１２ 助手。

「じゃあ、そろそろ成仏するか？」

暫く話していた２人の会話を割ってそう告げる。

『はっ？』

「えっ？」

「いやいやいや、はっ？　でもえっ？　でもなくて、そろそろ成仏するかって言ったんだけど？」

『このままでお願いします』

そう言って頭を下げるユウと由奈ちゃん。

「いや、このまま友達を従えるってのもなぁ……俺が鬼畜みたいじゃん？」

「いえいえ、進藤さんは鬼畜じゃありませんよ！」

『そうそう、俺は娘の傍に居れて守る事ができるしな』

ん？　こいつは何を言ってんだ？

「ユウは俺に付いてこないといけないから、由奈ちゃんの傍には居れないぞ？」

するとユウは絶望の表情になる。

怖いよ。

「あ、あの！　……付いていっても良いですか？」

「ん？　何処に？　俺はいま行商人をしてるから、何処かに留まるって事はしないぞ？」

「はい、私を助手にして下さい！　付いていけばパパと一緒に居れますよね？」

おう、そう来るか。

由奈ちゃんを何処か避難所に送って、行商に出ようと思ってたんだけどなぁ。

父親として男と一緒って良いのか？　と思い、ユウに視線をやると頷いて答えた。

『連れて行ってやってくれ、ヨウなら娘を託せる……頼む！　由奈の面倒を見てやってくれ！　その代わり俺がお前に従うからさ！』

知らない奴に預けるよりは良いって事か。

ってか、既に従う立場だからな？

「よし、じゃあお前俺の下僕な」

『なっ！？　ヨウさん？　下僕とはちょっと言い方が……』

焦るユウを見て可笑しくなってくる。

「プッ、冗談に決まってるだろうが……そうなると、由奈ちゃんにする事があるんだけど？」

『あっ、お前！？　娘に手を出すなよ！？』

「ブハッ！　誰が友達の娘に手を出すか！！　しかも中学生だぞ！？　ふざけんなボケッ！　俺紳士！！」

『本当だろうなぁ？？　出したら呪うぞ？』

「今のお前が言うと洒落にならんから……ちょっと由奈ちゃんにスキルを使おうかと思ってさ」

『どんなスキルだよ？』

「ズバリ、最適化」

『何だそれ？　そんなスキルもあるのか』

「俺のユニークスキルだ」

『チートか！？』

「違うわい！　正当に手に入れたスキルですー、不正じゃありませーん」

そこで、最適化をするとどうなるのかを説明した。

『チートじゃん』

「うん、チートだね」

「クソッ！　自分でも思う所があるから何も言えない！？」

まあ、良くなるならやると由奈ちゃん本人が言うので、やる事になった。

最適化は誰にも使わないと決めていたが何故由奈ちゃんに使うと決めたのか。

それは、由奈ちゃんが１人だからだ。

しかも友達に託された１人娘。

生存確率を上げるには、最適化は持ってこいである。

ではさっそくと言う事で、由奈ちゃんに最適化を行った。

「うっ、くっ……」

やる前に痛みはあるからと言ってあるが、あれはマジで痛いんだよな。

我慢できる痛さじゃない。

「安心して気絶しな」

って、敵に言うセリフっぽいな。

すると由奈ちゃんは気を失った。

『大丈夫なのか由奈は？』

「ああ、俺の時は約１月程気絶してたけどな、今はもうちょっと早いと思うぞ？」

『そうなのか？』

心配そうに由奈ちゃんを見ているユウ。

あの頃の最適化は初めて使ったから身体の改造による痛みで気絶が長かった。

しかし、今はと言うと……実はあの時に最適化スキルそのものも最適化されていたのだ。

なのでそんなに掛からないと思うんだよな。

スキル情報で何となく分かる。

時間を見つけて俺も、もう一回やっとこうかな？

由奈ちゃんが目を覚ますまで俺は、ユウの案内で家の中を漁っていた。

「これは……お前嫁が居るのにこんな物持ってたのか」

