2 女の正体。
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女は此処に来るまで何一つ声を出さなかった。
「さてお前は『元人間』だよな?」
俺の言葉に何一つ反応を見せない。
「えっ、元人間って……」
由奈がその事に驚いている。
どうして人間かと思ったのかは喋り方や仕草を見てだ。
魔力溜まりから生まれた魔物やダンジョンの魔物が、地球の人間らしく振舞うのはおかしいからな。
なら行きつく答えは1つしかない……こいつが元人間だという事しか。
しかし女は何も答えない。
ん~……仕方がないなぁ。
「ちょっと見張っててくれ」
2人にそう言って俺は栄養ドリンクを1本取り出しクラフトする。
何を作るかと言えば勿論、何でも喋りたくなる『喋りさん1号』です。
それは何かって?
名前の通り強力な自白剤だ!
言葉を喋れる生物なら何でも言ってしまう魔法薬。
お隣の御主人と浮気をしているとか友達の女と寝てるとか、簡単に言ってしまう恐ろしい薬なのです!
修羅場になるぞ~。
そして30分後、女から色々聞いて分かった事。
こいつらは元人間で間違いない。
人間だった頃の記憶は断片的に残っている。
気付いたらこうなっていた。
同族は他にも居る。
人間と言うか生物の血肉を食う欲求が凄いが、特に人間が好物。
共食いはしない。
種族は自分では分かっていない。
これらの話を聞いて、人間との共存は不可能だと俺は判断した。
そして最後にどうしても確かめないといけない事がある。
それは、こいつらが何て言う魔物なのか。
今後の為にもそれは必要だ。
俺は女の前にしゃがみ込んで聞く。
「本当に自分で種族は分からないのか?」
「知らないねぇ~……そんな事より、人間の肉を寄越せ!! あの血と肉の味……はあはあ、最高なんだよねぇー!!」
血肉の味を思い出し物凄く興奮し出した。
ぽっちが立ってるぞ!?
俺達3人はドン引きだ。
人間の血肉を思い出して興奮してる女。
こりゃダメだ。
俺は刀を抜きざまに女の首を刎ねた。
刀に付いた血を振り飛ばし鞘に納めながら女の身体をジッと見る。
「おい、首の無い女の死体をジッと見るとは変態か?」
そんな事をユウが言ってきた。
「違うわ! サイコパスじゃねぇよ! こいつの魔石が何処にあるか探してんだよ」
ったく、何てことを言うんだこいつは……しかしこの胸は勿体なかったなぁ……って違う違う。
身体の何処にも魔石が無いぞ?
魔力感知で大体分かるはずなんだけど、やっぱ元人間だから無いのか?
「魔石ならあっちだぞ」
ユウが顎で女の頭を指す。
マジか、身体にあると思ってたのに、確かに頭にあるみたいだ。
スパッと刀で頭を斬って魔石を取り出す。
脳の中にあった。
これを生きている間に抜けば元に戻ったのかな?
いやいやいや、マッド的な考えは止めよう。
魔物と言っても元人間だ。
人体実験的な事は……誰かがやるだろう。
そして魔石をリストで確認した。
「マジか、此処で出てくるとは!!」
「何だ? 知ってる魔物か?」
「カルマの完全体とか?」
リストにはこう書かれていた。
『屍鬼の魔石』
「グール……ズールの親戚?」
「似てるよね、名前だけは」
まあ、見た目は全然違うもんな。
世界の図書館によると、グールはゾンビが進化した魔物であるという事が分かった。
他にもグールが生まれる条件はあるという。
それは吸血鬼の眷属に人間がなればグールになると言うのだ。
吸血鬼になるんじゃねぇのかよ! とツッコんでおいた。
はぁ~、やっぱりこいつは元人間で元ゾンビだったか。
それが進化してグールになった。
これはヤバいよなぁ。
今後、復興した街中にグールが紛れ込んでる可能性があるという事だ。
変な触手みたいなのは出さないよな?
人間に紛れて喫茶店とかやってそうだ。
その内吸血鬼とかも出てくるのかねぇ。
ラノベ知識だと不死性が高いからな。
銀とかも効かないらしいし。
今から何か専用魔術や魔法を作っておくべきか?
根源魔導なら倒せるかな?
まあ、なんにせよ今後は人を見かけて近付いてきたら、魔力を先に確認しないといけない。
「という訳で、人を見かけたら先ずは魔力感知! これを徹底するように」
「おう」
「分かった!」
その後、女の死体を収納し血をクリーン魔術で綺麗にし俺達は家を出ると、なっちゃんの実家へと向かった。
実家は20分程歩いた所にあるので直ぐ着いた。
畑の中に建つ古民家。
此処がなっちゃんの実家である。
門を入ると左側に普段住んでいる2階建ての古民家があり、右側には畑仕事で使う農具や機材が置かれた扉が無く屋根だけの物置き場がある。
しかし、その物置き場には血痕が大量に飛び散っていた。
「マジかよ……」
「お婆ちゃん、お爺ちゃん……」
「まだ死んだって決まってないだろ、何処かに避難してるかもしれないじゃん」
2人がその血痕を見て落ち込むので望み薄な事を言っておく。
まあ、おっちゃんとおばちゃんがゾンビを殺した後かもしれないし?
それにしても、住居の方は綺麗だな。
「とりあえず中に入るか」
「ああ」
「うん」
俺達は住居の昔ながらの引き戸をガラガラと開けて中に入った。
全く荒れた様子はない。
靴を脱いで居間へと向かい中に入るとそこには、おっちゃんとおばちゃんが並んで立っていた。
「おお……お?」
話しかけようとした所で気付いた。
おっちゃんもおばちゃんも半透明で虚ろな表情をしている事に。
やっぱ死んでたかぁ~……。
ユウと由奈を見るがおっちゃんとおばちゃんが見えていないようで気付いてない。
えっ、これ俺が言うの?
言わないといけない?
なっちゃんを探しに来たのにな。
「あぁ……おっちゃんとおばちゃんがそこに立ってるわ」
「えっ」
「うそ……」
すると驚いた後、ユウと由奈が俺を見る。
何だその期待の籠った目は!?
まさか、おっちゃんとおばちゃんを従えろと言うのかお前達は!?
なんて身内だ。
……どうなっても知らないからな!!
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