9 死霊術。
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晴天で寒いけどモチベ上がりますっ!!
食料を収納し続けて5日目。
今日から先を少し見てみる事にした。
ちなみに自衛隊はまだ来られてない。
最後に収納してそのまま先へ進むと、通路がバックヤードのような雰囲気に変わった。
スタッフ専用通路って感じだ。
偶に段ボールが積まれた籠が通路に置かれている。
箱の中身は様々で、洗剤や缶詰等があったので収納した。
暫く進むと右手の壁が空いていて、そこが部屋になっていた。
「おっ、これは貰っていこう」
カルマをサクッと倒してその部屋にある物を全て収納した。
この部屋にあった物は、生活用品だ。
洗剤、ティッシュ、トイレットペーパー、生理用品、シャンプー、リンス、ボディーソープ、芳香剤、歯磨き粉等々。
髪染めのブリーチまであった。
その後、2日間このフロアを探索した結果。
欲しい物があったので大満足した。
それは、嗜好品である。
茶葉、コーヒー豆、タバコ、お酒、スパイス等だ。
食料品売り場にはペットボトルのお茶はあったが、元の茶葉やコーヒー豆は無かったからな。
中には吸った事も無い葉巻まであった。
吸っている自分を想像したが絶望的に似合わないな。
そう言えば、収納した物は全てバックパックだ。
商人のスキル【保管庫】は時間停止が無いので、商品となる物は全て自作のバックパックに収納してある。
代わりに、時間が経過しても問題無い物は入れている。
例えば、鉄くずだな。
殆どと言うか、鉄くずしか入っていない。
運び屋の【アイテムボックス】は時間停止は付いているが、大量に入れると魔力の消費が激しいので、何かあった時用に数日分の食料や生活に必要な物を収納している。
緊急時にしか使わないので殆ど放置だ。
その日に商品の仕入れが一応終わったので、一旦大学へと戻った。
勿論また姿を消して出ましたよ。
大学へ到着し会議室へ行くと、風間さんと稲垣ちゃんが居たので行商に出る事を伝える。
「他の街がどうなってるのか通信手段が無いので分かりませんが、気を付けて下さいね」
「いずれまた、戻ってくるんだろう?」
「勿論です、今は行商人ですからね……所で山波さんはどちらに?」
聞くと、上の人からの指示を持ってきた人がやってきて打ち合わせをした後、山波さんは此処の周辺を調べる事になり、隊を連れて出ているらしい。
ゾンビは殆ど殲滅されたらしいが、その後処理が大変だ。
死体の身元を調べるという作業が残っている。
身元が分かった死体から順に、遺族に連絡を取って死体を引き取るか、こちらで纏めて焼くのかを、1人1人聞いて回っているとの事。
それは時間が掛かるな。
役所仕事ってそんなもんなのか?
更に、政府はダンジョンの出入り口を壁で囲うか、人が暮せる場所を囲うかで議論をしているらしい。
流石政府! 対応が遅い!
そんな事で議論してどうなるんだ?
しかも、ダンジョンをどうするのかという話し合いも進んでいないとの事。
はぁ~、復興は数十年先になりそうだな。
まあ、民間人が勝手に復興していくだろう。
住む場所を整え、安心して暮らせる場所を。
そうすれば次第にコミュニティーで経済が活性化する事になるのかな?
いや、経済学は分からん。
ダンジョンから出てきてまだ朝なので、俺はこのまま行商へ出る事にした。
前回はスタンピードで行けなかったが、今回はちゃんと出発できそうだ。
そして風間さんと稲垣ちゃんに挨拶をして大学を出た。
完全に寒くなる前に北へ向かう事にする。
食料に困っている人達が多そうだし、って何処も困ってるか。
一期一会を大切にして行きましょう!
そう思いながら俺は歩き出した。
黙々と半壊した街を見ながら歩いていると、以前聞いたような声が聞こえてきた。
「ゾンビが居ない」
「レベル上げないと」
俺は交差点で立ち止まり、右の道路へ視線を向けた。
「ん?」
以前ゾンビを倒してレベルを上げていた中学生くらいの男の子2人が、ボーっと立っているのが目に入った。
何してんだ?
少し俯いてボーっと地面を見つめている。
ちょっと危ないんじゃないか?
近付こうとして気が付いた。
あっ……霊体か。
そう、俺は死霊術士になった事でこういう者が見えるようになったのだ。
普段は見えないようにしているが、偶に思いが強い霊体は見える事がある。
以前の俺なら小便ちびって走って逃げてるだろうなぁ。
そんな事を思いながら近づいた。
「君達は既に死んでるから、ちゃんと成仏した方が良いぞ?」
おそらくあのスタンピードで死んだと思われる。
スタンピードの少し前にこの辺りでレベル上げしてるのを見かけたからな。
話しかけても反応は無い。
ふむ……仕方ない。
俺は死霊術を使って強制的に成仏させる事にした。
スキルからの情報によると、死霊術は死んだ者の魂を魔力で死体と繋ぎ入れて操作したり、魔力で霊体をそのまま従わせたりもできる。
更に死霊術は、霊体との意思疎通もできるのだ。
じゃあ何故霊体が返事をしないかって?
スキルを使っていないからね。
死霊術を使えば霊体は無理やりにでも俺に従わないといけなくなる。
じゃあ話ができるようにするだけなら? って思うだろうが、それをするには俺の魔力で霊体を俺達の次元に留まらせる事になる。
そうすると、とても厄介な事になるんだよ。
どうなるかって?
霊体が成仏したがらなくなるんですよねぇ。
理由は分かるでしょ?
分からない?
霊体でこの次元に居れるって事は、何処でも行って何でも見れるって事になる。
そうなりゃもう、こんな若い2人ならハイテンションになるのは間違いない。
霊体の状態だと欲望のままに動く傾向が強いとスキルが教えてくれてるのでそうなるだろうなぁと……そしてその後、誰も気づいてくれない答えてくれないと寂しくなって、しまいには誰かを仲間にしようと肉体から魂を引っこ抜こうとする。
そうなればただの悪霊になってしまうので、結局無理やり成仏させる事になるんだよな。
なので話はしないで、強制成仏が一番簡単で面倒が起きないのです!
ブツブツ言っている2人に俺は手を向けてスキルを発動させる。
あまり魔力を強くしないように優しく……。
葬送!
すると2人は光に包まれ徐々に光の粒子になって空へと昇っていく。
消える前、2人は顔を上げて俺を見ると笑っていた。
本当は自分で気付いて成仏する方が良いんだろうけど、最後は笑って行けたなら良い方だな。
この葬送は本来、死霊術で操っている魂を解放して成仏させる時に使う術である。
今の世の中じゃ、自分が死んだ事に気が付いていない死霊は多そうだなぁ。
ま、俺が進んでやる事じゃないから別に良いか。
見つけた時に余裕があれば送ってやろう。
以前は心霊系はめちゃくちゃ苦手だったんだが、今はもっと怖い存在が多いし死霊に俺をどうにか出来る事は無いから全然怖く感じない。
しかもハッキリ見えるので普通の人に見える。
偶に透けている時もあるけど。
霊能力者の人達ってこんな気持ちなのかな?
そんな事を考えながらのんびりと歩き始めた。
自分の小説を読んで頂きありがとうございます。




