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◆039 お仕事ですから

 トレーラーハウスというかキャンピングカーというか。移動拠点の中で揺られていたおれの元に、一本の電話がかかってきた。


『あまね殿。危ないことはしていないだろうな? 敵に接触したり、攻撃を仕掛けようとしたり』

「してなァッ……いっ、です、よ!?」

『ふむ……急な長旅に葵が風水羅盤を借りたと聞いて疑っていたが、違うか』

「ですです……ゥッ! んぅっ!」

『……? 何やら騒がしいな?』

「い、移動ちゅー、ですっ! 道がっ、悪っ、くて……!」

『そうか。ちなみに今回の旅はどのような目的なのだ?』

「配信ンンンッ!? ですっ!」

『なるほど。本業(しごと)ならばしかたないな。何かあればすぐ連絡をくれ。大恩もあり、(むすめ)の恋人ともなれば、いくらでも力を貸そう』

「ありがっ、とぉぉぉぉっ!? ござ、っます!」

『では、またな』


 電話が切れた瞬間、おれはスマホを投げ捨てた。

 それから耳やうなじ、尻尾や角をすりすりする手をぺちんと叩き落とす。三人分なので全部で六回。


「葵ちゃん、環ちゃん、リア……今、おれ電話してたんだけど」

「存じております。スリルがあって盛り上がるかと思いまして……」

「あ、相手は父上だし別にいいかなぁ、と」

「はい、ギルティ」


 盛り上がるとかどこの企画モノだよ!?

 変な声出さないように必死過ぎて内容なんて半分も耳に入ってこなかったよ!

 そして葵ちゃん!

 土御門パパンだから良いや、ってなるわけないでしょ!?

 むしろダメだと思うよ。異世界で修業した後遺症なのか、葵ちゃんは倫理観とかそういうのが行方不明なんだよなぁ。

 うーむ。梓ちゃんに相談すべきだろうか。

 柚希ちゃんに手伝ってもらって二人を管狐で縛り上げたあと、残る一人に視線を向ける。


「私は悪くありません。葵とリア(ふたり)にやれって言われました」

「クリス、判決を」

「情状酌量の余地なし」


 環ちゃんは極刑が決まった。

 というかどう考えても同罪なのにヌケヌケと二人に罪を押し付けようとする辺り反省してないもんね。

 やれって言われたとか小学生かよ!


「待ってくださいあまねさん。ホラ、これから戦うかもしれませんし、ま、マジカル☆あまね……ププッ、アルティメットモードにもなれるように……プププッ……魔力充填をですね。他意はありません」

「笑いすぎでしょ!? もう他意しか感じられないよ!」

「ほらでも魔力充填は必要でしょ?」

「それは……うん」


 相手は秋津守だ。

 万全の状態ですら敵うかどうか分からない強敵。使える手札は多ければ多い方が良いだろうし、おれの魔力もあればあるだけ良いのは確かだ。


「ほら、ですから私の行動は間違いとは言えないと思うんです。普段とは違うシチュだから燃え——魔力充填もはかどるじゃないですか!」

「ふむ、そうだな」

「クリス?」

「普段と違うのは大切だ」


 クリスは頷きながらも環ちゃんをささっと()()()


「あっ、えっ!? クリスさん!?」

「あまね、好きにして良いぞ。普段と違う感じでな」


 あ、これちょっと怒ってる奴だ。


「私は電話中我慢した」


 うん、隠す気もなく私怨100%である。まぁでも環ちゃんは調子に乗りすぎだし、倫理観が絶滅してる二人にもお仕置きは必要だもんね。

 しゅるり、と尻尾を伸ばすとずっと傍観していたルルちゃんがびくりと体を震わせた。


「しししっ、尻尾さん!? やりすぎはだめなのですよ!? ぜったいぜったいぜーったいにだめなのですよ!?」


 ああうん……普段から尻尾と仲良くしまくりのルルちゃんは何が起こるか分かっちゃうもんね。

 いや、それともこれは嫉妬……?

