14 9階層は。
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アニルたちに病気の話を聞いて、何となくそれは病気じゃない気がした。
詳しい話は落ち着いた場所で聞く事にし、俺たちは移動を始める。
ま、移動と言っても俺が足場を動かすだけなんだけどね。
これは、新しいスキルの訓練をしている時に思いついた物で、移動には丁度良いと練習しといてよかった。
昭和の街並みを見下ろしながら階段を探す。
「どうやって階段を探すか」
「下りたらあの大量に蠢く魔物がやって来ますからね」
「何か良い方法は無いっすかアニルさん?」
「いやぁ、俺たちはいつも歩き回って探してるからなぁ……すまん」
「いえいえ、いいっすよ全然……進藤さん、どうします?」
「そうだなぁ~……ん? もしかして」
そこで俺はある事を思い出し、推測が正しければ階段を探せるだろうと試す事にする。
「ちょっと待ってて…………やっぱり」
「どうしたんです?」
「何か分かったっすか?」
俺はとある場所を指して言う。
「階段はあそこにある」
「えっ、どうして言い切れるんですか? もしなかったら……」
「そうっすよ、その根拠を教えてほしいっす」
するとアニルたちも頷いていた。
「魔力の流れを見てみろよ、そうすりゃ分かる」
そう、俺が思い出した事はダンジョンが魔力を吸収している事と、階段は魔力の通り道って事。
それなら魔力の流れを辿れば階段はそこにあるだろ?
皆も魔力の流れを見て分かったのか、納得した顔をしていた。
さっそく階段のある場所へと俺たちは向かう。
「あの商店街の中だな」
「階段の詳しい場所はここからじゃ分かりませんね」
確かにそうだ。
魔力は商店街のアーケードへ流れているのは分かるが、商店街の中のどこにあるかは分からない。
もし階段を見つけるのに戸惑ってしまえば、また大量の魔物が押し寄せてくる。
商店街の中にも魔物は居るのか? と思い、中が見える位置に移動して覗くと、外に比べると数が圧倒的に少ないのが分かった。
「ふむ……美香と堀さん2人で、片方の商店街の出入り口を結界で塞げる?」
そう聞くと美香は少し考えてから答えた。
「……たぶん、いけると思います。 堀さんの氷を張れば更に強固になるかと」
「そうっすね……うん、できると思いますっ!」
「じゃあ、こっち側のアーケードの上に降ろすから、念話で合図したら張ってくれ、俺は反対側に結界を張るから」
「了解っす!」
「分かりました」
一応護衛としてアニルたちも美香たちに付いてもらう事にした。
俺は1人で十分です。
5人を降ろして俺は反対側へ向かい、周囲の魔物を確認すると数が少ない今の内にやる事にした。
『よし、今だ!』
俺は足場に乗りながら、根源魔導を発動。
魔物を物理的に通さない結界を張る。
すると、商店街の出入り口が真っ白な壁に覆われた。
そのまま俺は足場を移動させて商店街の中に入ると、ちらほら居る魔物を火魔法で倒しながら反対側へ向かうと、氷の壁が出入り口を塞いでいるのが見えた。
中では美香たちが魔物を始末していってる。
美香たちの所に到着する頃には既に魔物は居なくなり、皆も一息ついてる最中だった。
「お疲れー」
そう言いながら俺は足場を消して地面に降りる。
何とか上手くいってよかったよ。
俺たちはその後、魔力の流れを辿って階段を発見。
丁度商店街の中心にある、八百屋の奥にありました。
すぐ9階層へ下りていくとそこは、古い民家の廊下が続いている場所だった。
これはあれだ。
ホラーゲームにある昔の日本の家って感じだな。
「うわ、障子が全部破れてますよ、っていうか、滅茶苦茶ボロいですね」
「テーマパークにあるお化け屋敷みたいっす」
確かにそう見える。
廊下の左右の壁には、等間隔でロウソクに火が点いて、小さな灯りになっているが、全体的に薄暗いんだろうな。
暗視があるので俺は普通に見えるが、美香と堀さんはちょっと不気味がってるようだ。
廊下は数メートル進むと右に曲がっていて、本当にただの古民家の廊下って感じだ。
警戒しながら進むと、破れた障子が開いている所に到着しそっと中を覗くと、和室に台が無造作に置かれ、その上にはかなり前に人が生活していたように、物が散乱しているのが見える。
ゴクッと誰かが生唾を飲み込む音がした。
美香を見ると顔が青ざめている。
「もしかして、心霊系は苦手?」
すると首を縦に振る。
「自分は全然余裕っす、よく友達と心霊スポットとか行ってましたよ」
以前の俺なら確実にちびってるか、足がガクガク震えて進めなかっただろうなぁ。
怖がってる美香を見てどこかほっこりした気分で、廊下を進んでいく。
偶にギシッと廊下が軋む音がする中、廊下を曲がった先10メートル程にある左側の部屋に、魔物の魔力を感知した。
「そこに居るわよ」
確かに居るが、いま魔物の魔力が突然現れたよな?
いまリポップしたのか?
静かに部屋の手前まで行くと、シュアが中を覗き込んで、すぐこちらに振り向いた。
しかし、シュアは首を傾げている。
「どうした?」
「う~ん、魔物のはずなんだけどさ……見た感じ人にしか見えないんだよね」
そう言うので俺が前に出て覗き込んでみると、確かに女性が立っていた。
俺は顔を引っ込めて皆に言う。
特に美香。
「いいか? 中には着物を着た女性が立っているがあれは魔物だ、決して幽霊とかじゃないからな?」
そう言うと美香は顔を青ざめたまま首を縦に振っていた。
中に居るのは確実に魔物だが、見た目は昔の女性って感じだ。
髪を結って、赤い着物を着た女性。
まんまお化け屋敷じゃねぇか!
俺たちは廊下を進み、全員が女性を見る。
すると女性はゆっくりと振り返り、こちらを見た。
「っ!? き、キャァアーーーーー!!」
俺たちはビクッと、美香の悲鳴に驚く。
なぜ美香が悲鳴を上げたのか。
それは振り向いた女の目が無かったからだと思う。
『あぁ~……う……』
魔物はスウ~っと俺たちに近付いてくると、突然姿を消した。
ふむ……。
「無理無理!! お化けいやぁあーー!!」
俺は腰を抜かして座り込んだ美香を横目に、腰を落とし掌底を前に打ち出した。
すると魔物は姿を現し部屋の奥へと吹っ飛ぶが、壁をすり抜ける。
「ほら、お化けじゃなく魔物だろ? 魔力を纏えば大丈夫だ」
こいつはラノベ的に言えばレイス系だな。
魔力を纏った掌底を打ち込んだが、当たった瞬間魔力を吸収された。
死霊術で葬送してみるか?
いや、魔物だから無理か。
しかし、葬送を試したところ、魔物は簡単に蒸発して魔石だけを残して消えていった。
これでいいのかダンジョン!?
読んで頂きありがとうございました。




