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午前:アウトドア部

「みんな集まったね? せーの、」

『応援ありがとうございますッ!』

「おかげ様で総合評価10,000ptに到達しました!」

「たっくさん応援してくれて、ありがとうなのです!」

「ジャンル別ランキングにも入れて嬉しかー!」

「ん。これからも頑張る」

「ですから、これからも応援よろしくお願いしますね」

「おねえさま方の活躍をご期待くださいまし」

「ボクとしては環さんの活躍にも注目してほしいですけども」

「アルマめが注目せざるを得ないようにしますので大丈夫です」

「あー! おれは本当に感謝の気持ちを伝えたいの! ちょっと黙ってて!」

「……あまねさん。多分ですけど、アルマは本気ですよ」

「ああうん……それはそうだけどさ」

「アルマには後で環を与えよう。今はお礼」

「ヴェッ!?」

「だね。これからも、おれたちの活躍を楽しみにしててくれよな!」

「クリスさん!? あまねさんも! ちょっと待ってください!」

「それじゃあ、本編へGO!」

「待ってくださいいいいい!?」

 基礎が打ち込まれた地面に、屋根と柱だけが乗っかっている。

 言わずと知れた、アウトドア部の活動「拠点づくり」の進捗である。パッと見た感じ、四阿(あずまや)みたいに見えないこともないけども、むき出しのコンクリとか出っ張ってる梁が無骨な感じだ。

 今日は床板を張ったり壁を作っていったりする予定らしい。


「あれ、前に電装業者とか言ってなかった?」

「言ったな」

「……電気工事やるとこまで進んでたわけじゃないの?」


 あ、ちょっと視線が揺れた。


「もしかして、だけどさ」

「そんなことはない」


 まだ何も言ってないよ!


「三条さんとの面談に同席するのが面倒だった、とか……?」

「そんなことはない、と言った」


 いやもうコレ確定でしょ。

 おれの背後で柚希ちゃんが笑っているけども、電装業者を呼んだのは嘘ではないらしい。

 実際の間取りと図面を見ながら、どこに配線するかとか、コンセントをどの辺りにつけるかとかを相談していたとのこと。

 タブレットに収められた最新の電子図面には赤でコンセントの位置が書き加えられている。


「さて、それじゃあやるか」

「「「おーっ!」」」


 クリスと柚希ちゃんが床下になる木材を運ぶ。そこに断熱シートやら何やらを敷くのがおれとルルちゃんの仕事である。本当なら綺麗にカットしないといけない部分らしいんだけども、ログハウスキットで買ったのでもうぴったんこになっているのだ!

 ちなみに今日のおれはエリとお揃いで、結わえた髪をクリップでガブッてやって上に持ち上げている。服装は半袖のワンピースに膝丈のスパッツ。

 アウトドア部の活動なので、動きやすい服にしたのだ!

 靴もスニーカーだし、このままレジャーだってイケるレベルである。


「ルルちゃん、そっち押さえて!」

「はいです!」

「ここを留めれば――おろ?」


 タッカーっていうでっかいホチキスみたいなので留めようとしたら、器具を取り上げられた。見れば、木材を運んでいる柚希ちゃんから管狐が伸びていた。


「危なかけん触っちゃつまらんばい。お利口さんにしとって」


 ぐぬぬぬぬ。

 小っちゃい子じゃあるまいにお利口さんって。ルルちゃんはタッカー使っても怒られないのになんでおれだけ!?

 ドジっ子か?

 ドジっ子属性がいかんのか?

 ちょっとバブみを感じて魔力が湧いてる気がするのがまたなんとも屈辱である。


 当然ながら、断熱シートを敷くよりも板を張る方が時間がかかる。

 つまり、


「暇だー」

「あ、あまね様! ルルとお茶しましょうなのです!」

「しようしよう」


 軒先になる予定のとこに腰掛けて、ペットボトルを開ける。

 ルルちゃんはお茶で、おれは強炭酸のサイダーである。あおるように喉に流し込むと、強い刺激が抜けていった。


「っぷはー!」

「おいひい、れす」


 二人で喉を潤していると、完全に裏方となっているアルマがおれをズームで映しつつルルちゃんにカンペを提示。


「えっ、えっと……『どーですか皆さん。炭酸で涙目のあまね様なのです』……?」


 あーうん、誰の差し金か分かった。不在でもスタンスは変わらないのね。

 羽根を使ってふわりと飛び立つと、アルマの持っていたカンペ代わりのスケッチブックをペラペラめくれば、


「……いやコレどう考えても無駄な努力でしょうに」

「です?」

「皆の口調に合わせての煽りが載ってた」

「です!」


 クリスや柚希ちゃん、なぜかアルマの分まであった。

 君はめくる側だから要らないでしょ。


 しばらく休憩したら、今度はちゃんとした床板と壁だ。

 やるぞ、と気合を入れたはいいものの。


「……なんで!? なんで!?!?」


 おれはぶら下がっていた。

 管狐でぐるぐるに巻かれて、ログハウスの中央に位置する梁にぶら下げられているのだ。


「タッカーば使うんな危なかけん」

「できることないし」

「だからって縛らなくてもよくない!?」


 おれの言葉にクリスと柚希ちゃんは顔を見合わせる。柚希ちゃんはポケットをごそごそし始めて、クリスがおれを縛った理由を説明し始めた。


「必要。ちょこまかしてて邪魔だし」

「うぐっ!?」

「道具みつけると触りたがるし」

「ぐぐっ?!」

「隙をみてチョッカイかけてくるし」

「ぐふっ……!」


 クリスの言葉に心を(えぐ)られたおれはくたっと力を抜く。


「あ、あまね様!? あまね様ー!?」


 ……念のために言っておくけども。

 クリスと柚希ちゃんには環ちゃんから指示が出ていました。

 (いわ)く、何か気になる動きをしたら梁に吊るす。撮れ高。

 とのことで、やることがないおれのムーブを大げさに伝えただけなのだ。

 そりゃそうだよね!

