5 地球の浮島。
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収納を済ませ、セルフジョブストーンなる物を手に入れた俺たちは、他の魔物がこないうちに地上へと上がった。
『地上に上がったからいつ出てもいいぞ』
『じゃあ一緒に歩くー』
そう言ってユキはバッグから出てくる。
俺と美香と堀さんが魔術で、それぞれ濡れた身体と服の水分を程よく飛ばし、スッキリさせる。
「あんな高い所から落ちてよく無事でしたねぇ」
堀さんが崖を見上げてそう言うので俺は、落ちる直前に魔法で全員を一瞬軽くした事を説明した。
「なるほど魔法で……魔術だとどうすれば……ああすれば、いや……これだと……」
そう言って魔術を組み始めたので、魔術だと職業を魔導士以上に成長させないと無理ですよと教えた。
「早く成長させないと!」
何やら燃えてる同志。
頑張れ!
俺たちは先程のラプトルみたいな魔物がまだこのエリアに居るはずだと思い、隊形を組む事にした。
美香と堀さんの訓練は続行だが、2人だけでやるのは危険だと判断したのだ。
まさか、3層で連携してくる魔物が出てくるとはね。
前衛をアニルとガムロに任せ、斥候としてシュアを先頭に立たせる。
その後ろに美香と堀さんで、最後尾に俺とユキが歩く形となった。
そのままジャングルの奥へ入っていくと直ぐ、古代遺跡の柱と入り口のような建築物を発見。
入り口を覗いてみると階段になっていた。
「いきなり階段発見だな」
「飛び降りてショートカットになったんじゃないっすか?」
そうだろうな、あの崖上からここまで来るのに、どれだけ回り道をしないといけないのか。
同じ隊列で俺たちは階段を下りていき4層に到着。
そこで目にした光景に俺は、頭が混乱した。
「うわぁ……凄い景色ですね」
「これはまさにファンタジーっすね」
「俺たちもこんな景色は初めてだな」
「綺麗ね」
「これは中々見ごたえがあるな」
と、皆は景色を楽しんでいたが、俺はそれどころじゃなかった。
階段を下りた所は高台になっており、そこから視界に入ってきた景色は、遠くを流れる大きな川や山々と眼下に広がる草原と丘。
そして、遠くに見える。
『浮いてる島』
俺はこの浮島がある事に頭が混乱しているのだ。
それはなぜか?
ダンジョンは『周囲の情報を基に構成される』と以前調べて分かった事だが、それは世界の図書館からの情報だ。
なのでそれは間違いじゃない。
なのにいま、目の前に浮島があるって事はだ。
『地球に浮島があった』って事になる。
……いや、落ち着けおれ。
確か人間の思念なども情報になるってあったはず。
だからこれは、人間が想像したものが基になってる可能性もある。
そうだよな、地球に浮島があるなんて聞いた事もないよな。
あれは想像物、地球に浮島は無い……はず。
いかん、滅茶苦茶気になる。
………………なるほどねぇ。
俺は直ぐさま世界の図書館で調べてみた。
結果から言うと浮島は『地球に存在していた』とある。
ではなぜ現在それが無いのか?
世界の図書館によると大昔、人類が存在していない頃より、恐竜が居た頃よりも前の時代。
地球には今は無い物質が存在していた。
それは反重力物質という物で、それを含んだ鉱物や土が空に浮いていたらしい。
それが、宇宙から飛来した巨大隕石が地球に落ちた結果、その隕石によって地球は長い期間、雲と塵に覆われ自然が一度滅んだという。
それから数億年の間にその物質は完全に消滅した。
なぜ消滅したのか?
それは太陽光が地表に当たらないからである。
反重力物質は太陽の光が無いとその性質を保てなくなるらしい。
いや、スゲーな地球。
まさかそんなファンタジーだったとは……。
まあ、反重力物質は無くなるべくして無くなったのかもしれないな。
その隕石によってその後、生物が生まれる事になったらしいからね。
浮島が残っていたら、人類はどんな発展をしていたのかは気になるが。
スマホでパシャリと一枚写真に収め、俺たちはこのエリアの階段を探し始めた。
高台から遠くを見渡し、それっぽい物が無いか確認するがまったく見当たらない。
するとアニルが。
「普通に見える場所には無いだろうな」
と言う。
確かに階段は見つけにくい場所にあると言っていたからな。
ならばと俺たちは高台から降りて地道に探す事にする。
勿論魔法で身体を軽くして飛び降りました。
そして暫く草原を歩いていくと、俺が魔物の魔力を感知すると同時にシュアが手を上げて止まる。
「この先から魔物が来るよ」
ふむ、俺の感知と同じ結果だ。
皆が戦闘態勢に入り構えて待つと、少しして足元から震動が伝わってきた。
地震よりも速い揺れだ。
すると、魔物が居るはずの方角から、地面の土を盛り上げながら地面の中を物凄い速さで何かがこちらに向かってくる。
「来たよ!」
シュアが声を上げる。
その瞬間、土を巻き上げながら大型トラック程ある、四足歩行の魔獣が飛び出してきた。
紫の鬣に根本が丸太程ある黒い二本の大きな角が、頭部の左右から前に伸び、目の下から耳まで赤色の線が伸び、まるで化粧をしているかのように見える。
手足には大きな鎌のような爪が4本。
尻尾はライオンのように細く先端が炎のように燃えていた。
身体は所々に硬そうな鱗があるのが見える。
なにこのカッコいい魔物は!?
地球で初めて見るカッコいい魔物に俺は感動していた。
大きな頭を振ってシュアたちを攻撃しようとするが、既に後ろに跳んでそこには居ない。
4本脚でしっかり立ち、俺たちに向かって口を開けると。
『GURUAAAAAAA!!!』
物凄い咆哮を上げ、音の衝撃が全身を打ち付ける。
さて、戦闘開始だな。
そう思っていると、隣に居るユキが一言。
『あたしがやる!!』
そう言って前へ出ると徐々に身体が大きくなっていき、魔物より少し大きくなった所でユキが。
『NYAAAAAAAAN!!』
咆哮が可愛いんですけど!!
読んで頂きありがとうございました。




