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シー・イズ・スピーカー

「今日は楽しかったね、兄さん」

「そうだな。最初に話をもちかけられた時はどうしようかと思ったけど、おかげ様で勉強のいい息抜きになったよ」


一通り遊び終えた俺たちは、自宅への道を共に歩きながら今日の感想を口にしていた。


渚も喋り方を普段のものに戻している。

……デート途中にところどころ口調が素に戻っていたのはさておき。


コイツの女言葉も新鮮でよかったが、やっぱりいつもの中性的な言葉遣いは妙に安心する。

旅行に出かけてて数日不在にしていた後、実家に帰って来た時のような安心感と言うべきか。


「テストが終わったら、また一緒に遊びにいかない?」

「ああいいぞ……って言いたいとこだが、その為には軍資金をどうにかしないとだな」


当初は渚が『デートをしてくれたらバイト代を出す』と言ってたが、その申し出は当然一蹴している。


ん?

そもそも何で渚がお金を出そうとしてたんだっけ?


思考がその方向に至った俺は、ようやく女の子バージョンの渚にしつこくつきまとっていたらしい、ストーカー野郎の存在を思い出した。


「遊ぶのに夢中になって、すっかり忘れてたな」

「何の事?」


尋ねてきた渚に、ストーカー野郎の話をする。


「え? あ、ああ! そうそう。その人から言付けがあって『一日中、二人の行動を見てたけど、恋人かどうか断定できなかったので、もう一回デートしてみせてほしい』だってさ」

「……そうか」


いつの間に言付けを受けたんだよ? とかから始まり、さすがの俺でも色々と察するが、あえて指摘するなんて無粋はしない。


「う、うん。それに使えるお金が少なくても、デートで一番重要なのはやっぱり誰といくかだから、無理にお金をかけなくてもそれはそれでいいじゃない」


イタズラで家具を壊したことを誤魔化す子供のように、慌てて身振り手振りする渚と共に、近所のスーパーに入る。


俺たちの親は二人とも、とある事情で長期間家を空けているため、家事全般を俺と渚だけでこなす必要がある。


その中には当然食事も含まれている。


双子が相互不干渉だった頃は、それぞれ勝手に外食したり弁当を買ったりしてたが、今は二人分×数日分食材を買い込んで自炊するようにしている。


そっちの方が安上がりで、浮いた金をそれぞれの小遣いに回せるからな。






「兄さん、このキャベツかなり安いよ。サラダ用にどうかな?」

「おい、それはレタスだぞ」

「いいじゃない。どっちも生で食べれるし、似たようなものだよ」


俺がカートを引いて、渚が食材を選んでカゴに放り入れていく。

こと料理に関してはそれなりの腕がある俺と、大雑把な渚。

役割が逆のような気がするが、渚が食材選びを楽しんでるので『まあいいか』とカートをゴロゴロ。


「あ!? 湊音兄(みなとあに)と渚ちゃんじゃん!」

「うげっ! スピーカー女か!?」


いきなりかけられた声の主を確認した俺は、露骨に顔にしかめる。

良く見知った顔だが、こういう場面では絶対に遭遇したくなかった相手だからだ。


ショートヘアーでやや釣り目がちだが、顔の造り自体は悪くないどころか、上の下と言った所。

今まで上の上をつけたのは渚と先輩だけという、なかなか厳しい俺基準においても、『まあ可愛いんじゃね』と言えるぐらいには美少女なんだけど、いかんせん中身がなあ。


「あ、君は同じクラスの……」


言いかけた渚に視線を送り、余計なことを言わないよう黙らせる。


「ちょっと、誰がスピーカー女よ。あたしの名前は栖光(すぴか)よ!」


いや、キラキラネームくさい名前を(もじ)ってるんじゃなく、その性質を表した立派なあだ名じゃねえか。


それを裏付けるかのようにこの(アマ)、文句を言ってる間にも俺と渚を写メで撮影し、早速ラインに上げてやがるし!


「湊音ツインズがスーパーで買い物中。渚ちゃんのおめかしした恰好を見る限り、兄妹でデートした帰りの模様、と」


既読マークがつくなり、『兄一を殺せ』『ムッコロス』『ワンピース姿の渚ちゃんの写真もっとよろ』などのコメントで賑わう、俺たちの高校のクラスのライン。


信じられるか?

俺と渚の姿をコイツに見られてからほんの一分で、デートの事実を暴かれてクラス中に広められたんだぞ。


どう考えても立派なスピーカーじゃねえか!


「あ、栖光さん。せっかくだから僕と兄さんが買い物している場面を何枚か撮影してもらっていい?」

「お前はお前で何のんきな事言ってんだよ! 他のスーパーのお客さんに迷惑だろ!?」

「湊音兄の大声の方がよっぽど迷惑だと思うわよ」

「うぐっ……」


買い物客の大半がこっちを見てやがる。

さすがにこれにはバツが悪くなり、渚と一緒にコソコソと移動した。






ようやく買うものを選び終わり、レジに並ぶ。

ちなみにスピーカーは『じゃ、また明日ね』と去って行ってしまった。


突然現れたと思ったら唐突に去って行って、ホント嵐のような奴だな。

しかし、アイツが俺と渚のデートを拡散してくれやがったせいで、明日学校に行くのが怖い。


何かしら対策を考えないとなあ。


今更だけど、この物語で結末に至るまでの道筋が見えてこない。


(ネタさえ出れば)いくらでも続けることができるし、逆に先に結末に触れているから、いつでも閉じることもできる。

……どうしよう。


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