書籍化記念 暑い夏の夜に①
「重大告知、です!」
「なんと! TSロリサキュバスがキネティックノベルス様から書籍化するよ!」
「ん。10月30日発売」
「もう予約も始まっとーと」
「しかもなんと! あのたん旦先生がイラストを担当してくださってます!」
「「「「いえ~い!」」」」
「そんなわけで、皆買ってね!」
「暑っちぃ……」
風呂上り。おれはソファの上で寝そべってでろでろになっていた。
別に事後とかそういうでろでろじゃない。
ただ単純に暑すぎてやる気が起きないのだ。
すでに九月も半ばに入っているというのに気温は連日30℃越え。夜になっても熱帯夜は当たり前で、とてもじゃないけれど人が生きていく環境じゃないのだ。
いや、おれはサキュバスだけどさ。
せめて近くで誰かが薄着で一緒にでろでろしててくれれば、それだけで元気が出てくるんだけどなぁ。
「こんなことなら、おれも九州に付いていけば良かった……」
おれの眼前ではクリスが真顔でFPS系のゲームに挑んでいたり、環ちゃんがスマホを片手にニヤついたりしている。
ふたりとも薄着と言えば薄着だけど、こう、なんていうか……もっと隙を見せてくれてもいいんだよ!?
大丈夫、何にもしないから! 多分! きっと! メイビー!
ちなみに柚希ちゃんを始めとした他のメンバーは里帰り&旅行と称して九州でキャッキャうふふしているはずだ。転移でおれが送ってあげようとしたのだが、断られてしまったのだ。
「別に無理せんでええよー。たまには新幹線も乗りたかけんね」
「ヴァッ!」
「何で浄化されてるんですか……」
「こ、これは堕とさないと危険だ! 環ちゃん、夜に全力で堕とそう!」
「……ギルティ」
「く、クリス!?」
そんな一幕があったものの、魔力補給のための言い訳が欲しかったとかそういう訳じゃない。
ないったらない。
だから別に良いんだよ。
「あまねさん? どうして怖い顔してるんです?」
「あ、いや、別に」
「何かえっちなことしようと画策したのに一つも上手くいかず何もできなかった時みたいな顔してますよ」
「ヴェッ!?」
エスパーかよ!?
びっくりして変な声を出したおれに、クリスが視線を向けた。ヘッドホンを外すと薄くて美味しそうなお耳が——
「……ギルティ」
「ヴァッ!? ななななな何で!? 何もしてないよ!?!?」
「あまねの考えそうなことくらい、読める」
「まぁ、推定有罪ですね」
解せぬ。
日本は推定無罪の法治国家だぞー!
「そんなに暇なら、涼を取れるようなことでもします?」
「例えば?」
「ホラーゲームかホラー映画」
「良いですねー! どっちが良いですか?」
「あー……それじゃあゲームで」
というかクリスがゲームのパッケージをおれに見せてるんだもん。これどう考えても一択でしょ。
「じゃあやりますか……人数足りないっぽいですけど、視聴者さん参加型にします?」
「んー……ネット対戦もできるみたいだし、柚希ちゃん達にも一応連絡してみよう」
あっさり柚希ちゃんとルルちゃんの参加が決まった。旅行中は転移で行き来しない、とのことだったので無理かと思っていたけれど、拍子抜けである。
『やっぱ会えんのは寂しかけんね!』
『あまね様! お元気ですか!? ルルはちょっと寂しいです! 尻尾さんも寂しがってませんか!?』
おれも寂しいから会いに行こうとか色々考えたけれど、今回はぐっと我慢だ。その代わり帰ってきたらたくさん甘えさせてあげよう。
それがデキる男のムーブってもんだからね!
