11 機械。
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俺たちは運動場を横切り、正門っぽい所から外へと出る。
「やっぱり、地上にある松江市とはちょっと違うな」
「確かに、微妙に違いますね」
それは本当に些細な違いだ。
無いはずの所に標識があったり、あるはずの建物が1つだけ無かったりと、まるでよく聞くパラレルワールドの話みたいに、微妙に違うのだ。
まあ、ここはダンジョンの中だし、そういう事もあるのかと俺たちは気にせず、階段を探す事にした。
道路を進んでいると急に魔物の魔力を感知する。
「魔物が近づいてくるよ……あと5秒!」
シュアも同時に警告を出した。
次の瞬間、俺たちから10メートル程離れた道路のアスファルトが盛り上がり、地面から大きな影が飛び出してくる。
アスファルトの欠片や土を巻き上がる中、俺はジッとそいつを見ていた。
「……ロボット?」
そう、俺が見ている物は、全身銀色の金属のような質感を持ち、獣のような姿を模している、全長3メートル程の……犬? 狼? まあ、そんなロボットだ。
しかし、頭部に付いている目が1つだけで、赤く光るレンズのような物が付いているだけ。
身体を動かす度に機械音がするのは、やはり機械だからなのか?
飛び出して地面にガシャガシャンと金属音を響かせながら四足で立つと、俺たちをその赤い目でジッと見てくる。
「えーっと、これって魔物なんですかね?」
とは堀さんの言葉だ。
「一応魔物の魔力は感じるから……魔物かな?」
そんな話をしていると、右側にある一軒家の屋根には全長2メートル程ある、大きな鳥型をしたロボットが現れた。
ふむ、こいつからも魔物の魔力を感じるな。
「皆、戦闘開始だ」
俺がそう合図を出すと、全員武器を構え警戒する。
その瞬間、獣型ロボットが口を開けると、銃口のような物が出てきて、ドドドドドド……といきなり撃ち始めた。
「散れ!」
全員が一斉に散り、周りの建物に隠れた。
あれは俺が作った魔導銃と同じ仕組みのようだ。
奴が撃ったのは鉛ではなく、魔力の塊だった。
俺は右側の一軒家の門に身を隠し躱すが、屋根に居た鳥型が羽を広げると、羽に付いた銃口を俺に向け連射してくる。
すぐさま一軒家の扉に体当たりして中に逃げ込むと、銃撃が止んだ。
身体を起こし玄関から外を見ると、獣型は他の者を狙ってるのか、ここからは見えない。
鳥型は屋根に居るだろうが、全く動く気配がない。
ふむ……仕方ない、そっちがその気ならこちらも使わせてもらおう。
他に人が居ないし、ダンジョンの中なら問題無いでしょ。
そう思って俺はバックパックから、ごついハンドガンタイプの魔導銃を取り出した。
直ぐに魔力を充填させると、外に出て鳥型へ向かってトリガーを引く。
ドゥンッ! と放たれた銃弾は、鳥の頭に命中。
それで鳥型は動かなく……ならなかった。
壊れた頭部に、落ちた部品が戻っていくと、鳥型は完全に元に戻ったのだ。
「マジかよ」
機械のくせに再生するってどういう事?
まあ、根源は魔物だろうけどさ。
しょうがない、魔力を多少消費するが俺は、根源崩壊の銃弾を撃ち出した。
すると鳥型は羽を広げ空へと飛び上がるが残念、追尾式銃弾にしたので逃げられないぞ。
案の定、銃弾が鳥型に当たって絶命させる。
次に、先程から銃を撃ちまくってる獣型の方を見ると、ガムロが大剣で銃弾を防ぎながら盾役をし、アニル、シュア、美香、堀さんが周囲から攻撃をしているのが見えた。
すると次の瞬間、獣型の全身のあっちこっちから銃口が出てくると、全方位へと撃ち始める。
皆はすぐさま建物の陰に隠れて躱す。
このままやれば倒しそうだけど、今回は俺がやるか。
こいつも再生するみたいだし。
時間が掛かる。
俺は銃を構え、根源崩壊の銃弾を撃ち出す。
銃弾は獣型に当たり、撃ちまくっていた獣型はその瞬間一切の動きを止めると、身体が塵のように消えていった。
少し様子を見て皆が陰から出てくる。
「あれって魔物ですか? 機械にしか見えなかったんですけど?」
出てきた美香がそう言う。
「間違いなくあれは魔物だな、ちゃんと魔力があったし、魔力も魔物のそれだ」
「私も魔力では魔物と分かってますが……あの見た目と動きを見てると、機械にしか見えませんでした」
確かに、あれは映画とかに出てきそうな見た目だったからな。
「良かったっす……どんだけ攻撃しても元に戻るんで、どうやって倒せばいいのか分からなかったっすね」
堀さんがそう言う。
「俺は根源を崩壊させたけど、おそらく魔石を破壊か抜き取れば倒せるかもね」
「なるほど……この先進むのが大変そうっすねぇ」
俺が全部倒せば早いが、それだと皆が成長できないので、俺は全員に魔導銃を配った。
堀さん以外はみんなハンドガンタイプで、堀さんだけアサルトライフルタイプである。
銃の扱いに慣れている堀さんだからこれにした。
ちゃんと事前に確認したら、銃の扱いの訓練もやったと言うので、安心してライフルを渡せる。
美香は使うのを少し躊躇っている。
まあ、銃なんて日本人には馴染みがないからな。
俺は皆に、他の誰かが居る前では絶対使わないようにと注意する。
それはなぜか?
こんな兵器を持ってるなんて知られるだけで、面倒しかない。
ましてや、見た人が売ってくれなんて言ってきたら、それこそ面倒だ。
断ればなぜお前らだけ! とか、俺たちが何か企んでるとありもしない噂を流されたりと、そんな事が起こる可能性がある。
なので、他のダンジョンでもなるべく使わず、地上では一切使わなかったのだ。
まあ、一番の理由は銃だと他の戦闘に関しての成長が殆ど無いので、銃が無いと戦えない! なんて事になりかねないのだ。
初めて作って使った時にそれを感じて、すぐに封印したのを覚えている。
あのまま銃を使っていたら、武術なんて全然成長してなかっただろうなぁ。
少し試し撃ちをした美香がこんな事を言い出した。
「すごい便利ですね! イメージで属性も変えられるって、魔法を使ってるみたいです! なんで今まで使ってなかったんですか?」
「確かに便利だけどなぁ……便利過ぎるんだよ」
俺がそう言うと美香は首を傾げた。
便利過ぎる事の何がいけないのか、分からないといった感じだ。
なので、銃が無いと戦えないという癖が付くぞと説明した。
「……なるほど、確かにそれは危険ですね」
おっ? 俺が言った事だけでそこまで理解するとはな。
美香は銃を見た後、俺に向かって言う。
「あまり銃は使わないようにします」
「ああ、それが良いだろう……もしもの場合の時だけにしといた方が良いだろうな」
「はい!」
俺と美香の話を聞いていた他の皆も頷いていた。
どうやら堀さんも分かってるようだな。
さて、さっさと最下層へ向かいますか。
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