◆004 復帰配信 後編
「なんかさ、気絶した次の日の朝って妙に体調良くない?」
「そうだな。スッキリしてる気がする」
「やっぱり色々とストレスを発散したからですね! うん、つまり『身体は正直』って奴ですよ!」
「環ちゃんは静かにしてなさい!」
「でも確かに、すっきりしていますわ」
「あー……」
「葵ちゃん? なんで微妙な顔してるの?」
「いや、みなさんが寝てる間にアルマが――」
「葵お嬢様、お静かに」
「えっ?」
「アルマめは誠心誠意お世話をしているだけです。良いですね?」
「いや、でも――」
「丹念にお嬢様方のお世話をした。その結果、皆さんの体調が良くなった。これが全てです。良 い で す ね ?」
「……はい」
「待って!? 何されてるのおれたちは!?」
「細かかこと気にせん方が良かよ?」
「柚希ちゃんが大らかすぎるんだよ!?」
さて、環ちゃんまでを紹介したところで初期組は終了。
ここからが後半戦である。
「続いてリア!」
ワンピースドレスを身に纏い、華奢な体格にミスマッチな大剣を横に構えたリアの姿がモニターに映される。リア自身より大きな大剣とか、どう考えても普通は持ち上がらないよね。
「リアちゃんなクリスちゃんの弟子で勇者やっとったばってん、環ちゃんに洗脳されたっちゃん」
「ふははは。純粋培養お嬢様を堕とすのはなかなかにオツであったぞ」
「……環ちゃんだとホントにやりそうなんだよなぁ」
「私の心は正義を叫ぶのですが、ごしゅっ――たまきおねえさまには逆らえないのですわー」
リアはキャラ付けがクリスに被ってしまうこともあって、闇堕ちした、という設定を足した。闇ではないし環ちゃんが堕としたってのは事実だし、リア自身も環ちゃんの手下ってことろが気に入ってたっぽい。
まぁ手下って部分に関しては設定と言うか、昨日の夜も「たまきおねえさまの命令には逆らえませんの」とか言いながらおれに――いや、やめよう。
今は配信に集中しなければ。
雑念退散!
「クリスさんの弟子がリアなら柚希さんの弟子もいます! 葵ちゃん!」
「はい。葵です。よろしくお願いします。男なんで、間違えないでくださいね」
既に男の娘として登場している葵ちゃんに関しては、性別が変わったこととかは内緒のままでいくことにした。
というのも、
「世の中にはそういう需要も多いっすよ? むしろ女の子になったって分かったらファン減るっす」
大悟から業が深いアドバイスを貰ったのだ。
葵ちゃんも葵ちゃんで、環さんと一緒ならなんでも良いです、とか言い出したので今まで通り男の娘として活動することとなった。
華奢な骨格の葵ちゃんが狩衣姿で短刀と符を構えた画像に、コメント欄は大盛り上がりである。
『【¥10000】こんなに可愛い娘が女の子のはずないじゃないか』『てぇてぇ』『むしろおれっ娘としてあまねの弟子・・・?』『【¥5000】こんなに可愛い娘が女の子のはずないじゃないか』『マジで女の子にしか見えないのよなぁ』『つまりこれ、実質葵ちゃんによるハーレム・・・?』『【¥50000】こんなに可愛い娘が女の子のはずないじゃないか』『男の娘がヘキにド刺さりしてる奴が多くないかw』『スパチャ勢のセリフが皆同じなの草』『宗教かよwww』『【¥2525】こんなに可愛い娘が女の子のはずないじゃないか』
うん。
確かに大悟の言う通りかもしれない。
っていうか皆同じセリフだけどもどっかに元ネタあるんかな……?
