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午後:ゲーム部

「どっしりずっしり! いつもより多めに書いておりまーす!」

「いや環ちゃん。メタ酷いね……」

「いつものことです」

「それはそう。でもなんで文章多め?」

「1万pt突破記念セールだそうです」

「遅っ! っていうかポテチとかスーパーの惣菜じゃないんだから……」

「なんと文量1.5倍!」

「思ったより多かった」

「健全さはそのまま!」

「それは毎回そうなんだけども……環ちゃんがいうと信憑性が……!」

「そ・し・て! メインコンテンツであるあまねさんの悲鳴とかいやがる顔も増量してます!」

「しないでッ?!」

 ひと眠りして起きたおれの眼前に飛び込んできたのは、カメラのレンズだった。


「……えっと、これは……?」

「おはようございます」


 いつの間にか合流していた環ちゃんがアルマの後ろでにんまり。

 どうやら、いつぞやらのルルちゃんよろしく寝顔を撮影されていたらしい。お昼の料理部はとっくに終わり、後片付けやら雑談まで挟んだというのだからちょっと申し訳ない気分になる。

 完全に寝過ぎた。


「お昼はつつがなく終わったんですけど、せっかく寝てるあまねさんを起こすのも忍びなかったのでちょっと休憩ということにしてたんですよ」

「えっ!? じゃあ陰キャバス(リスナー)のみんなも待たせてるの?」

「待たせてるというか、大喜びしてます」


 ……ああうん。

 皆が満足してくれてるならそれでいいけども。

 差し出された麦茶を飲んでからリビングに移動すれば、すでにゲーム用の特設会場は出来上がっていた。

 環ちゃんのくれたカンペは配信前から何度か読んでいたので、とりあえずおれからタイトルコールと企画説明だ。


「さて、お待たせしました! トリロジーリレーのアンカーはおれ! お待ちかねのゲーム部です!」


 ぴょいんと跳ねてそのまま浮かぶ。


「さて、今日の企画ですが、前回と同じくボードゲーム的なのが良いかな、と思っています」

別窓(ワイプ)だとみんなの表情がちっちゃくなっちゃいますもんね」

「今回やるのはコレ!」


 そういって示すのは、リバーシみたいなマス目が引かれたフィールドと、赤と青に塗り分けられたオバケのフィギュア。

 毛布をかぶってふよふよしてそうな見た目のオバケは赤青それぞれ8体ずつ。ひっくり返すとふたがついていて、開閉できるようになっている。


「ロード・オブ・ゴーストってゲームなんだけども、今日はちょっと変則的な遊び方をします」


 上下左右斜めの八方向に一マスずつ移動できるゴーストたちは、チェスや将棋のように相手のコマをやっつけることができる。

 本来は八体の中に一体だけ当たりの王冠を入れた『ゴーストロード』が混ざっていて、それを取れば勝ち、というゲームなんだけれども、


「残り七体の中には、環ちゃんプレゼンツの罰ゲームが入っています……」


 四つに折りたたまれた紙が入れられた『はずれゴースト』を取ってしまうと、そこに書かれた罰ゲームを実行しないといけなくなるわけだ。

 ちなみに公平を期すために罰ゲームの紙を入れるのはクリス。

 五〇枚ほど用意されているらしいので、ゲームごとに取り換えていく形になる。


「ゲーム終了時、負けた人はランダムに罰ゲームを三つ引いて、全部やることになります」


 配信映えはしそうだし撮れ高もあるだろうけども、実に環ちゃんらしいゲーム設定である。

 何しろ、ほぼ確定で全員が罰ゲームを受けるのだから。


「罰ゲームは着替えだったり口調の変化だったり一発芸だったりらしいので、環ちゃん曰く『乞うご期待』とのことです。おれも詳細は知らされてません」


 さて、説明が長すぎるとダレるので、さっそくくじ引きで対戦相手を決める。


「おっ、さっそくおれかぁ」

「る、ルルも頑張るのです!」


 ふんす、と鼻息も荒いルルちゃんが対戦相手になった。


「こうして」

「こうです」

「ぐぬぬ……そしたらこうだ!」

「ルルはこうするのです……あっ」

「よし、とりあえず一体目!」


 どれが『ゴーストロード』なのかを読むのも大切だけど、八体全部取ってしまえば勝ちなのだからガンガン取っていくのも重要だ。

