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15 理外の雫。

評価、登録、いいね、感想をして頂きありがとうございました。

誤字脱字報告ありがとうございました。

「あの、進藤さん?」

立ち上がりシュリバスへ向かって歩いていくと、美香が声を掛けてきた。

「どうした?」

「何をしたんです?」


ん~……。

「全部終わってから説明するから、ちょっと待っててくれ」

そう言って俺はシュリバスに視線を戻す。


攻撃が出来なくて困惑しているシュリバスに向かって更に告げる。


「お前がダンジョンコアなら俺は、ダンジョンマスターだ」

『ダンジョン、マスター?』

分かっていないようだが、こいつにこれ以上説明する気は無いので、さっさと終わらせる。



ダンジョンマスターになって習得したスキル。

【迷宮支配】と【迷宮生成】の2つだけだが、2つともかなりスキル情報を含んでいる。

あの神が言ったとおり、全てを使いこなす事は今の俺じゃ無理だろうな。


とりあえず迷宮支配でダンジョンコアであるシュリバスを、ガラス玉のコアに戻す。


魔力を練りイメージする。

右手の掌を上に向けて前に出し発動。


するとシュリバスの大きな身体の端から、俺の掌の上に吸収されるように集まってきだした。


『なっ!? なんだこれは!? 身体が勝手に、何をしたきさま!?』

「もう黙れよ、お前のコアは俺が貰う……消えろ」


そんな会話をしている間もシュリバスの身体は端から崩れては掌に集まり、とうとう奴の全てが俺の掌の上に全て集まると、直径20センチ程の薄い紫色のガラス玉へと姿を変えた。



「洋介、今のはいったい?」

アニルが聞いてくるので軽く答える。

「シュリバスを本来の姿に戻しただけだ」

そう言って掌にあるガラス玉を見せた。


「これがシュリバス?」

すると、皆が集まりだしガラス玉を見始める。

「これがっすか?」

「シュリバスがダンジョンコアっていうのは本人が言ってましたけど……」

「これをどうするの?」

「破壊すれば終わりか?」

俺は首を横に振って答えた。


「ユキを生き返らせるんだ」

そう言うと皆が固まる。

「……ユキちゃんを?」

美香の問に頷きだけで返す。



あの時リズタルテさんが言った生き返らせる方法とは、本来死んだ者を生き返らせる事は不可能だ。

それは世界の理で決まっている。


だが、その世界の理の外にあるダンジョンコアを使えば、死んだ生物を生き返らせる事は可能だと教えてくれた。

たとえ神であっても生物を生き返らせる事は不可能らしいが、ダンジョンコアならそれが可能だ。


しかも……『あなたの持つ想像生産クラフトがあれば可能よ』と教えてくれた。


ダンジョンコアを破壊して手に入れた想像生産で、ダンジョンコアを素材に生き返らせる物を作る事になるとはね。


俺はさっそく魔力を練りイメージを固める。


死んだユキの魂を呼び戻し、生き返らせる事ができるアイテム。

ラノベ知識だとやっぱりあれになるけど、ここはちゃんとイメージしないとな。



発動した瞬間、殆どの魔力が消費され、コアから金色の光が溢れ出す。


「……綺麗」

と美香が呟く。

「龍でも出てきそうな雰囲気っすね」

それは神の龍の事か?


アニルたちは黙って見ていた。

シュアはワクワクした顔をして見ているが。



次第にコア自体が金色に光り始めると、その形を変えていく。

少しして光が収まると掌の上には、小さな小瓶が乗っていた。


俺はしゃがみ込むとユキの遺体を取り出し、その小瓶の雫を垂らす。


ユキ……戻ってこい。


するとユキの遺体が金色の光に包まれると切断された身体は元に戻り、金色の光が一気に空へ伸びる。


少しすると光の柱の中をキラキラした何かが落ち、ユキの身体に降り注ぐと光は溶けるように消え、ユキのお腹が動き出した。


「……ユキ?」

俺が名前を呼ぶとユキは目をパチッと開け、頭を上げ俺を見る。


『ヨウ、どうしたの? どうして泣いてるの?』

ユキは身体を起こし俺の膝元へ来ると膝に手を乗せ、頭を俺のお腹に埋めた。

俺はユキの頭を撫でながら言う。



「この馬鹿が……泣いてねぇよ」



横では美香も泣いていた。

シュアもだ。

シュアは猫獣人だからか、ユキとは仲が良いからな。


暫く撫でると俺は、ユキを両手でつかみ顔の前に持ってくる。

キョトンとするユキ。


「俺が待てと言ったら待て!」

真剣にそう言うとユキは首を傾げる。

『いつも待ってるよ?』

こいつは大きくなった事で調子にのって言う事を聞かなかった。


何があったのか全部説明してやるとユキは、耳をペタンと倒し上目遣いで謝る。

『ごめんなさい』

この……。


「いつもなら可愛いから許すが、今回は駄目だ! 暫くはバッグから出る事を禁じるからな」

『は~い』

そう言って俺に持たれたまま力を抜きブラ~ンとぶら下がる。



俺はもう一度ユキをギュッと抱きしめ呟く。

「もう家族を失うのは勘弁してくれ」

『……うん』

ギュッとした後はバッグに放り込む。


「暫くは大人しくしてるように!」

『はーい!』

あんな思いは二度と御免だ。



さて、ダンジョンコアは無くなったし、一旦グエンルに帰るかと思い立ち上がると……。

「お前、泣き過ぎだろ」

美香が横で号泣していてちょっと引いた。


「だっで……ユキぢゃんと……じんどうさんが……ズズッ……」

「あぁ、分かった分かった……好きなだけ泣け、そろそろ街に戻るぞー」

「洋介、良かったな」

「良い奇跡を見させてもらった」

「流石洋介ね……ユキちゃんおかえり」

アニルたちも喜んでるようだ。



そこでふと堀さんを見ると、周囲を見て首を傾げていた。

「堀さん? どうしました?」

「いや……ダンジョンコアが無くなっても、ダンジョンは残ったままなんだなぁって思って」

ふむ、確かにラノベだと崩壊するのが定番だが、現実のダンジョンは消えないのかな?


そこで俺は思いだす。

迷宮支配によって、このダンジョンは崩壊しない事に。

つまり、俺が維持してる状態なのだ。



それを説明すると……。

「じゃあ、スキルオーブも取り放題っすか!?」

俺はその問いに首を横に振る。

「違うんっすか?」

同志よ、それはラノベ知識ならそうなるが、現実はそんなに甘くないのだよ。



それをやれば、俺の存在が消えてしまいます。

読んで頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良かったです。うまくいくと思っていましたが、数日間焦りました。心配させたから、また叱って。
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