26 ダンジョンの不思議。
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残念犬を倒したその後は、通路をひたすら歩きながら偶に部屋に入り、残念犬を倒していった。
ちなみに、残念犬の魔石をリストで見ると、名前はアウカラという名前でした。
アウカラを何匹か倒してる途中でふと思った。
それは以前、名前を聞き忘れた家族さんの父親が足を噛み切られたという魔物。
あの時は確か『毛の生えていない犬のような化け物』と言っていたような気がするが、それがこいつらでは? と思ったのだ。
微妙に犬っぽいし足に噛みつかれると簡単に噛み切れるような歯を持っている。
ズールと同じで、毛がなかったのは未熟で今は完全体になっているのではなかろうかと思ったのだ。
まあ、確かめる方法は無いんだけどね。
今後、生物学者等が魔物図鑑とか作るんだろうなぁ。
以前の世界でも年間数百種類とか数千種類の新種生物が発見されているらしいが、魔物も新種が増え続けるのかな?
それはそれで楽しみでもあり脅威でもある。
探索を終えた俺と由奈は拠点に戻ると晩飯を食っていた。
そこに能天気な死霊が帰ってきたのだ。
『よっ! 結構色んな魔物を見つけたぞ! でかい犬みたいな奴とかさ』
俺はジト目で見る。
「お前は何処をほっつき歩いているんだ? 今何時だと思ってんの!?」
と、お母さん口調になってしまった。
『あ……すまん、霊体になると時間の感覚や疲れが無くてな、つい夢中になって……でもよ、ヨウが言った通りに魔物を倒せたぞ俺も!』
そう言ってドヤ顔する死霊。
あっ、ちなみに普段ユウの姿は他の人に見えなくなっていて声も他の人には聞こえていない、偶に人が居ない所ではユウが自分で半実体化して由奈の為に姿を見せているが今は見せていないぞ。
「……で? レベルとか上がったのか?」
するとニヤッと笑い答えた。
『なんと、2つも上がったぞ!』
そう言ってピースサインをする死霊。
全く以ってシュールだ。
「種族は? 進化した?」
魔物ならレベルが上がれば進化しそうだけど……。
『いや、俺の種族はずっと死霊のままだな……せめて霊体とか幽霊にしてほしいよなぁ……死霊って』
やっぱり魔石を持っていないと進化はしないのかな?
そこでおれはふと気になり、いきなりユウの心臓あたりに手を突っ込んだ。
『おわっ!? 何すんだよ!?』
「いや、ユウに魔石は無いのかな? って思ってさ」
『いきなりやるなよ!? ビックリするだろ!!』
「まあ俺の従魔…じゃないな……従霊? だし良いだろ」
『従霊いじめだぞ……で? 魔石はあったのか? 感覚からして無いとは思うけど』
「無かった……残念」
『残念!? ……なのか?』
魔石があれば進化して肉体を得られたかもしれないのだ。
『なるほどね……死霊術で何かできないのか?』
ん~……出来るっちゃ出来るが。
これはちょっとなぁ。
人としての尊厳が……失われる気がする。
俺が方法をユウに説明してやると……。
『それは……微妙だ!』
「だろ?」
その方法とは何かの死体にユウを入れるという事である。
ではその死体は誰の? って事になるし、魔物の死体に入れると一緒に行く事はできない。
テイムがまだ広く知られていない今の状況では確実に討伐されるだろう。
ラノベや漫画にあるように骨に入れるとスケルトンの出来上がりだし。
「パパの身体を探すとかは?」
そこで飯を食っていた由奈が話に入ってきた。
ユウの言葉は聞こえていないが、俺の言った事で話の流れを掴んだのか。
ユウの死体を探す……。
「無理だな、確実に骨になってるか、魔物に食われて…綺麗に無くなってるだろ」
あぶねー、魔物のう〇ちになってるなんて食事中に言いそうになったわ。
「そうかぁ……」
落ち込む由奈。
そんな由奈を見て最後に残っている方法を伝える。
物凄く嫌だけどね。
「他にも方法はある……俺がユウの身体を作る事だな、しかし……」
『マジで!? あの継ぎ接ぎだらけの化け物みたいな感じか? それとも若くてイケメン風になるのか!?』
「それでお願いします!」
俺は溜息を1つ吐いて答える。
「はぁ~、話は最後まで聞け! ……しかし、その身体を作るというのは誰かの死体を使う事になるんだよ、それがどういう事か分かってるのか?」
『うっ……』
「それは……」
どうやら分かったようだな。
死霊術士になって得た【手術】というスキルは、人体の構造を詳しく教えてくれる。
これを用いて身体を作るのは容易いが、それは素材があればの話だ。
しかも死んで間もない死体があれば尚良いと来たもんだ。
そんなマッドサイエンティスト的な事をすれば後戻りはできない。
使っていいと本人に言われても俺は微妙だ。
死体を使わずに作る……。
「魔物の死体で作るか?」
「……ハイズール」
此処であれが出てくるか?
いやいや、一瞬あれに入ったユウを想像してしまったじゃないか!
頭を振って追い出す。
『魔物の死体で人っぽく作れるか?』
ん~人っぽくねぇ……作る…………作る?
「あっ!!」
『ビックリしたぁ!?』
「どうしたの?」
「クラフトで作ればいいじゃん!」
すると2人はキョトンとしていた。
そうだよ、死霊術に気を取られてクラフトを忘れていた。
これなら魔物の死体があればユウの身体を作れそうだな。
そうなると死体丸々1つ欲しい。
「あのデカい犬を狩るか」
「あれでパパの身体を作るの?」
『あぁ、あの狛犬みたいなデカい奴か』
「でも、ダンジョンの魔物って消えるんじゃ?」
倒して直ぐ魔石を抜けば消えない事を伝える。
「それで消えないんだ、不思議だね」
うん、それは俺も思う。
ダンジョンが生み出す魔物を、魔石によって区別しているのか。
それとも、他に何かあるのかそれは、ダンジョンのみぞ知るって事だな。
いや、世界の図書館で調べれば分かるかも?
…………なるほどねぇ。
やっぱり魔石によって判別してるようで、魔石を抜くとダンジョンの魔物として認識できないようだ。
そしてどうして消えるのかは、魔物の身体を構成している魔力を吸収するためであると。
やっぱダンジョンって不思議だなぁ。
読んで頂きありがとうございました。
今年も終わりですね。
良いお年を!