 パカリとふたを開ければそこにあったのは紙切れ。


「えーと……げっ。語尾にぴょんをつけるぴょん」

「あまね様! 可愛いのです!」

「ありがとうだぴょん……続けるぴょん」


 いやまぁ面倒なだけでそれほどキツい罰ゲームじゃないけどさ。

 なんとなくだけど昨夜、環ちゃんからされたリクエストを彷彿とさせる。


「こっちなのです!」

「おれはここだぴょん」

「やったのです! オバケさんをやっつけたのです!」


 今度はルルちゃん。

 かぽっと開ければそこにあったのは『巫女衣装に着替える』との指示である。

 コスプレ系の衣装もたくさん用意してあるんだけども、ライブ配信中にずっと席を外すのも良くないとのことで、着替えに関してはとんでもなく高速で終わらせられるようになっている。

 画面外にいた柚希ちゃんがぐっと親指を立てると、管狐をチカリ。

 ルルちゃんが光に包まれ、次の瞬間には着替え完了。

 マジカル☆あまねの時にも使った管狐式早着替えである。


「き、着替えられたのです! あまね様ー! 似合ってるですか?」

「似合ってる似合ってる。可愛いぴょん」


 にへへ、と蕩けそうな表情で頬を押さえるルルちゃんは本当に可愛い。

 ましてや、袴もきっちりロングな正統派の巫女衣装に身を包んでいるとなればなおさらだ。


「まぁ手加減はしないぴょんけど。――はい、二体目ぴょん!」

「あっ!?」

「さて……またハズレぴょんね」


 紙を広げればそこには見覚えのある指示が書き込まれていた。


『語尾にニャンを追加』


 ……いや二回目でネタが被るのかよ!?


「えっと。これはもうニャンにすれば良いかニャン?」

「あ、違います」


 語尾が変化しただけで実質さっきと同じ状況か、と思ったら画面外でニヤニヤしていた環ちゃんから指導が入った。


「ほら、ここ。追加って書いてあるので、ぴょんの後ろにニャンが追加されます」

「えっ」

「追加されます。さんはい」

「……これで良いのかぴょんニャン」


 もう何だか分かんないよ……いやでも動物系はあとワンくらいしか思いつかないし、これ以上魔改造されることはないだろう。




 ……と思っていた時期がおれにもありました。


「はい、では一回戦の勝者はあまねさんでーす!」

「やったーおれの勝ちだぴょんニャン内臓ぐしゃぁドゥルルルでゲス」


 なんで罰ゲームが全部語尾系なんだよ!?

 クリスと環ちゃんに猛抗議したけれども、本当に偶然らしいのでこれはもう仕方ないとのことだった。


「ま、負けたのです……!」


 対するルルちゃんの罰ゲームは『巫女衣装』に始まって『サビを一曲』『ダンスを一分』など可愛らしいものばかりだし、謎の『霧吹き一〇回』も可愛い悲鳴をあげていていい感じだった。

 リアルラックの格差が酷い……!


「さて、負けたルルちゃんはこの『罰ゲームボックス』からランダムに三枚を引いてもらいます」

「わかったのです……」


 しょんぼりしながらごそごそっと三つを引くルルちゃん。

 紙切れを開けると目をぱちくりさせたものの、決意を込めた表情になる。


「や、やるのです!」


 意気込んだと同時、管狐による早着替えが始まる。

 今度はペンギンの着ぐるみパジャマ姿である。股下というか、足が短く見えるシルエットで歩きづらそうだけども、よちよち系の歩き方はどこかペンギンっぽくてほっこりする。

 さっきの巫女服も可愛かったけれどもこれもまた趣深い。


 手には玩具コーナーとかで売っているような変身魔女もののステッキが握られており、


「魔女っ子ルルなのです!」


 びしっと決めポーズを取っていた。


「語尾語尾」

「あっ! ごめんなさいなのですあまね様バンザイ!」

「ちょっとまって」

「あまね様困ってるですかあまね様バンザイ?」


 それって一時期あまね真教国で流行ってたイカれた訓練の掛け声でしょ!?


 幸いにも、勝った人は次の対戦のときにリセットされるので、おれの超絶長い語尾はここまでだ。

 っていうか語尾に内臓ぐしゃぁって何……?

 続く環ちゃんvsクリスは環ちゃんの勝ち。

 勝敗よりもゴテゴテに盛られたクリスの罰ゲームが最高に可愛かった……!

