6 コアルーム?
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翌日、日が昇る頃に医務室のベッドで目を覚まし、食堂へ行ってクラフトで朝食のサンドイッチを作り、一人食べているとユウたちがやってきた。
おはようの挨拶を済ませ皆が順に朝食を食べていく。
「飯食ったら転移で行くからなー」
と、行くメンバーに向けて言うと頷く。
最初に食い終わったので一服していると、スマホが鳴る。
堀さんからだ。
「堀さん、おはようございます」
『あっ、おはようございます! 朝早くにすみません』
「いえいえ、どうしたんです?」
『はい、実は……』
と話してくれた内容は、各地で新種の魔物を発見したとの報告があり、その内容がどうも信じられないという。
その報告とは、人間の姿をした魔物で、瞳の色が黄色だったり赤だったりで、歯にタールのような黒い物が付いていて、不気味な雰囲気があるらしい。
ふむ、目が赤いってだけなら吸血鬼だろうけど、黄色もいて歯が黒いって……お歯黒?
しかも不気味な雰囲気って曖昧だな。
で、その報告内容からして、全て同一の存在である可能性が高いらしい。
しかし、距離を考えると移動速度が信じられないくらい速いと言う。
一応場所を聞いてみたが、確かに移動が速すぎる。
世界の図書館から情報を引き出すには、情報が少なすぎるな。
一瞬昔のお歯黒の情報が出てきたし。
「分かりました、こちらでも何か分かればすぐ連絡します」
『すみません、よろしくお願いしますっ!』
そう言ってスマホを切る。
不気味な新種の魔物か……そいつが謎の光の正体か?
とにかく、巨大穴ダンジョンのコアを破壊すればもう出てこなくなるはず。
電話をしている間にメンバーの準備が済んでいたので、この場からすぐ出発する。
「じゃあ、後の事は頼んだ」
「任せて!」
となっちゃんが言う。
由奈も美晴さんもおっちゃんも頷く。
美晴さんの肩に乗っているピアも頷いていた。
ユウと美香が俺の肩に手を乗せたので、さっそく転移する。
転移した先は、3番の奥から行ける最初に入った異世界の魔法陣がある祠の前だ。
ここなら異世界なので直接転移出来る。
すぐ魔法陣で巨大穴ダンジョンへ転移すると広場へ行き、1番の穴から奥へ進む。
山波さんたちは、どこかの異世界に行ってるのか、姿が無い。
それと広場の上から落ちてきた魔物は、祠から降りてきた時にしか出てこないみたいだ。
広場に出ても魔物が出現しないのはそういう事だろうな……たぶん。
「この穴は行き止まりじゃないのか」
穴を進んでいるとユウが呟く。
「ああ、一回俺と美香で結構進んだけど、まだ奥まで続いてるようだったぞ?」
「下層へ行く階段があるんですかね?」
「まあ、魔力はこの奥にも流れてるから、魔法陣か階段がありそうだな」
そんな話をしながら穴の奥へ進むと、階段を発見。
こんなデカいダンジョンだ。
何階層まであるのか分からないが、迷宮支配を試しながら進む方がいいだろう。
そう決めて俺たちは階段を下りていく。
下りた先はなんと、滅茶苦茶広い空間で奥行きも幅も数百メートルはある程だ。
天井は50メートル程かな?
床も壁も天井も硬そうな白に近い灰色の床だ。
「ここが2階層?」
「どんな空間だ?」
美香とユウが言う。
「いや……ここは2階層じゃない」
そう言うと美香とユウが俺を見た。
俺は前方を見つめながら説明する。
「ここは2階層でも、ボス部屋でもない……コアルームだ」
「えっ……コアルームって」
「じゃあ、ここが最下層って事か?」
この広場の中央辺りに、見覚えのあるガラス玉が浮かんでいた。
すると……。
『ご名答』
突然知らない男の声が聞こえるが、姿はどこにも見当たらない。
「誰だ?」
分からないので周囲を警戒しながら聞いてみる。
『おや? 我々の言葉が分かるのか、珍しいな』
翻訳が付いているからね。
ってかこいついま『我々』って言ったよな?
複数居るのか。
何者だ?
ダンジョンコア?
いや、ダンジョンコアに自我は無いはず、ましてや会話なんて無理だ。
……いや、シュリバスのように契約してる奴か?
それなら会話は出来るが……おかしいな、魔力反応が無い。
『私の姿が見えないようだな』
こいつの言葉遣いに違和感がある。
丁寧に話しているようで、かなり傲慢な質を含んでるぞ?
なんかこう、チグハグだ。
こういう傲慢な奴には商人っぽくいくか。
「そうですね、私たちに姿を見せて頂けると有難いのですが?」
『君たちの目の前に居るではないか、これだから人間は……』
こいつは人間の事をよく知っているみたいだな。
しかも、目の前に居て見えないって透明になれる魔物? それとも……高次元の存在か!?
これはマズい。
まさか神の類?
一気に俺の中で緊張感が高まり、警戒度がMaxになる。
「すみません、どうも次元が違うようで見えません」
『ほう、君は高次元の存在に会った事があるようだな』
「はい、以前ちょっとだけ会って話はしました」
神とね。
『それはもしや、神というやつかな?』
俺と美香は冷や汗を掻く。
今一瞬、空気が変わったぞ?
ここは慎重に答えないとヤバそうだ。
って、ありのままを言うけど。
「ええ、確かそのような事を言ってました」
そして少し間が空く。
なんだ?
返答を間違えた?
っていうか、こいつは何なんだ?
さっそと姿を見せろよ!
『そうか……では、君たちはここへ何しに来たのかね?』
神は流すんかい!
「ダンジョンコアを破壊し、このダンジョンを破壊するためですが?」
これでこいつの目的もある程度分かるだろ……たぶん。
シーンとする。
なんだ?
何か言えよ。
すると……。
『クックックッ、それは困るな』
困る?
やっぱりコアと契約してるのか?
「それはあなたが、コアと契約しているから……ですか?」
どうだ?
『いやいや、私がコアと契約なんぞするわけ無いだろう?』
違う!?
じゃあ……なんだ?
「ではなぜ困るんですか?」
そう聞いた瞬間、5メートル程離れた場所の空間が歪みだし、次第に赤黒い靄が中心から溢れ出す。
なんだあれは?
滅茶苦茶嫌な感覚がする。
するとその赤黒い靄は人の形をとり、徐々に姿を現したのは、スーツを着た40代くらいの白人っぽい男だった。
白髪でパーマが掛かり、肩ぐらいまでの長さがある。
そして、瞳の色が金色だった。
男はゆっくり地面に降り立つとこちらを見て言う。
『コアを破壊されると、我々が帰れなくなるだろ?』
帰れなくなる?
こいつは……異世界から来た!?
「異世界人?」
そう言うと男は鼻で笑い答える。
『フンッ、異世界人などと同じにされるとは……まだ分からんのか?』
いや、分からないからさっさと教えてくれ。
『我々は人間が言うところの……悪魔だ』
そう言って笑った男の歯は、タールのような物で黒くなっていた。
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