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13 大量!

評価、登録、いいね、感想をして頂きありがとうございました。

誤字脱字報告ありがとうございました。

俺たちは江戸時代の街で結局2日間滞在し、ミスリル素材を集めてから8階層へと進んだ。

滞在中は江戸時代の家屋で、昔の生活をやってみたりもして結構たのしかったな。


ちなみに階段はなんと、お城の地下にありました。



そして、やって来ました8階層!


「うわ、懐かしい」

「自分もちょっと懐かしいっすね」

「私には分からないなぁ」

当然アニルたちも分からないが、それなりに楽しんでいるようです。


俺が何を懐かしいと言ったのか。

それは、8階層のエリアが丁度俺が、物心付いた頃の時代だからだ。

そう、街並みはまさしく昭和時代!!

あの何丁目かの夕日の映画を思い浮かべてくれれば分かると思う。



街並みを見ていると、その辺を少年たちが走り回っているのが思い浮かぶのはなぜだろう?

そんな風景を実際に見た事ないはずなのに、なぜか記憶にある。

不思議な気分だ。


街の中には昔ながらの駄菓子屋があったり、窓で受付するたばこ屋があったりと、なんか黄昏てしまいそうになる。

そんな中でも一番感動したのは、建設途中の東京タワーが見える事だな。


「あれってもしかして、建設途中の東京タワーですか? テレビで見た事あります」

と、美香が少しテンションが上がったように言う。

若い美香には面白いんだろうけど、俺たち世代はなぜか泣きそうになるのが不思議だ。

しかも、なぜか空は夕焼けである。



暫くの間、高台に立っている雑居ビルから見ていたが、そろそろ階段を探そうとビルを出るが、雑居ビルから出た瞬間、魔物の魔力を感知した。


「前と後ろから来るよ!」

シュアが焦ったように言うのは、魔物の移動が速いからである。

雑居ビルの前の道に出た瞬間、周囲から集まるように魔物が動き出したのだ。


アニルたちが前を警戒し、俺たちは後ろを警戒する。

すると、遠くから低い呻き声のようなものが聞こえてきた。


『guooo……GUAAA…………グルァアアア!!!』

そして100メートル程先にある角から、魔物が姿を現した。



「マジか」

「うわぁ……」

「映画っすかこれ?」

魔物を見た俺たちは思わずそう言ってしまった。


角から次々と人間が、こちらに向かって走ってくるのだ。

いや、人間とは少し違うか。

髪が無く、全身血管が浮いて目が真っ赤に血走っている。

それでいて肌は色白、中には眼球が飛び出している者や、身体の一部が無い者まで居るのだ。


こんな映画を以前見た事があるような気がする。



魔物たちは獲物に向かってがむしゃらに突っ込んでくる、魔物というより化け物だな。

ウイルスに感染したパニック映画に出てきそうな魔物だ。



そこで堀さんがライフルを撃ち始める。

魔物に銃弾は当たるが、まったく魔物は動きを止めずこちらに口を開けながら走ってくるのだ。

何が何でも俺たちを食うって意思が伝わってきそうな程である。

実際は殺意しかないんだけどね。



「全力で一掃するぞ!」

次々と魔物は集まってきて、道路が魔物に埋まりそうな程になる頃、美香、堀さん、俺は魔法陣を展開させる。

もう少し引き付けて……。

「いまだ!!」

俺の合図で魔術を発動させると、美香は大量の雷を、堀さんは道路の幅を埋めるように凍らせる。


そして俺は、魔法陣から幅3メートル程の青白い閃光を、レーザーのように発射していた。

ユキもバッグから出て大きくなると、魔法陣を展開して白い閃光を、俺と同じように発射している。



この階層の魔物は今までの階層と違って、一体一体は弱い魔物のようだ。

その代わり、数が半端ない!

既に数百は倒してると思うが、まったく減らない。


高台から下の方をチラっと見ると、下の街からも魔物が崖を登ってきているのが見えた。

このままだと確実に囲まれて最後は食われる。

アニルたちの方を見ると、向こうも魔法で何とか凌いでいる感じだ。



「チッ、仕方ない、ここは一旦退避するぞ! 合図をしたら上に跳べ!!」

俺がそう言うと皆が返事を返した。


俺は魔力を練り……魔術を止めた瞬間「跳べ!」と言って地面を叩くように手を突いた。

すると、ドーム状に周囲へと衝撃波が広がっていき、魔物たちを弾き返していく。

そして俺も直ぐ上空へ跳ぶと、根源魔導を発動させ空中に微かに光る足場を作り、皆がそこに着地する。



「ふぅ~……多すぎだろ」

「これって、階段探すの大変そうですね」

とは美香の言葉。

「この中を探すって、確実に食われますって」

と堀さんが下を見ながら言う。

ユキが元のサイズに戻り、お座りをして下を眺めている。


「助かった洋介、もう少しで魔力が切れそうだったんだ」

アニルが落ち着いたのか、座り込んだままそう言ってきた。

「俺は暫く魔法は使えないぞ」

と、珍しくガムロも座り込んでそう言う。

シュアに目を向けると、四つん這いになり下をジッと見ている。



「どうしたシュア?」

近付いて声を掛けると、下に居る魔物を見ながら口を開いた。

「あれって、魔物なんだよね?」

「ああ、間違いなく魔物だ」

なんだ?


するとシュアは、悲しそうな表情をして言う。

「元は人間……って事は無いよね?」

ん?


「シュアは魔物の魔力が分かるだろ?」

そう言うと頷いた。

ならなぜそんな事を聞くのか?

そう思ってシュアを見ていると、静かに口を開いた。



「私たちの世界にさ、人間だった人があんな風になっちゃう人が偶にいるのよ」

なんと!?

「それは……原因は分かってるのか?」

そう聞くとシュアは頷いた。


そこでアニルが座り込んだまま話始める。

「ロキス……ああいう奴らの事を俺たちはそう呼んでいる」

「ロキス?」

そう聞くとアニルが頷いてから説明してくれた。



アニルの話によるとああいう風になるのは、病気だと言う。

それは細菌による感染症なのかと聞くと、それは分からないと答えた。


そこでガムロが口を挟んだ。

「弱い者が特になりやすい」

弱い者?

俺はガムロを見ていたが、それ以上は出てこなかった。

それだけかい!



アニルたちの話を纏めると、ああいう風になるのは病気で、その病気になるのは元々弱い人が掛かりやすいという事。

俺はその『弱い人が掛かりやすい』ってところに違和感を覚えた。



「弱いって、それは身体が弱いって事か?」

するとアニルが答える。

「魔物と戦った事が無い者って意味だな」


ふむ、それは…………病気じゃないんじゃね?



話を聞いて思ったのはそれだった。

読んで頂きありがとうございました。

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