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◆015 いざ沖縄

「ええと、沖縄?」

「そうそう。いやー大変でしたねー、強行軍でしたし本当に大変でしたー」

「めっちゃ棒読みなんだけど」

「あの悪天候の中、高速道路を駆け抜けるのは怖かったですねー」

「えっ!? そんなことあったっけ?!」

「フェリーでクラーケンと戦ったときは生きた心地がしませんでしたよー」

「あ、これ言ったもん勝ちにするつもりだ……!」

 さて、そんなわけでやってきました沖縄!

 フェリーを多用して三重・奈良・和歌山の辺りから四国に移動し、高知・愛媛を通って再びフェリー。

 大分・宮崎・鹿児島とガンガン駆け抜けたのだ。

 いや、別におれがあんまり食べられないからとかじゃないよ?

 お腹壊したとかも関係無いよ?


 ほら、やっぱり困ってる人優先だからね! 


 ちなみに、だけども心霊スポット的なのは回避してたはずなのに謎の吊り橋だったり曰くのある洞窟だったりに回って浄化させられました。

 下手人は言うまでもなく環ちゃん。

 流石にお腹痛くて苦しんでるおれを騙したのは心苦しかったのか、珍しく夜の方でサービスしてくれたけども。


 回れてないところは帰り道とか、また日を改めていく予定にして、最後のフェリー旅を終えて沖縄本島と道路で接続されている久我地島に降り立ったわけだ。

 ちなみにメンバーはおれ・柚希ちゃん・クリスの三人に、一応は運転手として大悟だ。

 武闘派で対応力もあるし、柚希ちゃんは地元が近いこともあって来たことがあるらしいので少しでも助けてもらおうと思ったのだ。

 何で大悟が一応なのかっていうと、


「じ、自分は車から降りないっすよ!? 何かあったら秒速で死ぬっすからね!? 瞬きする間もないレベルっすよ!?」


 とのことで運転手に徹するつもりらしい。いやそんな自信満々に言わなくても……。

 流石に可哀想だから何か美味しそうなものが手に入ったら差し入れしてやろう。


 ほかのメンバーはおれの《転移》で一度栃木に戻っている。

 大勢は目立つし、さっさと喜屋武さんと合流して移動してしまいたい。


『ふむ。まずは久我地大橋を通って本島に移動してください』


 電話越しに指示をくれるのは三条さん。

 沖縄にも祓魔師協会の人はいるはずなんだけれども、どこから情報が洩れるか分からないからということで直接指示を受けることになった。

 盗聴対策はバッチリです、と鞄みたいなサイズの本体付きの電話を渡されたときは思わず二度見したけども、使えるなら問題はない。


『その後はうるま市を目指してください。市内に入ったらまた指示を出しますので』

「了解っす」


 運転モードでのハンズフリー通話を終えた大悟が車を出す。一〇月に入ろうかという時期なのに、外は夏日。すれ違う車の運転手やら通行人も半袖ばかりなのが如何にも沖縄らしくてわくわくする。

 日焼けした人が多いけれども、焼けた小麦色の肌と、服に隠れた真っ白な肌のコントラストはぐっとくるものがある。本当ならみんなを誘って海にいったり、レジャーを楽しみたい気持ちもある。

 日焼けは後で《月光癒》使えば治るし、こんがりと真っ白の芸術的な色合いをベッドの上で鑑賞したかったのだ。

 あくまでも芸術的な興味からね。

 今年は例年にも増してクラゲが多いらしいし、皆の肌に傷でもついたら大事件なので海そのものが却下。それに喜屋武さんのこともあるし遊んでるわけにもいかない。

 そんなわけでおれの『ドキドキ! 夜の芸術鑑賞会だよ』大作戦は儚くもお蔵入りしたわけだ。

 せっかくの沖縄なのにマリンスポーツなんかもできないのはちょっと残念だけども、土御門さん持ち(むりょう)でここまで来れたので、色々終わって落ち着いたら《転移》を使ってまた来よう。


「沖縄かー……素通りするのも寂しいなぁ。お土産くらいは買わないと」

「もういっぱい買った」

「それは違う都道府県のだから! 沖縄のはまだ買ってない!」

「好きやねぇ……ご当地キャラんキーホルダーなんてもうつくる(つける)場所なかくらい買うたやろ?」


 い、良いんだよ!

 こういうのは買うことに意義があるんだよ!


