22 ギルド面接。
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学園の面接が終わった後、俺は山波さんにグールの件で電話すると、やっぱり話していなかったようで。
『はぁ!? 何ですかそれは!? そんな魔物が居るなら早く言って下さいよ!』
「ですよね~、すっかり話したつもりでいました、すみません」
ここは素直に謝る。
「で、そのグールの事なんですが」
『何ですか? まだ何かあるんですか?』
「魔物と人間の魔力の違いが分かる人に、直ぐにでも街を巡回させた方がいいですよ」
『分かってますよ! 今それを考えてる所です!』
はは、流石山波さん。
「それとですね……」
『もうお腹一杯なんですが?』
「まあそう言わずに……この度、グールの上位種が生まれたようで、街中と周囲の警戒を強化した方が良いと思います」
『マジですか? グールの上位種って何です? ハイグールとかですか?』
それはズールでしょ。
「いえいえ、グールの上位種は『吸血鬼』です」
『…………吸血鬼ってあの吸血鬼ですか? 牙が生えていて色白で、若い処女の血を吸うっていうあの吸血鬼ですか?』
「まあ、概ねそれで合ってます」
若い女だけじゃないけどね。
吸血鬼は魔物の血も吸うらしい。
そして、吸われた魔物は吸血鬼の眷属となる。
勿論人間もだ。
しかし、吸われた者全てがそうなる訳ではない。
吸血鬼が選んだ者だけがそうなるらしい。
女好きなら女の眷属ばかり集めるだろうな。
ハーレムの完成だ!
『では、街中と周辺の警備を強化した方がいいですね、ところで……その吸血鬼は強いんですか?』
「ええ、かなり強いと思います。 私も会った事はありませんがスキルで分かりますから」
『ああ、そんなスキルがあるって言ってましたね』
「それで分かった事なんですか、吸血鬼は不死性がかなり高いんですよ」
『ふしせい? とはなんです?』
「死に難いって事です。 ダメージを負っても再生能力が高いので直ぐ治ります」
『それじゃあ、倒す事は実質不可能では?』
山波さんはそう言うが、ちゃんと吸血鬼の倒し方はある。
まず言っておくけどニンニクや十字架じゃないよ?
かなり面倒臭いが吸血鬼はちゃんと倒せる。
勿論これは世界の図書館による情報だ。
ある程度ダメージを負わせた所で、体内のどこかにある魔石に魔力を流し、魔石の魔力を徐々に紐解いていけば再生能力を失い身体は崩壊していく……らしいのだが、戦闘中に魔石の魔力を紐解いていくってほぼ不可能に近いよねって話だ。
ちなみにこの紐解くとは文字通りの意味で、絡まった紐を解くように魔力を解いていくって事だな。
「……ってな具合にやれば倒せますよ」
『それは……実質不可能に近いのでは?』
「まあ、運が良ければ可能ですよ……犠牲は多いけど」
『いま犠牲は多いって言いましたよね!? 部下を死ぬと分かってて向かわせる事はできませんよ』
そりゃそうだ。
「大丈夫です。 吸血鬼が出たらギルドに依頼してください、こちらは対処可能なので」
『本当ですね? 依頼金が怖いですが、その時はよろしくお願いしますね』
「任せて下さい!」
そう言って電話を切った。
映画や漫画であったようなヴァンパイアハンターなんて職業が、その内出てきそうだ。
学園の面接が終わった翌日、今回はギルド本部で職員の面接を開催。
2階にある20畳程ある会議室を面接会場にした。
そろそろ10時になるのでまた、なっちゃんが受ける子を呼びにいく。
そしてまたまたユキは長机の上で丸まっている。
最初の1組の男3人女2人が入ってきて、頭を下げてから椅子に座ったので面接を始めた。
「えー、まず初めに言っておきたい事があります……」
そこで一旦間を空けてから話し始めた。
「サイトにも載せてあったと思いますが、ギルド職員には魔導契約をする義務がありますが、そこは面接にきた事で了承しているという事になります……間違いありませんか?」
すると皆「はい」と返事をした。
ちなみに契約内容は、規則を遵守する事、不正を働いた瞬間、契約発動となる。
なぜそこまでやるのか?
それは当然、ギルドの信頼を落とさないためである。
企業や個人が安心して利用してもらえる組織を作るためだ。
「もしギルド職員になればまず初めにやってもらう事とは、規則を覚える事です……もしこの時点で自分には無理そうだなと思ったら申し出てください……大丈夫そうですね」
ふむ、中々優秀な人たちが集まったようだね。
「既に分かってると思いますがこの面接は、ギルド員ではなく『職員』の面接だと理解はしてますね?」
これも問題無しと。
ギルド員はラノベ的に言えば冒険者で職員がギルドの受付嬢など、支部で働く人の事を指す。
すると、ユウからの質問も出た。
「職員は基本書類仕事が多いと思うが、暴れるギルド員などを取り押さえる業務も含まれるし、ギルド員のように戦う事もありえるが、その辺りも理解はしてるかな?」
そう聞くと、4人がハイと答えたが右端に座っている若い女性が手を挙げた。
俺がどうぞと言うと話し始める。
「あの、それは受付嬢も含まれますか?」
「はい、ギルド職員全員が含まれます。 が……別に戦いが得意じゃないといけないって事はありません、あくまでも自衛ができる程度であれば問題ありませんよ」
俺がそう言うと、女性はホッとしたように肩の力を抜いた。
「ありがとうございます、それなら問題ありません」
ほう、結構な自信をお持ちだな。
良い事です!
「他に何か質問のある方は居ますか?」
すると先ほどの女性がまた手を挙げた。
指名すると話し始める。
「もしギルド職員になった場合、職員専用の寮やアパートみたいな、住む場所ってありますか?」
おう、それは考えてなかったな。
街から近いし、街の中に支部を作るからいずれそっちに行く事になるだろうから、街中に住んでる方が近いだろうと考えてた。
ふむ……。
「職員寮は今の所予定はありませんが、今住んでる家から通う事は不可能ですか? そういう人が居るなら住む場所も考えないといけませんから、素直に答えて下さい」
すると彼女は緊張した表情で答える。
「今私は実家に両親と住んでいますが1人暮らしをしたいんです。でも土地が壁で囲まれて更に狭くなってるので、家を出て1人で暮らすための土地の余裕が無いと言われました」
まあ、確かに狭くなってる上に人が増えてるからな。
街を纏めてる人からしたら、実家に住めるなら実家に住んでほしいって思うのが当然か。
しかし、そうなると住民の不満がその内爆発しそうだしな。
よし、学園の西側にマンションでも建てるか。
そうすりゃ街もまだ近いし、ギルドにも通勤しやすいだろう。
「分かりました、そういう事なら職員専用のマンションを建てます。 貴重な意見ありがとうございます。 では続いて……」
その後も面接は続き、午前中の最後の1組が入ってくると、最後の男が急に声を掛けてきた。
「進藤君久しぶりだね! 元気そうで良かった」
俺はその人を見て直ぐに分かった。
「松川さん!? 無事だったんですね!」
「ああ、伊藤君と島崎さんも無事だよ」
「おお! なんか滅茶苦茶久しぶりに聞いたな」
俺が楽しく話しているこの松川さん。
この人はかつて、一緒に働いていた同じ派遣社員の人だ。
こんな所で再会するとは思わなかったな。
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