首を捻るけれども検索してる時間はないので次だ。
「最後にアルマ。――ここにきて自己紹介しなさい」
環ちゃんがキリッと命令すると、これまた嬉しそうにアルマが自己紹介を始める。
「お久しぶりでございます。環様にお仕えし、お嬢様方のお世話を申しつかっております、自動人形のアルマと申します」
優雅に一礼すると、何をどうやっているのか、服の裾からパソコン用のHDMIケーブルをにょっきり生やした。
そのまま触手のようにウネウネ動かす。
「お嬢様方の麗しい御姿を撮影させていただいたり、欠点だらけで主人に迷惑を掛けるダメ機材どもの改造や教育なども担当しております」
「アルマは何故か電化製品に対してアタリがキツいよね」
「当たり前です! ご主人様の暮らしを便利にすることこそが我らの存在意義だというのに、操作のためにボタンを押させたり、脳死であらゆるものを冷やしたり、あまつさえご主人様の目や耳に負担を掛けるなどあってはならないことです! このアルマにお任せいただければ操作も不要! 細かい指示もこちらで汲み取ります! さらには脳に電極を挿すことで情報を直接――」
ああうん。なんか熱い思いは伝わってきたよ。言ってることは訳わかんないけどね。
いや分かんないというか分かりたくないというか。
なんでオーバーテクノロジー系のくせして脳に電極とかアナログな方法を使おうとするかなぁ……いや電波とかだったら防御不可だろうしそれはそれで嫌だけどさ。
「アルマ、静かに」
「かしこまりました」
環ちゃんの指示で静かになったアルマが退場したところで、別窓が消える。ひな壇よろしく、みんなが座っている様子が映されたところで幾つかの企画を発表である。
「さて、それでは今後の活動です! まずは、あまねさんを部長としたゲーム部!」
「はい。おれとクリス、環ちゃん、葵ちゃんでゲーム配信をします! 視聴者さんの参加型の企画もやるからお楽しみにね!」
何度かやったゲーム実況はわりと盛り上がったし、クリスは普段からゲームをやっているので得意だ。柚希ちゃんはあんまりゲームとかが好きじゃないらしくてパスされたので、日本人だし何となくできるであろう環ちゃんと葵ちゃんを巻き込んだのだ。
「続いて料理部!」
「はーい! うちが部長ばやるけんね! 盛り上げるけん楽しみにしといて!」
「部員はルルちゃん、私、アルマですね」
「あまね様に美味しいごはん作る、です!」
料理が得意な柚希ちゃんを筆頭に、やる気満々のルルちゃんと、インドア派の環ちゃん、そして環ちゃんのお世話をしたいアルマがくっついている。美味しそうな柚希ちゃんの料理とエプロン姿で頑張るルルちゃんが見どころだろう。
環ちゃんがいたずらしないかすごく心配なんだけども、おれと大悟で口を酸っぱくして食べ物で遊ばないように言ってるから多分大丈夫だろう。きっと。多分。うん。大丈夫に違いない。
……大丈夫だと良いなぁ。
「次、アウトドア部!」
「部長はクリスさんですね」
「ふむ。精一杯頑張らせてもらう」
栃木の別荘周辺は自然が多いので面白いことがたくさんできそうだ。クリスを部長にするとアウトドアというかガチサバイバルになりそうで不安だったけれども、クリス自身が普通の農耕をやってみたい、とのことだったのでGOサインを出した。
きっと野菜とかフルーツを育てたりするんだろう。
『ジャージー種 牛 値段』とか『九州 地鶏 生きたまま』とか調べてた気がするけどきっと気のせいだ。
……気のせいであってほしい。
「アウトドア部は参加できる人が参加って感じですね」
「がんばる、です!」
「最後は旅行部! 部長はやっぱりあまねさん! これもまた部員は全員! 参加できる人が参加する形です」
「温泉だ! おれは温泉にいきたい! 出来れば貸切りの家族風呂が良い!」
『このサキュバス欲望に忠実だぞwww』『温泉キターーー!!!』『考えただけではかどる』『【¥10000】旅行資金に』『水着やバスタオルはマナー違反だからな?』『【¥50000】温泉配信期待』『【¥20000】浴衣キボン』『そうぞうだけでたすかる』『あまねのくせに有能だwww』
「そんなわけで、色んな企画を考えているのでお楽しみにね!」
さて、そろそろクロージングの時間である。
「では、この配信の主でもあるあまねさん、締めの一言を!」
「えーと、これから毎回、これが締めの挨拶になるようなので、覚えてってね!」
少しだけ表情を作って、カメラを見つめる。
「良い夢見てたら遊びに行くかも、夜更かしさんは知りませーん。早寝早起き健全配信! あまねチャン(と)ネルでした! んではサキュバいばい!」
「「「「「「「ばいばーい!」」」」」」
ふぅ!
久々で疲れたけど楽しかったー!
「……マジで何されてんのおれたち……」
「気になります?」
「いや気になるでしょ普通に!」
「多分聞いたら後悔すると思いますよ?」
「……ってことは環ちゃんは知ってるの?」
「はい。こないだ偶然目を覚ましたときに処置中だったので見学しました」
「待って!? 処置って言った!? 処置って言ったよね?!」
「……エステみたいなもんですよ。広義では」
「不安を煽るようなこと言わないでよぉ!?」