『いやいや、嫁が居ても普通は持ってるって！』

そうなのか？

結婚した事無いから分からないが。

俺が手にしているのは所謂裏ＤＶＤというやつだ。

確か、個人使用で持ってるなら犯罪にならないんだよな。

俺は持ってなかったが、調べた事があったので覚えていた。

「他に何か持っていってほしい物はあるか？」

あっ、裏ＤＶＤを持っていく訳じゃないぞ。

あれは偶然俺が見つけただけだ。

『ん～……特にこれと言った物は無いかな？　既に死んでるしなおれ、はははは！』

明るい死霊だな。

リビングに戻ると既に由奈ちゃんが起きていた。

早くね！？

『おぉ……由奈が更に可愛くなった』

普通の女子中学生だった由奈ちゃんは、アイドルも顔負けの美少女になっていた。

「体の調子はどう？　違和感はあるか？」

立ち上がり色々動いて確かめる。

「大丈夫です、以前よりも身体が軽くて動かしやすい？　って言えば良いのかな？　怠さも無くなって気分は最高に良いです、ありがとうございます！」

おう、笑顔が強烈だな。

普通の男なら瞬殺の笑顔だ。

まさかこんなに早く最適化が終わるとは思わなかった。

明日から行動しようと思っていたが、これなら今日中に済ませよう。

「じゃあ、由奈ちゃんは魔物と戦う事はできる？」

「ん～、そうですね……何となく出来そうな気がします？　これも最適化の影響ですか？」

「たぶんそうかも？　まあ、戦えるなら生存確率は高くなるし、生きていく上で必要な事になるだろうな、今の世の中じゃ」

「私、魔法を使ってみたいです！」

やっぱり魔法には憧れるよねぇ。

という訳で、由奈ちゃんの職業は魔法使いに決定した。

これはもしや、由奈ちゃんを賢者にする事も可能では！？

本人が望めばそうするか。

魔法をさっそく使ってみたいと言うので、庭に出て試す事にした。

「じゃあ、先ずは魔力感知をしてから魔力制御な」

「はい先生！」

先生？　……まあ、悪くない。

中学生だしね。

それから２時間程やって、由奈ちゃんは簡単な魔法を使えるようになった。

ちなみに、ユウも由奈ちゃんもラノベ知識は皆無である。

ゲームは多少知っているようだが、説明が大変だ。

由奈ちゃんに魔物との戦いを経験させるために、ユウにこの辺りにダンジョンは無いか探してもらう事にした。

「行け、我が僕（しもべ）よ！」

ビシッと適当な方向を指さして言ってみる。

『約束だから行くけどよ、その言い方は何の真似だよ』

何やらブツブツ言いながらユウは壁をすり抜けていった。

由奈ちゃんはさっそく魔法で風呂に湯を溜めて入ってる。

やっぱ女の子だもんね。

って、気にしない女も居るか。

派遣で行った職場に一週間風呂に入っていない若い女の子とか居たなぁ。

皆に風呂入れってツッコまれてたのをよく覚えている。

よくよく思い返してみると派遣で行った職場って、結構個性的な人達が多かったな。

パートのおばちゃんとよく爆笑してたのを思い出した。

やっぱ知り合いも何人か今回の事で死んでる人も居るんだろうか。

あのユウが死んでたんだもんな。

ちなみにユウの見た目は濃い顔で結構イケメンな方だと思う。

よくおしゃれな髪型にセットしてたね。

鼻筋も通ってるし背も高いし、確か１８２とか言ってたな。

高校時代はダサくて陰キャの１人だったが、大学でガラッと変わってた。

そんな事を考えていると、ユウが戻ってきた。

「どうだった？」

ってか、早いな！

『この辺りには無いが少し行けば大きなダンジョンがあったぞ』

「大きなダンジョン？」

もしかしてショッピングモール的な？

それなら有難いんだが。

『街１つがダンジョンになってた』

その言葉を聞いて俺は固まってしまった。