14 完全体。
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おかげ様でモチベ上がりますっ!!
猿と言うかゴリラのように見える魔物。
動き方や姿勢がハイズールのまんまである。
確かめるために近付いていくと、50メートル程の距離まで来た時に奴がこちらに振り向いた。
目が無いので見えていないとは思うが、こういう時って代わりに音に敏感だったりするよな。
しかしデカい。
UMAであるビッグフットってこいつじゃね? って思える程に似ている。
そんな事を考えていると、奴が自然な動きで更に腰を落とした瞬間。
周りにある住宅の壁を蹴って、三角飛びのように物凄い速さで迫ってきた。
「下がれ!」
由奈ちゃんにそう言うと同時に、奴の左拳が目前まで来ていた。
ガッ! と腰を落とし右腕で防御すると綺麗に止まり、遅れて奴の身体が降りてきた所に左の掌底を腹に打ち込んで落ちてきた身体を浮かせる。
その間に右腕を引き絞り、気を溜めた拳を奴の顔面に打ち込んだ。
すると奴はフッとんで行かずにそのまま空中で頭がパンッ! と弾けた。
武術150年の技を舐めるなよ?
ま、気功の御かげだけど。
「大丈夫だったか?」
振り返り由奈ちゃんに声を掛けると、口を開けてポカーンとしていた。
その顔も可愛いけど口は閉じとこうね。
「す、すごいですね、魔物の動きが全く見えなかったんですけど? 進藤さんの動きも全然分からなかったです……あれと戦うんですかわたし?」
『温厚なヨウがこんなに強くなってるとはなぁ、驚きだ』
まあ、レベルの低い由奈ちゃんにはまだ無理かもな。
ユウは昔の俺を知ってるからなぁ、そう思うのは仕方がない。
本当は動きを止めて由奈ちゃんにとどめをさせようと思ってたけど、あんな動きをする魔物を止めておくのはちょっと難しかったな。
咄嗟に倒してしまった。
このダンジョンで戦わせるのはまだ早いかも?
他に倒しやすい魔物が居ればなぁ。
すると奴の死体が黒い粒子になり消え、魔石を落としていたので収納して確認する。
『ハイズールの魔石』
「やっぱり!! マジでハイズールだった!!」
「あっ、進藤さんが知ってる魔物ですね?」
『見た目が変わってるのか?』
俺は2人に以前の姿を説明した。
バイオ的ハザードに出てくるクリーチャーで。
「うわぁ、見てみたい気持ちと見たくない気持ちが鬩ぎ合ってます」
『あれに似てるのはちょっと無理だな、ゲームだから良かったけどリアルであれは……』
由奈ちゃんは怖いモノ見たさで葛藤している。
ユウは幽霊なのに身体を震わせている。
「まあ、もう見る事は無いと思うけどな」
「どうしてですか?」
俺は魔力が満ちて魔物が進化している事を説明した。
前まで見ていた気持ち悪い魔物は進化の途中、と言うか生物として完全ではなかったようだ。
以前は巨〇兵が未熟で出てきたような状態で、今は完全体として出てくるって事だな。
ん? それってヤバくね?
デパ地下ダンジョンの自衛隊は大丈夫か?
さっき初撃の掌底をした時の感触からして、相当強くなってるぞ?
……まあ、皆も強くなってるだろうし簡単にはやられないか。
「しかし完全体になってもあれじゃ、テイムはしたくないなぁ」
他の気持ち悪かった魔物はどうなってるのか気になる。
「テイムって何ですか?」
おう、その知識も無かったか。
簡単に説明すると……。
「良いですねそれ! 私も犬や猫ちゃんと話せるようになりたいです!」
「ふむ、じゃあ次は魔物使いになるか?」
「はい! 頑張って魔法使いを100%にします!」
真っ直ぐだねぇ。
このまま此処でレベルを上げさせるのは危険だと判断して、一旦出る事にした。
俺一人なら進むんだけどなぁ。
由奈ちゃんのレベルを別の所で上げてからいずれ来るとするか。
俺達は江戸川沿いを北へと向かった。
埼玉を抜けてこのまま群馬へ行商しようかなと思っている。
他県がどうなってるのか見てみたい。
特に東京から北がどうなってるのか気になる。
スタンピードで魔物がやって来た方角だ。
人間は生き残ってるのか街は無事なのか、心配とかでは無いけどね。
俺が心配する事じゃないし。
ぶっちゃけ人類が滅んでも全然良いと、むしろ滅べとこうなる前は思ってたからねぇ。
しかし、ファンタジーがやって来たんだ。
よく妄想していた世界が!
レベルを上げれば車に轢かれても簡単に死ぬ事は無くなるし、高所から落ちても大丈夫な身体になる。
鍛えれば鍛える程強くなれるんだ。
以前だとそこまで強くなるなんて不可能だもんな。
今では車が来ても飛んで避けられるし、なんなら手で止める事も可能かも?
鍛えればね。
そして今まで無かった魔力、魔法、魔術、魔導。
これから世界がどう発展していくのか楽しみで仕方がない。
幸い俺は不老を手に入れられたので、今後世界がどうなっていくのか傍観させてもらおうかなと思っています。
普段は普通の商人として、そして時には怪しい商人、果たしてその実態は!?
ただの商人です、ってね。
ふと横を歩いている由奈ちゃんを見ると、そう言えば1つ気になっている物があったのを思い出した。
「由奈ちゃん」
「はい?」
ふむ、かわいいな。
「俺ではなれない職業の証が1つあるんだけど……なってみる?」
「どんな職業ですか?」
俺は少し溜めてから答える。
「魔女」
「………………」
おっ?
歩いていた由奈ちゃんが立ち止まって固まってしまった。
俺も立ち止まる。
「どうした?」
「……魔女って、あの魔女ですか? 箒に乗って配達する」
「いやまあ、あれも魔女だけど……多分違うと思うよ」
うん、絶対違うだろうな。
この魔女はたぶん、ヒッヒッヒッて怪しい薬を作る方だと思うよ?
暫く考え込んでいた由奈ちゃんが顔を上げて答えた。
「私魔女になりたいです、いえなります!」
おぉ! 美少女魔女っ子が生まれるのか!?
この現実の地球に!!
良い時代に生まれたな……オレ!
今日最後の投稿です。