 ずっとみんなの周りをぱたぱた飛んでただけでちょこまかなんてしてないし!

 道具だって色々見つけたけど怒られるから触るの我慢してたし!

 チョッカイだって尻尾がルルちゃんをつんつんしたり、やらないと拗ねるからクリスをつんつんしたり、仲間外れは可哀想だから柚希ちゃんをつんつんしてただけだし!


 ……だから本当に邪魔とか、そんなんじゃないよね……?


「さて、やるか」

「もう一息やね」

「あ、あまね様は!?」

「終わったら解放する。頑張ろ」

「頑張る、です! あまね様、待ってて欲しいのです!」


 えっ、本当にこのままなんですか……?


「あ、こらアルマ?! 何で後ろに回るの!?」

「環様から『チャンスは逃すな』とご指示を頂いておりますので」

「チャンス!? 何の!?」


 おれの質問には答えず、背後に回ったアルマの手が少しずつ下にさがる。

 下にスパッツを履いているとはいえ、今日はワンピースだ。


「おのれ環ちゃんめぇぇぇぇ! 健全な配信だって言ってるだろぉぉぉぉぉ!」

「? スパッツはズボンでは? あまね様はズボンを撮影されるのが恥ずかしいので?」

「は、恥ずかしくないし! 別に余裕だし!」

「では」

「ふぬうううううううう! 健全な配信だから!! 健全な配信だからああああ!!!」


 何とか撮影されないよう自由になる足をバタバタさせていたら、なんか回転しだした。

 しばらく回ると勢いが弱くなり、止まる。

 そしたら今度は反動で逆回転である。


「ああああああ!? とめて!? 結構目が回るー!」


 管狐がおれをぐるぐる巻きにしたまま尻尾で器用にスカートを押さえてくれたけど、おれが求めてるのはそれじゃないんだよ!

 っていうかできるなら最初からやってよ!


「あ、あまね様っ!?」

「ほら、ルル、そっち持って」

「は、はいです……!」

「そげん次はうちを手伝ってほしかー」

「はいです……!」


 ちなみにこれもまた環ちゃんの指示でした。

 『健全な配信なのでスカートの中とか映さないです。回ってるあまねさんも撮れ高ですよぉ!』とのことでした。

 おれが自由になった時はもうどのくらい回転したかもわからないくらいのふらっふらな状態で、朝ごはんをちゃんと食べてたらリバース待ったなしといった(てい)だった。

 あやうく別の意味で配信禁止になるとこだったじゃん!

 ぜったいにゆるさない。

 ぜったいに! ゆるさないからな!

 ぐったりと横になりながらもおれは心の中で復讐を誓うのであった。



 さて、物理的な限界とは別に、元々の筋書き通りおれの出番はいったん終わり。撮影班(アルマ)が移動するのはキッチンだ。

 実は後半、柚希ちゃんはお昼の準備のためにアウトドア部から抜けている。

 ……おれを縛っていた管狐を残して。

 だから延々とぐるぐるしてたんだけども、柚希ちゃんはお昼の配信に向けて準備をしていたのだ。

 ちなみにエリとマリも配信に巻き込むか考えたんだけども、敵に二人の居場所を喧伝する意味もないので裏方に徹してもらっている。

 二人とも料理の下ごしらえ的なことを頑張ってくれたはずだ。



 料理部やってる時はキッチンに入ろうとすると本当に怒られるし、どうせ食べられないからちょっと寝ようかなー。

 あー……酔い止めが欲しい。

「さて、今日ん献立は、ラタトゥイユやね!」

「お野菜、です!」

「材料は以下の通り」 ドンッ


・トマト(大)2 ・パプリカ1/2 ・タマネギ1/2 ・ズッキーニ1 ・なす1 

・ニンニク3欠片 ・塩 ・オリーブオイル


「ど、どうやった、です!?」

「ほら、細かかこと気にせんと。続いて作り方とポイント」 ドンッ


・トマトは皮を湯剥きして種を取り除くと苦手な人でも食べやすくなる

・トマト、パプリカ、なす、ズッキーニを角切りにする。

・オリーブオイルをフライパンに多めに入れ、包丁の腹で潰したニンニクを投入。弱火で香りを出す。

・タマネギを入れて塩を一つまみ。よく炒める。

・ズッキーニを入れて(以下同文)

・パプリカ(以下同文)

・なす(以下同文)


「最後にトマトば入れて塩を一つまみ。よぉーく炒めるんよ」

「柚希様。これは何です?」

「タイムとローズマリーやね。軽く揉んだり叩いたりして入れると良か香りばするけん、おすすめやね」

「なるほどなのです!」


「前々から思ってたんですけども」

「何?」

「レシピサイトによく書いてあるひとつまみ、って何グラムって感じですよね」

「そうだな」

「……もっと定量的に! 誰でも再現可能なものを! 適量ってのも! 少々も! お好みもです!」

「何か嫌なことあった?」

「単純に気になっちゃうんですよ」

「食べられればそれでいい」

「まぁ、実際つくるのはほぼ柚希さんですしね」

「だな」

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