 自分もしてほしいっていうルルちゃんなりのいじらしいアピールだろうか。


「あまね。これから配信」

「うん」

「ルルはダメ。これ以上メンバー減ったら配信に差し障る」

「そうだね……環ちゃんと葵ちゃんとリアがいないだけでも大変だもんね」

「えっ!?」

「ヴァッ!? 待ってください!」

「そ、そんなぁ……(わたくし)、どんな酷いことをされてしまいますの……?」


 リアだけは方向性が違うけど三人とも、おれの本気にかなりビビっているらしい。

 おれだって怒るときは怒るのだ!


 ちなみに普段なら環ちゃんを守ろうとするアルマは、運転手である柚希ちゃんをフォローするために助手席に座っている。

 さすがに大悟を巻き込むわけにはいかないからね。


「さて、それじゃあ始めようか」

「あ、あまねさん……? 普段と雰囲気違いません?」

「ボクらがチョッカイ掛けたせいでスイッチ入ってるんですかね」


 葵ちゃん、大正解だよ。

 ご褒美に葵ちゃんから始めようか。


***


「はい、そんなわけで今日は富山に来てます!」

「今晩は白エビば食べるけんね! ばり楽しみ~!」

「ブリしゃぶも食べるぞ」

「ごちそう、です!」


 富山に入ったところで配信開始だ。

 と言っても、例の三人が疲れと脱水でダウンしちゃったのでカメラは固定のやつを手元のスイッチで切り替える方式だけど。うーん、あの程度で柚希っちゃうなんて、修業が足りないなぁ。

 クリスとルルちゃんが奥の座席で、柚希ちゃんとおれが運転席側に座っている。ちょこちょこ切り替えたり別窓(ワイプ)にしたりしながら話を進める予定なんだけど、改めてアルマって有能なんだよなぁ……。

 言動がエキセントリックすぎて全然そうは見えないけども。


 ちなみに配信は土御門パパや他の祓魔師に対する言い訳である。

 めちゃくちゃ苦しいけれども事後承諾というか、やったもん勝ちということで『配信中に偶然エリを見つけたから保護しました』作戦だ。


「あまねちゃん? 何か失礼なこと考えんやった?」

「そんなことないよー?」

「なら良か」


 鋭い……!


「さて、富山観光ということで今日は色々回っていきます!」

「ですー! 落差日本一の滝、称名滝(しょうみょうだき)を観に行くです!」

「その後は黒部ダムだな」

「楽しみですー!」


 山に入っていく感じなのでちょっと不安もあるけど、いざとなればめちゃくちゃチャージしたのでおれの回復魔法でごり押しもできる。

 いやまぁ、基本的に今いるメンバーはフィジカルお化けだから一番へばりそうなのはおれなんだけど。ルルちゃんも獣人なだけあって動けるし体力あるもんね……夜はすぐ気絶しちゃうけど。


 おれはいざとなったら翼出してパタパタしながら進むもんね!


「途中で立山の雄山神社も見れたらいいな、と思ってる」

「日本三霊山の一つやけん、楽しみっちゃね!」


 コメント欄が『一日で回るの超きついぞ』『大人しく二日に分けろ』『柚希ちゃんのすべすべでぷりぷりな足が筋肉痛になっちゃう』とのありがたいコメントを頂いたんだけど、最後のやつ後で覚えとけよ?

 柚希ちゃんのおみ足はおれのだぞ!


「いざとなったら魔力で身体強化して進むので問題ないと思うよー」

「一番体ば弱かとはあまねちゃんやけんね。頑張りんさい」

「はーい」

「心配ない。いざとなったら担ぐ」

「おんぶする、です!」


 あー……それもちょっと魅力的な気はするけど、ルルちゃんにおんぶで運んでもらうのは絵面的にまずいよなぁ。そもそもクリスに情けないところは見せたくないし。

 うーん、やっぱり自分で頑張ろう。


「頑張るよー!」


 ちなみにおれたちがこんな険しいところを配信するのは、風水羅盤が霊峰立山を指し示していたからだ。

 ざっくりの方向なのでどこにいるかは分からない。

 でも、いると分かってるんだからしっかり探すだけである。いけるところまでは車で進み、そこからは徒歩の行軍となる。

 環ちゃんは戦えないし、リアと葵ちゃんはその護衛役にもなる。実は気絶してから回復魔法を掛けてあげてるので、目が覚めればばっちり全快のはずだ。

 アルマもいることだし問題ないだろう。


「さて、出発ー!」


 待っててくれよ、エリ。

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