぶと10メートル程飛ばされる。
ユウも腕でガードしながら自分で後ろに飛んで衝撃を逃がした。
反応が滅茶苦茶早いな!?
しかもあの身体の毛が硬い。
ユキは大丈夫かな?
うん、何か楽しそうな感情が伝わってくる。
絶叫マシンを楽しんでいるようだ。
「気が弾かれるぞ!」
と、ユウが叫ぶ。
なるほど、物理耐性が高いみたいだな。
そこで由奈の放った雷が魔物を襲う。
『GUAAAAAAAA!!!』
すると魔物が頭を上げ吠えると、魔法がかき消された。
「魔法耐性まであるのかよ!?」
「どうする!?」
「次は全部の魔力を込めて撃ってみるね!」
由奈はそう言って今度は直径3メートル程ある大きな火球を作り、撃ちだした。
ドゴーン!! と大きな爆発が起き煙が舞い上がる。
しかし、魔力感知で奴の魔力はまだそこにある事は分かっていた。
「魔法が効かないよ~……ゴメン、魔力が無くなって動けない」
「じゃあ俺が全力の気を流してみる」
煙が晴れると同時に魔物は向かっていくユウに迫り、角で刺そうと頭を振るがユウがそれを避けながら魔物の懐に入る。
「はぁああああ、これでもくらえやぁ!!!」
全ての気を右手の拳に流し、僅かに光る引き絞った拳を打ち込んだ。
ドゴッ!! バキッ! と音が鳴り響く。
「クソッ、今のでも無理か、すまねぇ」
するとユウは、文字通り全力を出したようでその場から動けない様子だった。
その瞬間、魔物が左前足を外側に振り上げるとユウに直撃し、ユウは壁へと叩きつけられる。
「ぐはっ!」
まあ、ユウはアンデッドなので大丈夫だろう。
しょうがない、魔力を大分消費するがこれしか無いか。
ユウの攻撃を喰らってもピンピンしてる魔物を見て俺は根源魔導を発動させた。
根源崩壊!
掌から小さな光の球が飛んでいき、魔物に当たった所で俺は拳を握って根源を崩壊させた。
すると魔物は一瞬動きが止まり足の力が抜けて身体が床に着くと思った瞬間、奴は足に力を入れて持ちこたえた。
「…………もしかして、根源が複数ある…のか?」
そんな生物反則だろ!?
それでも瀕死状態なのか動きは鈍い。
俺は咄嗟に走り出し、地を蹴り飛ぶとフラフラしている奴の頭を掴んだ。
「そんな生物がおってたまるかボケェ!!」
と、ツッコみながら根源崩壊を発動させた。
残りの魔力が1万も無いので飛ばす事は出来ないが、直接触れれば残りの魔力でも根源崩壊は使えるのだ。
すると奴の身体は粒子のように崩れていき、塵となって消えた。
俺はその場でバックパックをクッション替わりにして上に乗るように寝転がる。
「あかん……ホンマに全部の魔力を使い切ってしまったぁ~」
「ヨウの関西弁、久しぶりに聞いたな」
『いつぶりかな?』
「みんなヘトヘトだね~」
終わったと安心していると……。
『グルルルルルルゥ……』
『ガルルルルルゥ……』
俺達はその声に冷や汗を流しながら、入ってきた通路とは逆の通路の方へと視線を向けた。
「マジかよ」
「これは無理」
『ヤバッ……』
『うわぁ~』
『……洋介がおる!』
おっちゃん……。
通路からは先程と同じ魔物が大量にやって来た。
見えるだけでも10匹はいるんじゃね?
ははは……何だこの世界。
1匹だけでも大変なのにさ。
これだけ居るのは反則でしょうよ。
いいさ、そっちがその気ならこっちだって反則技を使ってやる。
俺は寝転んだ体勢のまま右手を上へと向けた。
「何だ? 何か手があるのか?」
『やっちゃえ!』
「奥の手って奴だ」
俺はそう言うと掌の上に分厚い豪華な装飾が施されている本を出した。
掌の上でクルクルと回る本。
「何だそれ?」
「これ? 俺の『魔導書』だ」
そう、賢者で習得した魔導書というスキル。
これはとんでもないスキルだった。
この魔導書に自分の魔力を貯めて、魔導書に登録した魔法や魔術、魔導まで発動させる事が出来る代物だ。
他にも機能はあるがそれはまた今度。
毎日コツコツ貯めてきた魔力を今こそ使う時だろ。
今使わずしていつ使うのか!?
あのセリフは言わないよ。
死に晒せやボケッ。
魔導書発動!!
その瞬間、魔導書が開き光が溢れる。
視界が真っ白になり光が空間を飲み込んだ。
この魔導書には今まで使ってきた魔法、魔術、魔導が登録されている。
もちろんまだ使っていない物もある。
それらが全て発動され、大量に居た魔物は全て塵へと変わっていった。
これでまた、ゼロから魔導書に魔力を貯めないとなぁ。
もう魔物は出てこないよな!?
今は休みたい。
奥の手はもう無いので来ないで下さいっ!!
読んで頂きありがとうございました。




