1 生け捕り。
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3章スタートです。
復興の兆しを見た俺達は足取りも軽く、ダンジョンを探しながら山道を進みヘリを見てから3日目の朝に仙台へと入った。
なっちゃんの実家は確か海側の方だったので、とりあえず俺達は海側へ出る事にした。
住宅街を通り畑が広がる景色に変わるが俺達は違和感を覚えていた。
畑を眺めながらユウが口を開く。
「人が全く居ないな」
「しかも街は綺麗なままなのにね」
その通り、街中は綺麗なのに人処か猫の一匹さえ見かけない。
此処までで魔物の気配さえも無いのだ。
「何処かに避難してるのかもな」
「そうだと良いな」
「お婆ちゃんとお爺ちゃんは無事かなぁ」
そんな話をしながら防波堤にたどり着き、3人で跳んで登る。
「おお! 久しぶりの海だぁ!」
何年ぶりだろうな。
10年以上見てない気がする。
ユウとなっちゃんが結婚する前に一緒に遊びに来たのが24の時だから13年か。
あれ以来見てないからなぁ。
一緒に遊びに来たのも、ユウが結婚前になっちゃんの親に1人で会うのをビビって俺を誘ったのが切っ掛けだ。
懐かしいね~。
ユウと由奈は毎年見てるからなのか、テンションはそんなに変わらないのが何か腹立つ。
由奈は砂浜へ行き俺とユウは防波堤の上に腰を下ろしてタバコを吸う。
11月の海は風が冷たいな。
「ふぅー、ちょっと休憩したらなっちゃんの実家に向かうか」
「ああ……まさか世界がこうなるとはなぁ、ビックリ仰天だな」
「これからもっと変わっていくぞ」
俺の言葉にユウはキョトンとして首を傾げる。
「魔力のある世界、魔物が居る世界になったんだ、復興しても以前と同じにはならんだろ」
するとユウは視線を海へ戻しタバコの煙を吐いた。
「確かにそうだな、人じゃなくなってきてる俺が居るんだし、もっと世界は変わっていくか」
「そりゃそうだろ……所でずっと気になってる事があるんだが」
「何だ?」
俺は海を見ながらユウに聞いた。
「あんな所に島なんてあったっけ?」
そう、俺はずっと気になっていた。
仙台の沖合に普通の島が見えているんだが、この辺りに島なんてあったっけなぁ~と思っていたのだ。
「あぁ、この辺りに島は無いぞ」
「もっと早く言えよ! 無いのに島がある時点で言え!」
「いやぁ、こんな世の中になったから島ぐらい出来るのかなぁって思ってさ」
「出来ねぇよ!!」
ったく、感覚がおかしくなってるんじゃね?
しかしあの島は何だろうか?
物凄く気になる!
「後でちょっと行ってみ……」
行ってみるかと言おうとした所で後ろから声を掛けられた。
「君達何してんのぉ?」
俺とユウは同時に振り返り声の主を見るとそこには、日焼けした活発そうな女性がTシャツと短パンにビーチサンダル姿で立っていた。
ボヨ~ンと胸がデカい!!
くそっ! どうしても目が行ってしまう自分に腹が立つ!
けしからん胸だな!
彼女はサーファーみたいな雰囲気だ、って言うかサーファーだろうな。
スタイルは良いが、見た目は普通の女って感じだ。
金髪に染めた髪を後ろで縛っている。
って、今11月ですよ?
寒くないの?
と、疑問に思いながら答える。
「東京から知り合いを探しに来たんだ」
「へ~、態々東京からぁ? 凄いね、大事な人? 一緒に探してあげようか?」
「いや、家は知ってるから自分達で探すよ、ありがとう」
俺はそう言ってユウと一緒に海へと姿勢を戻した。
するとその瞬間、俺の後ろで微かな音がしたと思い振り返ると、女性が空中でユウが伸ばした左腕に噛みついていた。
「やっぱりそうかぁ~」
「おぉ、噛まれてるのに痛くねぇ」
彼女が俺に噛みつこうとしてそれをユウが止めたって感じだな。
女はユウの腕から離れて防波堤の下へと戻った。
「よく気付いたねぇ」
口から出てるユウの血を腕で拭いながらそう言う。
最初から分かっていたさ。
こいつが魔物だって事は……しかし!! あの胸は反則だ!!
はぁ~、あれを殺すしかないのかぁ……。
ちなみに『あれ』とは胸の事です。
俺とユウは立ち上がり女を見下ろしながら言う。
「だってお前からは魔物の魔力しか感じないもん」
「そうそう、しかも11月でその格好はおかしいだろ、寒さを感じないのか?」
「あぁ、服装までは気が回らなかったねぇ」
うん、周りに他の魔物は居ないみたいだし、こいつを生け捕りにして色々聞くか。
「ではユウさん、やっておしまい!!」
ビシッと女を指さす。
「生け捕りだよな?」
「当然だ」
「はっ、私を生け捕り? お前達に出来るかなぁ?」
そう言ってニヤッと笑う女。
ユウは自然体で防波堤から落ちる様に降りると同時に、女が右手を振り下ろし爪攻撃をしてきたが身体を僅かに左へ動かし躱すと、右手と左手を女の腕に添え、テコの原理で腕を折る。
その流れのまま右手を女の首元へ添えると、女を背中から地面に叩きつけた。
「ほう、結構良い動きをするようになったねぇ~」
流れるような動きだった。
まあ、まだまだだがな!
「ぐはっ!」
女は叩きつけられ口から血を吐き出す。
「ではこれを使って拘束よろしくぅ!」
そう言って俺はロープを取り出してユウに投げ渡した。
「趣味の縛り方はすんなよ~」
「そんな趣味はねぇよ!?」
「まあ、由奈が居るからしないか」
「居なくてもしねぇよ!!」
そんな雑談をしながらユウは女を『普通』に縛った。
そこは変に縛る所だろ!!
と、ツッコみを入れようとしたが由奈が来たので止めた。
「どうしたの? 何か叫んでたけど」
「いや、魔物が出たので由奈のパパが『女を縛って』いる所だ」
「女? 魔物なのに女って……うわ、本当に女の魔物だ」
防波堤に上り下を覗いてみる由奈も魔力感知で相手が魔物かどうか分かるようになったか。
毎日ちゃんと訓練してるからな。
偉い!!
「おいヨウ! 変な言い方すんなよ!? で? 縛り終わったぞ、此処で話を聞くのか?」
俺は辺りを見回すと北へ少し行った所にある一軒家が視界に入った。
「あそこで聞こう」
そう言って指さす。
「ではユウさんや、女を担いで連れてきてくれ」
俺はそう言って先に歩き出す。
ユウはヒョイッと軽く女を肩に担ぐと後を付いてきた。
由奈はユウの後ろを歩いて女を見張ってるようだ。
流石親子、何も言わずに連携が取れている!
辿り着いた家は、新築の一軒家のようで綺麗だ。
建売かな?
人と魔物の魔力は感じないので誰も居ないのだろう。
玄関を引くと鍵は開いていた。
「すみませーん誰か居ますかー?」
一応声を掛ける。
よし、居ないな。
俺達はちゃんと靴を脱いでリビングへと入った。
「そこに座らせてくれ」
女をリビングのソファに座らせる。
女はずっと黙ったまま睨んでいるだけだ。
「さて、気は進まないが色々教えてくれるかな?」
そうして女魔物の尋問が始まった。
読んで頂きありがとうございました。
別の小説を書き溜め始めましたが毎日1話投稿はしていきます。




