17 便利なテント。
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風が吹けば折れそうな心ですが、御かげ様でモチベ上がりますっ!!
俺達は祠がまだ使えない事を知って、此処に居ても無駄になるので先へ進む事にした。
大きな穴を迂回するように穴の縁に沿って反時計回りに進み、そのまま新潟県へと入った所で日が暮れてきたので、山の中で野営の準備を始める。
「やっぱ山の中だとちょっと寒いな」
「この服のおかげで大分マシだね、顔と手がちょっと寒いけど」
確かに、付与した服がなけりゃかなり寒かっただろうな。
ハーフフィンガーグローブだから指の先も冷たくなる。
由奈ちゃんも同じだ。
『大丈夫か由奈?』
「うん、全然大丈夫だよ」
「あれ? ご主人様の心配は無いのかい?」
『……ヨウ様~! お体は大丈夫でございますでしょうか? 私めが温めましょうか?』
「キモイぞ」
『クソなご主人様だな!! お前が言ったんだろうが!』
「いや、普通に聞けばいいだろ」
『嫌味だよ!』
「知ってる!」
最後はニコっと笑って答えてやる。
ふざけていると段々暗くなってきたので、さっさとテントを出す。
「さあて、此処に取り出したるは世にも不思議なテント~」
「普通のテントに見えるよ?」
『普通に言えよ』
ユウよ、それだとつまらんだろ。
俺が1年半ダンジョンに籠っている間に、クラフトをフル活用して作った傑作のテント!!
収納から取り出したテントは迷彩柄で1人キャンプ用の小さなテント……に見えるが、ちゃんと中は空間拡張を付与して小学校の教室程はある空間になっている。
ちなみに、バックパックに括り付けてあるテントはただの飾りで、本命は収納してあるのだ。
「そしてもう1つ!!」
同じ型の茶色いテントを取り出す。
「色違いだ」
『色からしてトイレ用か?』
「おっと? ユウ君惜しいね!」
そう言ってビシッと指をユウに向けた。
『お前に君付けされると気持ち悪いんだが?』
「由奈ちゃん、中を覗いてみな」
そう言うと由奈ちゃんはワクワクしながら入り口を開けると首を傾げた。
「普通のテント?」
俺を見ながらそう言うが、俺は首を横に振った。
「入ってみれば分かる…あっ、靴は脱いでね」
すると靴を脱いで入った由奈ちゃん。
その瞬間……。
「ぇえええ――――――!!??」
『何だ? どうなってんだー? おーい由奈―』
少しして由奈ちゃんが出てきた。
目をキラキラさせテンションが上がっているようだ。
「お風呂!! このテントはお風呂だったんですね! やったぁー!!」
手を上げて大喜びの由奈ちゃん。
『こんな物まで作れるのかよ……普通にこれ売れるぞ?』
「その通り、今はまだ数が少ないが商品にするつもりだ」
今の世の中では欲しい一品だろ。
しかも、今後ダンジョン探索する人にも役立つはずだ。
勿論、空間拡張した普通のテントもね。
テントに入ると教室程の広さで高床式になっており、階段を上がると床は全面木になっている。
その中央に、床に嵌めた全長3メートル、深さ60センチの円形浴槽がある。
右側の壁沿いには洗い場があり、水とお湯が出る蛇口とシャワーも付いている。
そして排水はどうなってるの? と思うだろう。
床の下にゴミ箱魔術が付いているので問題無し!
更に!!
「風呂とくれば勿論これもあるよね~」
そう言って取り出したのは同じ型のテントで今回は緑色だ。
「色違いでまた同じテント? 他に何かある?」
「それはさっきユウが……」
『トイレだぁ!!』
俺は頷いた。
「ほあ~、トイレまであるんだぁ…………あ、結構広い、ん~? …………あの便器の中にある黒い水みたいなのはなんですか?」
由奈ちゃんは驚きながらもさっそく中に入り見て回ったようだ。
由奈ちゃんが言う便器の黒い水というのは当然風呂の床下にもある俺が作った『ゴミ箱』だ。
以前魔術で収納空間を作ろうとして失敗した時に偶然出来たゴミ箱魔術である。
何を入れても消えるのでゴミ箱として使っていたのだが、賢者になって世界の図書館で調べた結果これが何か分かった。
これは、飲み込んだ物を崩壊させ魔力に変える性質を持っているとの事。
じゃあ便器も崩壊するんじゃね? と思っただろうが、そこはちゃんと自分の魔術なので調整はできる。
落ちてきた物だけを崩壊させるようにしたのだ。
トイレだからな。
ちなみにこれは攻撃用には向いていない事は分かっている。
それは何故かと言うと、飛ばないからだ。
近付いて発動させて手動で触れさせれば、触れた部分だけは崩壊させる事は出来るが効率が悪い。
一度ゴブリンで試した時は、触れた表面だけ崩壊して薄皮が無くなっただけだったのだ。
さらにもう一度やると皮膚が無くなるといった具合に、防御無視だが攻撃力が低いみたいなんだけど、ずっと押し当てていれば簡単に穴を空ける事は出来る。
しかし、戦闘中にそんな時間は無いのでそれからはゴミ箱としてしか使っていない。
なのでトイレも、出したら直ぐに全部消える訳じゃないがそんなに時間も掛からないので使う事にした。
「由奈ちゃん先に入りな」
お風呂セットを渡しながらそう言う。
タオルとボディーソープ、シャンプーとリンス。
そして、服や下着は魔法で今着ている服を綺麗にしてもらう。
クリーンの魔術より魔法の方が使いやすくて効率が良いのだ。
「ありがとうございます!」
そう言って風呂に入っていった。
『覗かないか俺が見張ってやろう』
「お前はアホか誰が覗くかよ、中学生の裸を見て喜ぶ人種ではない! もっと大人の女じゃないとありがたみがないわ」
『由奈に魅力が無いって事か、あぁん!?』
「いや、同年代なら魅力的だろうけど、俺37だぞ? お前と同い年なんだからあれくらいの娘が居てもおかしくない歳だ、流石に娘程の子はちょっと……」
『そうだった……お前は結婚とか考えなかったのか?』
「そんな相手が居る訳無いだろ? それに女は友達なら良いが男女の関係にはなれないなぁ」
『お前そっちの趣味だったのか!?』
「違うわボケ!! ……友達なら良いが、男女としての女は信用できん」
『あぁ……あれか』
微妙な空気になりながらも飯の用意を進める。
微妙な空気になったのは、ユウが俺の昔を知ってるからだ。
まあ、つまらんよくある話だが。
ただ女に騙された事があるだけで、特に何かあった訳じゃない。
それ以来女と友達にはなれるが男女の関係にはなれない。
なので未だにDTの俺。
おかげで魔法使いになれたよ!
って関係無いか。
『まあ、その内良い相手に会えるだろお前なら』
「エルフちゃんなら即オッケーだな」
『なんだそれ』
何だとはなんだ、エルフちゃんは純粋なんだぞー!
いつかエルフちゃんと会えますように~。
こんな日に自分の小説を読んで頂きありがとうございます。




