12 シュリバス。
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金色の瞳がこちらをジッと見つめている中、俺は気になっている事を聞く。
「あなたはダンジョンの階層ボス?」
そう聞くと彼は表情一つ動かさず答える。
「ワシはここの王である」
王……。
俺は一つの可能性を導き出し聞いた。
「あなたはもしかして、レインズを作ったシュリバスさんですか?」
すると王は少し表情を変えた。
アニルたちも一緒に驚いた顔をしている。
まあ、何となくで聞いてみたんだけど、当たってたのかな?
「ほう、ワシを知っているのか……既に誰も知らぬ名だと思っていたがな」
そこでアニルが言う。
「いえ、あなたの名は誰もが教えられる事です。住民は全員知っています……レインズの生みの親という名として」
シュリバスはそれを聞いて頬杖を解き、背もたれにもたれ掛かり見下ろすようにこちらを見て、口端を上げ答える。
「そうだとも、ワシこそレインズの生みの親であるシュリバスだ……それをあのクズ共が……」
なるほど、誰かに裏切られたって事か。
まあ、そこは興味ないので流します。
「1000年以上前に生きた人がどうして今は、ダンジョンの中で王になってるんですか?」
「ん? ……はて? どうしてだったかな?」
昔過ぎて忘れたのかよ。
「あぁ、思い出した……」
そう言って話し始めた過去の出来事。
まあ、細かくその時の状況などを言っていたが簡単に纏めると、ダンジョンコアと契約をして、自身がダンジョンコアになったって事だな。
って、契約ってなんだよ。
俺が破壊した時はそんな話し無かったけど?
もしかして、あの時壊さず契約してたら俺もダンジョンコアになってた可能性がある?
……いや、ダンジョンコアになるってよく分からんので断ってるだろうな。
ずっと台座から動けないイメージしか湧かないもんね。
暇すぎるだろ。
「つまりこのダンジョンを破壊するには……あなたを倒さないといけないって事ですか?」
「なぜこのダンジョンを破壊する必要がある?」
おう? こいつ自分がやってる事を分かっていないのか?
「あなたがレインズにこの都市に入った人間や魔物の排除を指示してるお陰で、子孫である彼らがこの都市に入れないんですよ」
俺がそう言うとシュリバスは鼻で笑い答えた。
「フンッ、それは当然の話だ」
「当然?」
「ワシが生み出したレインズたちをあ奴らは……ワシから奪ったのだ! そんな人間なんぞ滅んでしまえばよい!」
「いやいや、それは1000年以上前の人間でしょ? 今の人間にはまったく関係ない話では?」
そう言うとニヤッと笑いシュリバスは言う。
「何を言うか、人間に何の価値があると言うのだ? ただ世界を汚す、あんな汚い生物など存在する価値も無いわ」
ふむ……昔俺も思ってた事なのでその気持ちはよく分かるが、それは基準によるでしょ。
この爺さん、1000年以上ボッチのお陰で思考が偏りすぎてるぞ。
一人で色々考え過ぎだ。
「俺は、生物は全て汚いと思ってますよ……それが生物なんだと今は受け入れてますね」
「だからそんな物は必要無いと言うておる、世界にとって必要の無い存在は消すのみだ」
おお、極端だな。
いや、極致と言うのか。
そこまで固まってるならもう何を言っても無駄だろうね。
俺も人と関わらない生活をしていたらこうなってたかもなぁ。
「なんだ? 話は終わりか?」
「そうだな……そろそろ終わりにしようかな」
「フッ、久しぶりに他人と話して少し楽しかったぞ、しかし……」
その瞬間、シュリバスの身体から黒に近い紫色のモヤモヤした物が溢れ出した。
あのコアの中で蠢いていた物だ。
「ずっと、我が子たちの目を通してお主たちの事は見ていた……我が子たちの仇は親の役目だ……死ねぇ!」
いや、我が子って兵器じゃん!
って理屈は通らないんだろうな。
シュリバスが叫んだ瞬間、モヤモヤが一気に広がり俺たちを包み込む。
皆警戒している。
ん? 暗いのに皆の姿がハッキリ見えるのはなぜ?
ただの闇じゃないのは確かだな。
すると、50メートル程離れた闇の地面からオレンジ色の光が溢れ出し、亀裂が走るように光が広がっていく。
まるで溶岩だな。
なんて思っていると、いつの間にか地面は岩肌になり、周囲に溶岩の海が現れていた。
服のお陰で熱くはないが……落ちたらヤバそうだ。
岩肌の地面は直径100メートル程ある円形になっている。
溶岩の海は地平線まで続いているように見え、空は闇のままだ。
すると次の瞬間、亀裂の始まりから光が溢れ、地面を盛り上げながら……頭だけで20メートル程あるシュリバスが出てきた。
滅茶苦茶デカいんですけど?
しかも頭部は人間のままだが、腕と身体がレインズのような機械になっている。
レインズの親はレインズってか?
シュリバスは上半身だけを地面から出し、両腕を地面に突くと話し始める。
『ダンジョンコアと同化したワシの力を見せてやろう』
そう言って右腕を振り上げると、機械の腕が3本に別れ、腕先がハンマー、剣、鞭と、それぞれ青白い光を纏ている。
「避けろ!」
何人かは魔術や武器でガードしようとしていたが、あの攻撃は避けないとマズいと判断し、皆に指示する。
次の瞬間、その腕が振り下ろされ、激しい衝撃と岩肌の地面を抉り、破片が飛び散る。
土煙が巻き起こり、何も見えなくなった。
魔力感知で全員避けた事は分かっているので大丈夫だ。
しかし、あれをどうするかだな。
すると一緒に避けたユキが横で、徐々に大きくなりながら前に出る。
『私がやる! 大きさなら負けないよ!』
そう言ってまだまだ大きくなっていくユキ。
俺はこの瞬間、今までに無いくらい不安が過った。
「待てユキ!」
『任せて!』
そう言って跳んだユキの右側から、土煙を晴らしながら迫る大きな刃が目に入る。
声を出す暇さえ無かった。
俺は目を見開き、ユキの身体が大きな刃によって切断されるのを、見ている事しかできなかった。
「……ユキ?」
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