29 嫌いだった理由。
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あれからコウと話し合い、職業は銃士に就く事になった。
俺もまだ就いてない職業だ。
学園長兼教師としてやっていくために、由奈や他の皆が持っていないスキルを覚えようとなった。
ちなみにコウは、ユニークスキルの想像生産は使えない。
あと、賢者スキルと剣豪スキルといった、ハイジョブスキルも使えないらしい。
これにはちゃんと理由がある。
先ずコウに俺の魂の一部を分けたのだが、魂というのはいったい何なのかというと、高次元のエネルギー体であり、膨大な情報の塊でもある。
勿論これは世界の図書館からの情報だ。
調べて思ったのはあれだ。
ラノベによくあるフルダイブ型VRって感じだ。
この現実に高次元の魂が肉体に宿って、現実を生きている。
まんまアバターじゃんって感じだよね。
そして生物は、各々複数の魂を持っているらしいのだが、7個だったかな?その中の1個を俺はコウに分けたのだ。
先程言ったように魂とは情報の塊でもあるのだが、1個の魂なのでハイジョブの情報が抜けてるという事である。
ここからコウは、俺が就いていない職業に転職していく事に決まった。
「じゃあ皆に紹介するか」
「なんか恥ずかしいな」
「何が恥ずかしいんだ?」
「俺は皆の事知ってるけど、向こうは知らないからさ」
「ちゃんと俺の分身だって伝えるから大丈夫だろ、さっさと行くぞ」
皆にはコウの正体は話しておくつもりだ。
何かあった時のためにもね。
っていうか、俺の分身のくせに恥ずかしいってどういう事?
……自分が恥ずかしいって事か?
いや、俺が恥ずかしいって事になるのか?
ふむ……考えるのはよそう。
不毛な考えだな。
そして職員室へやってきた俺たち。
まだ授業は始まらないので皆職員室に居た。
「えー、もう直ぐ授業が始まるけど、その前に紹介しておきたい奴がいる! 入れ」
「おっ? ……ヨウに似てるな」
とはユウの言葉。
「確かに今のヨウ君に似てるね」
となっちゃんが言う。
「ヨウ君の兄弟?」
おっ、由奈鋭い!
「ヨウ君は確か一人っ子よね?」
流石美晴さん、覚えていましたか。
「洋介のクローンか?」
おっちゃん、殆ど合ってるよ。
「えー、こいつは俺の弟……」
「いや、お前に弟は居ないだろ!」
とユウの鋭いツッコみ頂きました!
「……として、俺の複製した根源から生み出した、俺の分身である!」
そう言って胸を張りドヤ顔を決めた。
フフンッ!
どうだ参ったか!
すると皆ポカーンとしていた。
「兄貴、もっとちゃんと説明した方が良いと思うよ?」
「ん? 今ので分かると思うが?」
「いやいやいや、なぜ分身を作ったのか説明しろよ」
「あっ、なるほど、では……」
そうして俺は事の経緯を説明。
説明が終わると皆納得した様子。
「なるほど、ヨウが居ない間の代理って事か」
「ビックリしたぁ~、このままヨウ君が増殖していくのかと思ったよ」
なっちゃん? 増殖って、もっと言い方があるでしょ。
「って事は私の弟でもあるのね」
ん? 由奈の……確かにコウは生まれたばかりだが、年齢は由奈より上だぞ?
「新しい孫ができたわね、今後まだ増えるのかしら? それはそれで嬉しいけど」
既にコウも孫扱い!? 流石美晴さん。
「幸介か……新しい息子ができてなによりだな」
おっちゃんは既に息子として受け入れてる!?
「はは、流石だね……こんなに家族がいるのは生まれて初めてだ」
「生まれたばかりだけど?」
「それは分かってるさ、兄貴も分かってるだろ?」
ふむ、コウが言いたい事は分かってるぞ……。
両親が早い内に死んでからは、ずっと一人だったからな。
仕事仲間は居たがそれは職場だけの関係だったし、友達もユウとなっちゃん以外遊ぶ奴は居なかったからね。
しかし、今はこんなに家族が居る。
両親が事故で亡くなった時、人間はなんて簡単に死ぬんだろうと思った。
たかが事故でって、あの時は物凄く人間の脆さに怒りが湧いたのを覚えている。
そして生きていく日々の中、耳に入ってくる転落事故や、こけて頭をぶつけて亡くなる事や、鈍器で頭を殴られ死亡するなどのニュースを聞く度に思っていた。
科学や技術が発展して進歩しても、人間自身は弱いままなんだと……。
何も持たなければ野生動物にさえ勝てない人間。
そんな人間という種が自分は大っ嫌いだった。
でも今はファンタジーが来た現代、レベルが上がれば簡単には死なない。
そのお陰でやっと少しだけ、人間という種が好きになれた気がする。
まあ、俺は人間じゃなくなったけどね。
「じゃあみんな、コウの事よろしくね」
「皆さん、よろしくお願いします!」
「まあ、ヨウの分身なら問題ないだろ」
「ヨウ君の分身で弟なら、大歓迎だよ!」
「私の事はお姉ちゃんって呼びなさい、いいね?」
「私の事は美晴さんって呼んでね?」
「ワシの訓練に付き合ってくれるなら、大歓迎だな」
はは、流石皆だな。
由奈は弟か妹がほしかったのか?
一人っ子は兄妹をほしがるって言うが、俺は一人でも全然良かったぞ?
そういう人も居るよね?
居ないかな?
とまあそんなわけで、幸介という弟が誕生した俺ですが、これでやっと異世界に行けるってもんだ!
えっ? そのためだけに作ったのって? そんなわけないでしょ!
よく考える事ない? もう一人自分が居れば楽なのになぁって。
それを実現したのが俺です!
ギルドと学園の方はコウやユウに任せて、俺は本業である商人として動きますよ!
ムフフ、いったいどんな物があるのか楽しみ過ぎて、中々寝付けないかもしれない。
と、授業が始まる時間になるので皆が移動を始めると、秘書でもある美香が職員室にやって来た。
「あっ、進藤さん、お客さんが来てます」
「客? ほう……あっ、美香にも紹介しておく、こっちが俺の弟の幸介」
「初めまして、進藤幸介です、よろしくお願いします」
「あっ、こちらこそよろしくお願いします。進藤さんの秘書兼弟子の金森美香です」
「で? 客ってだれ? 名前は聞いてる?」
「はい、堀さんという方です」
同志?
なぜこのタイミングで?
何か依頼でもあるのかな?
とりあえず会って話を聞くか。
まさか、猫耳シュアの存在がバレたとかじゃないよな?
それで突撃してきたとか……絶対会わせないようにしないと異世界に付いてきそうだ。
そんな事を考えながら俺は、堀さんの居る応接室へと向かった。
読んで頂きありがとうございました。
あと1話投稿予定です。