「それにほら、環ちゃんにもお土産頼まれてるし!」


 スマホの画面を操作して見せるのは、環ちゃんから送られてきた『沖縄でぜひ欲しいものリスト』だ。おれの《転移》をあてにしてるらしく、本当はお土産にできないものも含まれているとのことだけども、まぁそのくらいのわがままは叶えてあげるのが男の、お・と・こ・の! 甲斐性ってもんだろう。


「……ヤシガニはともかく、イラブー汁にヒージャー(さし)、コーレーグスはどうかて思う」

「およ? 何だか知ってるの?」


 こくんと頷いた柚希ちゃんは、微妙に言い辛そうな顔をしている。多分だけど環ちゃんが何かを企んでて、柚希ちゃんが色々言ったらたくらみが潰えるから気にしてるんだと思う。

 うん、是非とも発言してください。

 っていうか詳細を知ったら買いたくなくなるようなものをお土産に頼んじゃダメでしょ。


「イラブーはウミヘビやな」

「ウミヘビ!? じゃあウミヘビの汁ものなの!?」

「鱗ごと煮込んであるけん見た目が凄かばい。うまかって聞くばってん、うちゃ食べたことなか」


 ……確かにそれは食べるのに勇気がいりそうだ。


「それじゃ、ヒージャーは?」

「ヤギやねぇ」

「ヤギ?! お手紙食べたりするヤギ!?」


 青柳(あおやぎ)っていう貝の刺身じゃあないか、と希望的観測を抱いたけれども柚希ちゃんがコクリと頷いたことで確定してしまった。

 えっと、その……食べるの? ヤギだよ?

 あー、でも北海道とかでヒツジを食べるし、別にそう考えるとあんまり珍しくないのかも?


「あまね、コレ」


 調べてくれたのか、クリスがスマホを差し出してくれた。

 そこに書いてあったのは、


「ヤギの肉および(こう)――むぐっ」

「言わんで良かばい」


 いや、だってアレだよ!?

 全世界の男性陣が持つマサムネ的なものにくっ付いてる黄金色した球体的なサムシングだよ!?

 食べるの!?

 ……食べるのッ!?


「これ、多分ばってん環ちゃんも知らんのやなか? そげなん好きじゃなさそう」


 あ、うん。

 そうだよね。もう骨の髄まで百合百合しい成分でできてる環ちゃんがアレを食べるはずないよね。

 何だったら大悟に無理矢理食べさせて嫌がるところを楽し……む…………?


「あのですが」

「うん」

「何ね?」

「仮に、なんですけど自分は食べないけどもおれには食べさせる的な計画って可能性はありますかね?」

「「……」」

「待って!? 何で二人とも目ェ逸らしてるの!?」


 ……ちなみにテレビ電話で確認したところ、普通に知ってたし普通に食べる気満々でした。


『良いですかあまねさん。普段から食べてる食肉だってオスもメスも混ざってますよ?』

「えっ!? あ、そういえば……そうなの、かも?」

『牛肉はちょっと別みたいですけど、基本的にどっちも食べてるんですよ』

「いや、でもアレだよ!? ゴールデンなボールだよ!?」

『ホルモンです。ミノ、タン、レバー……希少部位ならフワだとかコリコリだとか、どこなのか調べたら多分びっくりしますよ?』

「おー、環ちゃんなよう知っとるねぇ」

「じゃあ、食べるの……?」

「あまね。食べれるものは食べる。それが生き残るコツ」

『食べた後、あまねさんがチューしてくれない、とかじゃなければ』


 そんなかわいい条件を告げられたら、ここはやはり男を見せねばなるまい!


「そんなのするわけないじゃん!」

『良かったです! 成人してればハブ酒も欲しかったんですけど、さすがにまだ無理なんですよねぇ。あまねさん、飲んで食レポしてくれません?』

「ヴェッ!?」


 ハブ……ハブかぁ……。


『精力増強にも良いらしいのでぜひ!』

「ヤギも精ばつく食材じゃなかった?」

『えー? そうだったんですかー?』


 おっけ。目的がハッキリしたわ。

 っていうかもう隠す気ないでしょ。


『環様、必要でしたらこのアルマ、ひと舐めで三日三晩は興奮し続ける液体を分泌――』

『ご、ごめんなさい! ちょっと忙しくなってきたので切りますね!』

『あっ、お待ちください環様! ほら、もうアルマのあらゆる穴という穴からドバドバと――』

『そんなヌタウナギのコスプレみたいな見た目で寄ってこないでください!?』

『お、お待ちを!? 何が不満なのですか!?』

『テカテカな見た目とヌルヌル感じですッ!』


 ああうん。

 わりと自業自得な気もするけども頑張って。一応、もしも見つけたらイラブーもヒージャーも買ってってあげるから。


「いや、あの、喜屋武さんは……?」

「いいですかあまねさん」

「はい」

「ピンチになってから現れることで吊り橋効果を狙いつつ、自分が味方であることをしっかり認識させるんです」

「……何の話?」

「あとは『不安そうだね。人のぬくもりがあるだけで少しは安心するだろうから一緒に寝よっか』って言えばなし崩しで――」

「おっけ。アルマ呼んでくるね」

「あまねさん!?」

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