 さて、優勝決定戦ということで次はおれと環ちゃんの戦いである。


「……嫌な予感しかしないけども」

「何言ってるんですかー? さぁ対戦しましょ」


 環ちゃんはこういうゲーム、めちゃんこ強そうなイメージがある。

 いや実際頭も良いだろうし普通に強いんだろうけども。


「あっ、ハズレ。……えーと、『Lサイズのワイシャツ』って……ズボンとかは?」

「駄目です。あ、注釈書いてますけど、下は水着なので恥ずかしくありませんよ?」


 いや、恥ずかしいかどうかはおれに決めさせてよ……。

 確かに水着そのものを何度か配信で映してるし、恥ずかしくない……恥ずかしくない……わけないじゃんっ!


「何か下に何も履いてないみたく見える……!」

「うーん……これもまたエモいですねぇ……Lサイズのワイシャツが似合う女に生まれ変わりたいです」


 あくまでも女の子のままなのが環ちゃんらしいけども、まぁ言わんとすることは分かる。

 おれが着せる側だったらね!?


「よし、二体目……アッ!? コレって!?」

「さ、ルール通り罰ゲーム執行ですね」

「まって! この服装で霧吹き二〇回って――ひょぉっ!?」


 おれが抵抗する間もなく、クリスによってぷしゅぷしゅと水を掛けられた。

 凍えるほどではないけれども、冷たい水を掛けられてぶるりと震える。


「うーん……素晴らしい相乗効果(シナジー)ですね……!」

「これ狙ったでしょ!?」

「いえいえ。完全に運ですよ? ……こうなったらいいな、とは思ってましたけども」


 ブカブカのワイシャツは水にぬれてぺっとりと肌に張り付き、下の水着と肌色が透けて見えてしまっていた。


「ほらあまねさん。ぱんつじゃないから?」

「……恥ずかしくないです……ああそうだよ! ぱんつじゃないから平気! 全然恥ずかしくないし!」


 い、言わされた……屈辱!


「さて、続きです。んじゃ私はここを動かしますか」

「おっ……ここを――って。ちょっと待って」


 おかしい。

 何でおればっかりゴーストを取ってるんだ?

 あの環ちゃんがこんな単純にミスをすることがあるだろうか。


「環ちゃん、手を抜いてない……?」

「何言ってるんですか? 全力ですよ? ――あまねさんに罰ゲームを受けさせるのに」

「だと思ったよッ!?」


 わざとハズレを取らせてたな!?


「あ、でも勝ちに行ってますよ? 多分ですけど、あまねさんの『ゴーストロード』ってコレですよね?

「ヴェッ!?」

「動かし方不自然ですし、ちょっと守りに行ってますもんね」

「そそそそそんなことないよ!?」

「まぁ、取ってみれば分かることです」


 結局、『ゴーストロード』を守るためにハズレゴーストを取らされた挙句、負けました……。

 環ちゃんの強さが尋常じゃない。

 結果的に、おれは猫耳カチューシャに赤い首輪。ワイシャツ水着、黒ニーソという意味不明な恰好をさせられるはめになった。

 倒錯(とうさく)しすぎでしょ!?


「はい、あまねさん。罰ゲーム鬼盛になった感想をどうぞ?」

「あ、あーたん負けちゃったッ☆ 悔しいゾッ☆ どうだ、これで満足か?!」


 語尾と同時に目元でピースサイン。そしてウインク。

 お腹を抱えて笑う環ちゃんに、爆速で流れるコメント欄。


「あまね様、怒ってるです?」

「怒ってないよ! あっ、怒ってないゾッ☆」

「そうですよね……ぷぷっ」

「そうだよ! 配信なんだから陰キャバス(リスナー)さんたちが満足してくれてれば満足なんだゾッ☆」


 本当だよ!

 負け惜しみじゃないよ!!

 ……チクショー!!!

「次回は掲示版やね」

「お、柚希さんもわかってきたようですね!」

「環ちゃんとクリスちゃんなどげん戦いばしよったか気になっとー」

「いやホラ、まぁそこら辺は雰囲気で」

「何もなかった」

「……クリスさん?」

「何もなかった。良いな?」ギロッ

「は、はいっ」

「(これどけんしよっと?)」

「(クリスさんは掲示版とかみないタイプのフレンズなので、真相究明は掲示版回に賭けましょう!)」

「(書かれよー?)」

「(そこはまぁ、作者のパッション次第ですね)」

「(いっちょん期待できん……)」

「何もなかった」

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[一言] 語尾ネタが酷過ぎるWWW
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