ルルちゃんも尻尾による“かわいがり”確定だ。
ちなみにクリスが選んだゲームは1対4の非対称型対戦ゲーム『H by Daylight』だ。
「プレイヤーは変質者4人と警官1人になって公園内をうろつきます。変質者は公園内にいくつか隠されたマジックミラー号の鍵を見つけて起動させ、無事に公園を脱出すれば勝ち」
「逆に警官はマジックミラー号をエンストさせたり、変質者全員を逮捕できれば勝ちなんだよね?」
『そうみたいやね。ばってん、逮捕されたっちゃ他ん変質者に助けてもらえりゃ復帰でくるんだごたーばい』
「まって。マジックミラー号にツッコミは……?」
「ない」
「ないです」
「ないばい」
さいですか。
つまるところ、エクストリーム氷鬼とか、ケードロとかドロケーみたいなものだ。
どっちが正式名称なのかは知らない。おれの住んでたとこはケードロだった。
「よし、なんか楽しそうだし頑張るか!」
「それじゃあ配信告知出しますね。5分後で」
うーん……環ちゃんだから許される暴挙だよな。実際、配信告知がギリギリなせいで掲示板とか配信開始直後のチャット欄は阿鼻叫喚になるらしいし。
特に仕事の人は突然腹痛になって早退の申請をしたり、無理だったらイヤホンを持って二時間くらいトイレに籠ったりと涙ぐましい努力をしているらしい。
それだけ楽しみにしてくれてるって考えると嬉しいけど、お仕事はちゃんとしようよ……。
まぁでも一応今は夜だし、結構観れる人が多いんじゃないかな。知らんけど。
***
『せーの、こんキュバス~!』
皆でカメラに手を振って配信開始。さすがにもう慣れたものなので、オープニングトークで緊張したり不測の事態が起こったりは——
「というわけで、第一回あまねカップ開催です!」
「ヴェッ!? そうなの!?」
「おおっと、勘違いしないでくださいね。カップといってもあまねさんのバストカップのことじゃないですよ? なんたってサイズは——」
「わーーーーー! 駄目だって! 何を暴露しようとしてるの!?」
「えっ? あまねさんのおっぱいのサイズですよ?」
「駄目だよ! 分かってるけど! そうじゃなくて!」
【草】【環のいじめっ子配信は助かるなぁ】【バスト暴露は草】【クッソあと一秒あればバストサイズ分かったのに】【英語ガチ勢、唇の形から特定してくれ】【←おまわりさんこいつです】【おさわりまんになりたい】【お触りマンは逮捕待ったなし】【ガチ通報案件w】
「良いから。早く」
クリスに急かされて皆でゲームの説明や、操作キャラを紹介していく。
おれが選んだのは、迷彩柄のぱんつを顔に被った変質者だ。
効果は警官から見つかりにくくなる。何でだよ。
クリスは移動速度が速いスプリンター変質者。
風の抵抗が減るようレオタードを着た変態だ。
柚希ちゃんはマジックミラー号の鍵を探しやすい双眼鏡変質者で、環ちゃんは警官を怯ませる効果がある裸ロングコート変態。
……ちなみに全キャラ身長200センチでパッツンパッツンのマッチョである。
人権配慮で肌の色と乳首の色を選べるらしいけどコレむしろ設定できない方が人権は守られてるのでは……?
ちなみにランダムで設定したらピンクの肌に紫の乳首になりました。
怪物かな?
「何はともあれ、皆選び終わったな」
「誰が警官になるんでしょうね?」
「ランダム」
『警官もやってみたか~』
何戦かプレイするつもりだが、このゲームは普通に警官の方が勝ちづらい。逆に言えば、警官で一度でも勝てればかなりのアドバンテージってことだ。
「一番勝てた人が皆に好きな命令を出来るルールにしますか」
「ん。いつも通り」
『せやねぇ。ウチ、皆に頼まれたらルール無しでも断らんよー?』
『る、ルルも! ルルもあまね様の命令なら何でもする、です!』
「分かってませんね……こういうのはちょっと嫌がって引き気味なのを強制的に従わせるってのが良いんですよ」
環ちゃんの外道発言に、うわ、と思わず声を出すが、別にルールそのものには否はない。
ちなみにルルちゃんは柚希ちゃんの横で観戦するだけの賑やかしなので本来なら罰ゲームを受けることはない。
まぁ今回は「勝った人」が命令権を得る、なのでルルちゃんを指名すれば罰ゲームになる可能性もなくはないけど。
とにかくプレイ開始だ。
「よーし、勝つぞー!」
おれが気合を入れると、視聴者含めて約全員からツッコミが入った。
「フラグ」
『フラグやね』
「一級建築士ですね」
「り、立派なフラグ、です!」
なんでこういう時だけ団結するんですかねぇ……。
「あまねさんへんたいですへんたい!」
「環ちゃん!? ナチュラルにディス!?」
「あっ、大変です、間違い……いや、間違いではないんですけど。ほら、昨日の夜クリスさんの×××を○○○したりとかしてましたし」
「ぐぬぬぬ」
「そんなことより、発売に先駆けてキネティックノベルス様のX(旧Twitter)公式アカウントにてスペースが開催されるそうですよ!」
「おお! すごい!」
「ゲストとして本作編集を担当してくださった太田さんと、本作作者が出ます!」
「おお! 編集さん! はともかくとして、作者……?」
「急に素に戻って盛り下がるのやめましょうよ!」
「いや、だって作者だし……」
「反論しづらい正論いうのやめましょうよ……」
「ま、まぁでも楽しいスペースになるかもね!」
「フォローっぽい匂いがエグい発言ですね……」
「こ、公式スペースは、10月23日(水)夜20:00開催だって!」
「誤魔化しましたね?」
「さ、作者も一生懸命喋るって言ってたし! きっと大丈夫だよ!」
「まぁそうですね……そういうことにしておきますか」
ミョンミョンミョン
「ルルちゃん? 何かあった?」
「何か受信してますね」
「き、キネティックノベルスさんの公式アカウントは、@Kinetic_novels だそう、です」
「リマインダーもあるから聞きに来てくれよな!」
「ルルちゃんの受信にも慣れちゃいましたね、私たち……」
「いや、だって前後書きだし……」
「あ、ちなみに発売日まで何度か更新しますのでお楽しみに!」
「お楽しみに~!」
※よろしくお願いします




