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書籍化記念 暑い夏の夜に⑤

「書籍発売はもう買ってくれたか!? くぅっ、緊張する!」

「皆に楽しんでもらえればいいですねー」

「ん。大丈夫」

「クリス? どうしてそんなに自信満々なの?」

「皆、あまねのこと大好きだから」

「自信満々に言い切ってる」

「本気で信じてる目ですね」

「クリス、ありが——」

「だから買って」

「ゴリ押しですね」

「ただの火の玉ストレートだった」


 ホラー映画を視聴していたおれたちだけど、異変は画面の外にまで広がっていた。


 ——ガタンッ。


「うわぁっ!? い、いま玄関の方で音がしなかった!?」

「……聞こえなかった」

「気のせいじゃないですかー?」

「そ、そっか」


 妙な物音がしたり。


 ——さわ。


「い、今背中を何かが触った!」

「そんな訳ないでしょ」

「怖すぎて話を()らそうとしてません?」

「そ、そんなことないし!」


 何かに触られたり。


 ——スッ。


「えっ!? 今後ろを何かが通ったでしょ!」

「あまね。今、良いところだから」

「そうですよ。ビルがブラジャーをつけるかどうかの瀬戸際(せとぎわ)ですよ?」

「いや、だって……」


 何かがいる気配がするのだ。


 ——スッ。


「ほら、今度は窓の外に!」

「あまねさん。ここ、何階だと思ってるんですか」

「落ち着いて、あまね」


 いや、絶対なんかの影が通ったよ!


 妙に引き込まれる映画のせいで周囲に気を配り続けることができない。でも、確実に何かがおれたちの側までやってきていた。


「クリスぅ……手……手を繋いであげよっか……? いやほらおれは怖くないけどクリスのために!」

「うん」


 汗ばんだクリスの手を握り返し、恐怖と尿意に必死に耐える。

 もう少し。

 あと少しで映画もクライマックスだ。


 ——が。


 ザッ。プツッ、ザザァッ、プツ。


「ヴァァァッ!? が、画面が! 画面がおかしくなった!」

「?」

「何言ってるんですか?」

「いや、砂嵐になったじゃん! ふたりとも見てなかったの!?」


 確実におかしなことが起きているのに、おれしかそれに気づいていない……?


 映画の途中だったけれど、もう我慢なんてしていられない。

 絶対に何かが起きているのだ。

 目を閉じて、魔力を研ぎ澄ませる。


 ……と。


「……柚希ちゃんの魔力がある……?」

「あっ」

「……バレちゃいましたか」


 タタッと走って魔力を感じたウォークインクローゼットのドアを開ける。

 そこには、暗闇に隠れるようにして柚希ちゃんとルルちゃんが待機していた。


「おかしいと思ったんだよぉぉぉぉぉ!! これドッキリでしょ!?」

「そう」

「ドッキリじゃないですよ! 『環ちゃんのラブリー配信テロ・ホラー映画編』です!」

「同じだよ!」


 ことの真相はこうだ。


 おれを罠に掛けるために柚希ちゃんとルルちゃんがスタンバイ。

 ルルちゃんがおれの心の声を聞いてタイミングを見計らい、柚希ちゃんが管狐で怪異を演出。


 コメント欄が妙な雰囲気になってたのも、映画の同時視聴じゃなくて配信テロでおれをハメるって告知があったからだ。


「……環ちゃん、正座」

「はい」

「クリスも」

「うん」

「柚希ちゃんとルルちゃんはウォークインの中で一晩反省してて」

『えー!? そりゃ酷かー! ウチも反省しとるけん、出してー!』

『あ、あまねさま! ごめんなさいです! 嫌いにならないでほしいのです!」

「嫌いにはならないけどダメ。二人とも今夜はそこで寝て」


 ドア越しにしょんぼりな雰囲気を漂わせるふたりだけど、ここは心を鬼にして放置だ。一応トイレと水分補給は行っていいことにする。

 食事?

 おれをハメるためにお菓子とか持ち込んでたからそれを食べれば良いと思う。


「あまね。怒ってる……?」

「ヴッ、可愛い……じゃない! 怒ってるよ! いっつもおればっかりなんだから! なんでこんなことしたのさ?」

「ゲーム配信の不正。ペナルティって、環が」

「ほう」

「ルルを説得したのも環」

「ほうほう」

「柚希を巻き込んだのも環」

「ほうほうほう」

「あと……」

「あと?」

「……手を繋ぎたかった。映画を観ながら」


 上目づかいでそんなこと言われたら怒れないじゃんかぁぁぁぁぁ!

 しかも映画の影響でまだちょっと涙目だし!!


「あーもー! 仕方ないな! はい、クリス無罪!」

「えっ!? それじゃあ私も——」

「環ちゃんは有罪! 罰として今日は実家に帰ること!」

「ええええええ!?」

「嫌なら大悟とディナー食べてくるでも良いけど?」

「……実家に帰りますね……明日! 明日朝イチで来ますから!」


 いや、どんだけ大悟とご飯食べるのが嫌なんだよ……さすがに可哀想——でもないか。最近、口を開くと梓ちゃんのこと惚気(のろけ)まくるし。

 聞いてるだけで糖尿病になりそうな甘さだもんな。


 親友として嬉しいとは思うけど、爆発してほしくなってしまうのもまた事実。


「まぁ、諸悪の根源がハッキリしたから柚希ちゃんとルルちゃんも許してあげるか……と、その前にトイレ行ってくる」


 皆を置き去りにしてトイレに。


 ——スッ。


 換気用の小窓に影がチラつくけど、もう怖くなんてないもんね!

