8 バッタ?
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別々に飛ばされた俺たちは、とりあえず合流するための話し合いをし、俺が定期的に念話で連絡を取る事になった。
そして出発する前に、近くに誰か居るかを確認するために俺が大声で呼びかけ、聞こえたら返事をしてくれと伝える。
「ぅおーい……!!!!」
………………。
うん、近くに誰も居ないらしい。
『じゃあ、ある程度進んだらまた声を掛けるから、聞こえたら返事してくれ』
そう言うと皆が了解と答えた。
さて、道は一本しか無いのでさっさと進む事にする。
ユキは俺の横を歩きながら一緒に通路を進んでいく。
「魔物の気配は無いな」
『そうだね~、飛ばしといて何も居ないって変だよね?』
ふむ、それは確かに。
俺なら飛ばした先にトラップでも仕掛けておくが、あの部屋には何も無かったな。
もしや飛ばす事でトラップが完了しているのか?
って、どんなトラップだよ。
「もしかしたら、俺たちをバラバラにするのが目的なのかもな」
『何のために?』
「そりゃ……倒しやすくするため?」
いや、それならあの数で待っていた意味が分からないな。
「なんだろうな?」
『まあ進めば分かるよね』
「そうだな」
そのまま暫く進んでいくと、前方に最初と同じような部屋が見えてきた。
部屋の手前までくるとはっきりと分かった。
確か昔、こんなゲームあったなぁ。
一本道を進むと各部屋にボスが居る、みたいな。
俺たちが見ている部屋の中にはバッタ? に似た二足歩行の魔物が立っている。
サイズは人間と変わらない。
リアル版某ライダーのようだ。
まあ、あれは人間っぽさがあるが、こっちは全身黄緑のバッタで、腕や足、胴体は強靭そうに見える程……ムキムキである。
仁王立ちした風格あるバッタ。
字面だけでもインパクトがあるが、見た目もインパクトが強い。
ふむ、こいつを倒さないと先には進めないって感じか。
やったろうじゃねぇか!
「どれくらいなのか確かめるから、ユキは手を出さないように」
『はーい』
俺はそう言って部屋に一歩足を踏み入れた。
その瞬間、目の前にバッタの大きな目が現れる。
キモッ!
俺は咄嗟に左腕を上げると、奴の肘を受け止める。
重い。
続けて下から膝が顎を目掛けてきたので、身体を反らし避ける。
この間、約0・5秒。
左足を上げた状態のバッタ。
俺はすぐさま軸足の膝を蹴って体勢を崩したバッタの横っ面に、思いっきりフックを打ち込んだ。
床を蹴り腰を捻り、その発生したエネルギーを全て奴の面に叩き込む。
バチッ! と物凄い音を鳴らし奴は10メートル程吹っ飛んでいった。
床を転がっていくが、奴は途中で手を突いて立ち上がり、また仁王立ちになる。
ん~、こいつは厄介だな。
何が厄介かって?
あのバッタみたいな魔物、かなり頑丈なのだ。
レインズなら今の攻撃で破壊してるはずなんだけどな。
流石虫?
虫って確か弱点以外はかなり頑丈って、何かの漫画で読んだ事がある。
殴った感じも堅いタイヤを殴った感触だ。
弱点を見つけないと難しいかな?
しかも、あの何を考えているのか分からない目。
かなり不気味だ。
奴が首をコキッと捻り鳴らすと、姿を消し俺の背後に移動したのを感知した。
縮地か!?
振り返り奴の右足による蹴りを腕でガードすると、重い蹴りによって俺は吹っ飛ばされるが、空中で身体を捻り床に着地する。
こいつは強いな。
素手の戦いでここまで強い魔物は初めてかも?
ちょっと楽しくなってきたぞ。
『なに笑ってるの? 大丈夫?』
と、自然と笑っていたのか、ユキが心配してる。
『大丈夫だ、ちょっと楽しくなってきてさ』
『さっさと終わらせて進まないとだよ』
『ああ、もうちょっと待ってくれ』
こんな機会中々無いからな。
首を捻りコキッと鳴らし、腕を振るってリラックスすると、気、闘気、魔力を纏っていく。
すると次の瞬間には、激しい攻防が部屋の中で繰り広げられた。
躱し受け流し、殴り蹴りを10秒程続けると、奴の身体には徐々に傷が増えていく。
そして奴が体勢を崩した瞬間。
俺は奴の懐に入り、何を考えているのか分からない目を見ながら奴の首を突き、身体から切り離した。
紫色の血を噴き出しながら奴の身体はドサッと音を立て、床に倒れると同時に奴の頭部が床に落ち転がって止まる。
「良い戦いだった!」
いやぁ、マジで楽しかったぞ。
機会があればまたやりたいもんだ。
これ程訓練になる戦いは中々出会えないからな。
すると、奴の身体も頭部も光の粒子になり消えるとそこには、直径20センチ程の魔石が落ちていた。
有難く頂いていきます。
バックパックをアイテムボックスから取り出し、バッグに収納する。
『ムアの魔石』
あのバッタ、ムアっていうのか。
まあ、進んでたらいずれまた出てくるかもしれないし、さっさと進むか。
『終わったー?』
「おう、先に進もうか」
と、思ったのだが、いつの間にか壁際に横幅50センチ高さ30センチ程の黒っぽい箱が現れていた。
こんなのさっきは無かったよな?
ユキと見合い目で会話する。
とりあえず開けてみるか。
って、いきなり開けないぞ?
ダンジョンの宝箱と言えばトラップだからな。
ユキが近づき探ると、どうやら罠はないとの事。
というわけで、さっそく開けてみる。
なんだこれ?
中には野球ボールサイズの黄色いガラス玉?が入っていた。
何かのアイテムだろうけど、何に使うんだろうか?
バッグに入れて確認してみると……。
「マジかっ!?」
『スキルオーブ』
ここにきてあのスキルオーブが出るとは……。
何のスキルなんだろ?
とても気になる……。
そうだ、鑑定スコープ!
そしてその内容は。
『【種類】スキルオーブ
【詳細】これは《強靭》スキルを取得するためのスキルオーブ。能力を司る神リズタルテが作った神の雫とも謂われている。《強靭》は己の全て、血管や神経、骨、魔力までもが強靭になる』
「何じゃこりゃあ!?」
あっ、ユキがビクッてなっちゃった、ゴメンね?
読んで頂きありがとうございました。




