15 山波涼太3
今日最後の投稿です。
明日も2話アップできるようにします!
Side:自衛隊1等陸尉・山波涼太。
最初の地震から約3ヶ月。
俺達は会議室で話し合っていた。
「じゃあ、救助は期待できないと……」
そう言って俯く風間さん。
俺達は街に出ては食料を確保し、救助者が居れば大学へと連れて帰った。
そうして徐々に大学に避難している人の数が増えていき、食料が直ぐに底を突くようになる。
幸い避難民の人達はお互いに気遣い譲り合って過ごしているようで、大きな揉め事は起きていない。
しかし、今の状況が続けばこの先どうなるかは分からない。
駐屯地へ確認に行った部隊が昨日帰還して聞いた報告は『駐屯地に人は誰も居なかった』という事だけだ。
入り口の所に張り紙があり、そこには『小坂駐屯地は食料が尽きたため放棄します。御用の方は赤霧駐屯地へお願いします。』とあったらしい。
地震があった後直ぐに駐屯地へ行った時は此処で待機するように言われ今までそうしてきたが、もう限界が近い。
場所を移した方が良いのか、それとも……。
「山波さん」
どうするか考えていると風間さんが声を掛けてきた。
「はい?」
「作りましょう」
作る?
「何を?」
「人が安心して暮らせる場所をです……昼下がりに他愛もない話をする場所や、子供達が楽しく笑って遊べる場所を」
風間さんは民間人の人達とよく話しているのを見かけた事があった。
ちゃんと人の話を聞いて、上手い事此処を纏めてくれている。
あの厳つい風間さんが笑ってそう言った。
風間さんの言葉でみんなが一斉に動き始めた。
職員に大学全体の地図を出してもらい、それを元に先ずは区割りをする。
しかし……。
「やっぱり大学の土地だけだと、足りませんね」
この大学の土地は広大だが、それでも全員が暮すにはまだ足らない。
そこで俺達は、大学周辺の土地を確保するために動き出した。
このT大学は全部の土地を入れると小さな町程の大きさだが、一部が離れた土地にあるので使えないのだ。
今後も人が増える事を考えてもっと広い土地が必要になってくる。
大まかに調べた現在此処に居る人の数は約800人。
若者が勝手に外へ行ったりしているので完全に把握はできていない。
これ以上の人が暮せるように、周辺のゾンビを駆除しなければいけないのだ。
まあ、それは俺達の仕事だろうが。
幸い化け物は地震から1月程経つと姿を現さなくなった。
俺達は動ける者達に声を掛け、防壁を築くための素材を集めるようにお願いした。
皆に風間さんが決めた『安心して暮らせる場所』を作る事を伝え、賛同してくれた人達と今まで感じた事が無いただ生きるという事が、何か楽しく思えてきたのは、俺の秘密だ。
そうして動き出した計画の中、俺はいつもの食料確保と救助者の探索に部下達と出かけた。
今まで行った事が無い方面へゾンビがうろついている中、倒しながら進んでいく。
「隊長、確かこの先に大きなデパートがあったはずです」
「ん? 地元か?」
「はい、あの団地に住んでました」
掘の情報でそのデパートへと足を向けた。
そして到着した我々は困惑していた。
「これはどういうことだ?」
「明らかにおかしいですよね」
そう、目の前のデパートに電気の明かりが点いて綺麗なままなのだ。
こんな事が有りえるのか?
物凄く怪しいが、今の我々に選択の余地は無い。
食料があるなら行くだけだ。
腹を空かせた子供達の為に!
「隊列を組め、慎重に行くぞ」
我々もゾンビを倒してレベルが上がった事で少しだが身体が軽くなったり、力が強くなっているのだ。
多少のゾンビや魔物なら、何とか倒せるだろう。
警戒しながら俺達は正面から入っていった。
「何だこれ? どうなってんだ?」
入ればデパートの通路が続いているだけで商品等が見当たらない。
もしや幻覚?
すると堀が口を開いた。
「隊長、もしかして此処がダンジョンかもしれません」
「ダンジョン……」
そうか!
外からの見た目と中に入って変わる景色。
中に入るようにおびき寄せるダンジョンだと考えれば辻褄が合う。
しかし……。
「ダンジョンって洞窟じゃないのか?」
するとカクッと堀の力が抜けた。
「隊長~、ダンジョンは洞窟だけじゃありませんよ」
そうなのか……不思議系の最初は洞窟だったからな。
ま、あれはゲームの話か。
「周囲を警戒して進む」
そして最初の交差点へやって来た俺達は、堀が壁沿いに行き交差点の通路を確認する。
「どうだ?」
「右に魔物が居ます……魔物と言うよりクリーチャーですね」
俺はそっと壁から覗いてみた。
何だあれは!?
気持ち悪!!
バイオ的な奴じゃねぇか!!
皆の所に戻り少し考える。
今避けてもいずれは戦う事になるだろう。
なら万全な今殺しておくべきだな。
「銃の確認……ここで仕留める」
全員頷いた。
準備を整え通路を塞いで仕留める。
全員が銃を構えたのを確認すると。
「撃て!」
何十発の弾丸の雨をクリーチャーが浴びるが、直ぐに動き出しこちらに迫ってきた。
「囲め!! 動きを止めろ!!」
しかし、奴は止まらない。
「引け!」
俺達は入り口の方へと引きながら銃を撃ちまくる。
クソッ、こいつに銃は効かないのか!?
しかも動きが速い!
「銃弾が切れました!」
「俺もです!」
と次々報告が上がる。
チッ、こいつは今の俺達には倒せないのか。
悔しいが一旦引くしかないようだな。
「撤退!」
徐々に入り口へと引いていくが、1人遅れた堀に奴が迫る。
「ぐはっ!」
何とか銃でガードしたようだが……何だあれ、銃が曲がってるぞ!?
どんだけ強い力で蹴ったんだ!?
と言ってる間に、クリーチャーが掘に迫り腕を振り上げていた。
ヤバい!!
弾がもうない、間に合わないっ!
その瞬間、パンッとクリーチャーが目の前で弾けた。
はっ?
何があった……って誰だあれ?
あの格好は何処かの軍人か?
「お勤めご苦労様です! 大丈夫ですか?」
そんな事を考えていると部下達が弾の入っていない銃口を謎の人物に向けた。
とりあえず聞くしか無いか。
「あなたは誰ですか?」
丁寧に聞かないとな。
すると男はヘルメットを上げ顔を見せながらこう答えた。
「どうも商人です」
はっ? ……商人?
いや、どう見ても軍人だろ?
「あっ、私は陸上自衛隊1等陸尉の山波です、貴方は何処の所属ですか?」
ん? 若い男が何やら微妙な表情をした。
「あの、私はただの一般人ですよ?」
「いや、その格好は……」
すると堀が小声で俺に言ってきた。
「隊長、あれはおそらくサバゲー用の装備ですよ」
サバゲー?
サバゲーってあのサバイバルゲーム? って、こんなカッコいい装備があるのかよ。
滅茶苦茶どっかの特殊部隊かと思ったぞ。
紛らわしいな。
次回からは主人公視点に戻ります。