 用を足し終えてから柚希ちゃんにお説教だ。


「もー、柚希ちゃん! さすがに悪ノリしすぎだって。ネタも割れてるんだし、トイレ中はやめてよ!」

『何のこと? ウチ、何もしとらんよ?』

「エッ? でもほら、トイレの小窓に——」

「あまね。さっき環も言ってたけど、この階まで誰かが登るのは無理」

「でも管狐なら——」

「……外には飛ばしとらんよ?」


 ぞわり、と身体中に寒気が走った。


 まさか。


 慌てて服を脱ぐ。


「ウワァァァァァ!? 何だコレ!?」


 おれの下着は、いつの間にか女性用のブラジャーとぱんつになっていた……。


「?」

「いや、首傾げてないでよ! 女性用のブラとぱんつになってるじゃん! オカマの仕業だよ! ほら、映画の!」

「……いつも通り」

「こないだ一緒に買いに行ったやつじゃないですか」

「エッ……あっ! そういえばそうじゃん! 良かった……いや、良くないよ!? おれは男だからね!」


 環ちゃんに怒られてからブラジャーもつけてるけど、本当はそんなの要らないんだからな!?


「「『『?』』」」

「待って、何でほぼ全員首をかしげてるの!?」


 っていうか柚希ちゃん、ドアの向こう側にいるのに管狐を使ってまで疑問符(ハテナ)を出してこないでよ! しかもルルちゃんの分まで!


「まぁ、映画のオカマが出てきた訳じゃないですし良かったじゃないですか」

「それは確かに」


 ホッとしたので環ちゃんを除く皆でホットミルクを飲んでから寝ることにした。

 運動前はちゃんと水分取らないとね!

 特に柚希ちゃんは、脱水の危険性もあるからね!


「うううっ……! 私だけ仲間外れなんですね……!」

「いや、リアと葵ちゃんもいないよ?」

「あの二人は栃木の別荘で(ただ)れてるからいーんですっ! 『動けなくなるまで頑張るからアルマも一緒に』とかナニをするつもりなんですか、もー!」

「ナニをするつもりなんだと思うよ……」


 あの二人は欲望に忠実なのでおそらく朝から晩まで欲望まみれの()活を送っているんだろう。


 環ちゃんを送り出したらベッドにゴーだ。

 むふふん。むふふふん。

 自然と鼻歌が出てしまったが、電気を消して、ベッドにごろんして皆を待ってる間に、ふと気づいた。


「アレ……? 結局窓の外にいたのは誰だったんだ……?」


 まだ、おれ以外はいないはずの部屋。

 暗闇の中で何かが動いた気がした。

「うわぁぁぁぁぁぁホラーエンドじゃん! ホラーエンドじゃんかぁぁぁぁぁ! クリス、一緒に寝よう!? 柚希ちゃんも! ルルちゃんはこっち側ね!」

「いつも通り」

「あまねちゃんな怖がりさんやなぁ。可愛かー」

「る、ルルが守る、です!」

「ルルちゃんも勇ましかねぇ! 頼りにしとるばい!」

「ち、違うよ!? ほら、おれはみんなが怖いといけないと思って、何かあったら身体を張って守ろうと——」

「はいはい、分かった分かった」

「せやね、分かっとーよ」

「です。あまね様、信じてる、です」

「ぐっ!? クリスの塩対応もキツいけどふたりの純真さも辛い……!」

「大丈夫、です?」

「何か……何か明るい話をして……!」

「うん」(スッ

「クリス!? それは本日、キネティックノベルス様から発売された『TSロリサキュバスの健全配信活動!』じゃん! どこでそれを!?」

「棒読みが酷かー」

「ドロップした。作者を倒して」

「どろっぷ、です……?」

「そんなモンスターみたいに……」

「これ、読めば愉快な気持ちになれる」

「それは本当にそうだね……じゃあこれ読みながら寝ようか」

「枕の下に入れて寝るといい夢も見れる」

「エッ!? それはもしかして肌色でモチモチすべすべな感じの夢!?」

「ばってん、翌日家族に見つかったらすごか目で見られそうばい」

「大丈夫」

「えっ」

「あまねは可愛いし、皆あまねのこと好きだから」

「えっ、あっ、」

「私が一番だけど」

「エッ」

「信じてない?」

「……信じてます」

「そう。なら良かった」

「二人が良い空気作っとーばってん、ウチらは二巻目で出らるーけん、買ってほしかー」

「る、ルルは枕の下にいれる、です! あまね様の夢、見る、です!」

「これで書籍化記念も終わりやけん、皆呼んで挨拶したかー」

「読んでくる、です!」

「二人の邪魔はしちゃいけんよー」

「はいです!」


・・・2 hours later・・・


「あまねちゃんな、ツヤツヤになっとー」

「これは確実にお楽しみでしたね」

「クリスさま、石鹸の匂い、です!」

「このアルマめが体の隅々まで洗い付着物や分泌物を余すところなく落としましたので」

「葵ちゃんとリアはどうしたんです?」

「そこに居るけど、ツヤツヤというか飢えた獣というか……なんか目がギラギラしてるね」

「食うか食われるかみたいな性活してたからですかね……」

「食うか食われるかじゃなくて、食べつつ食べられてたんじゃないかな……」

「どっちでも良か。読者さん待たせとるけん、はよー」

「そうだね。じゃあ、いくよ! せーの!」


「「「「「「「書籍版『TSロリサキュバスの健全配信活動!』もよろしくお願いします!」」」」」」」

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