6 新しい乗り物って、何だよ
シャロンの押しの強さに負けたらしい売り子が、苦笑して品物を葉っぱで包んで渡している。それを受け取ったシャロンは、キラキラと虹色に光るカードを差し出した。
それを見て、頼みもしないのにまた元子が教えてくれた。
「黒田星商の幹部社員だけが持っているレインボーカードよ。あのカードがあれば宇宙船だって買えるわ」
「そんなセレブが、なんで土産物を値切るんだよ」
元子は肩をすくめた。
「お金持ちって、そういうものじゃないの?」
そこへ頬を少し上気させたシャロンが戻って来た。
「前から、欲しかた、木彫りの根付、ゲット、しましたです」
どうして、日本語だけカタコトなんだよ! おかしいだろ!
(ちなみに、おれの乏しい知識だが、根付とは、江戸時代の携帯ストラップみたいなものだ。むろん、江戸時代に携帯はないから、実際には、印籠なんかに付けていたらしい)
シャロンが追いついたところで、メイメイは、「では、参りましょう」と先に歩き始めた。
「行くって、歩いていくのか? あ、まさか、またメイメイたちにおんぶしてもらうのか?」
横を歩いていた元子が、ハハッというような豪快な笑い方をした。
「心配しなくていいわ。あれから荒川さんたちが頑張って、いいものを造ったから」
イヤな予感がする。そして、おれのイヤな予感は、大抵当たるのだ。
売店の先に、【モノレール乗り場】という表示が出ている。前回のリフトから考えて、どんなモノレールなのか、想像するだに恐ろしい。
先に出ていたメイメイが、「こちらからお入りください」と木の柵を開け、乗り場の中へ導いた。
そこにあるのは、一人乗りのトロッコのような箱を、何両か連結した乗り物だった。下に細い枝の表面をツルツルに磨き上げた、I字型のレールがあり、それをトロッコの木製の車輪が左右から挟んでいる。しかも、前方に伸びるレールは、何故か、一旦上昇し、その後、急降下している。
これは、まさに……。
「ジェットコースターじゃないか!」
メイメイは心外そうに、「いえいえ、モノレールですよ」と言い張った。
今さら言うまでもないが、おれは高所恐怖症なのだ。
「おれは、イヤだ。絶対イヤだ。ジェットコースターに乗るぐらいなら、死んだ方がマシだ!」
元子はニッと笑い、「じゃ、死ぬ気で頑張ってね」と言って、一番前の席に座った。
「わたし、コワイから、元子さん、後ろ、座りまーす」
シャロンはそう言いながら、おれに向かって小声で「サッサと乗んなきゃ、置いてくよ」と囁いた。
見かねたメイメイが、「なんでしたら、わたくしが抱っこして、お乗せしましょうか?」と言ってくれた。
何ということだ。考えたら、おれ以外、全員女性じゃないか。ここで、ビビッていては、田舎のじっちゃんがよく言っていたように、男が廃る、というものだ。
ええい、もう、やるしかない!
「い、いや、大丈夫だ。ちゃんと、一人で乗るよ」
おれはシャロンの次に乗り、メイメイは一番後ろに乗った。
メイメイが、みんなに聞こえるよう少し大きめの声で、乗車の際の注意を始めた。
「各車両にオランチュラの糸を編んだシートベルトが二本あります。短い方は腰回り、長い方は肩から斜めに掛けてください。走行中は、車両前方にある水平の手すりを、両手でしっかり握ってください。もちろん手を離したところで、Gは足の方向にかかるので、止まらない限り落ちることはありませんが、万が一のためです」
おれは、シートベルトをがっちり掛け、ギューッと手すりを握った。手汗がハンパない。滑らぬよう、手のひらをズボンで擦り、もう一度握り直した。
「皆さま、ご準備、よろしいでしょうか?」
「いいわよ」
「オッケーでーす」
「……」もはや言葉も出ない。
「それでは、出発いたしまーす!」
メイメイが片手を高く上げ、振り下ろすと同時に、モノレールは動き始めた。
ギリッギリッと音がしているのは、前方からロープで牽引しているからのようだ。進むにつれ、どんどん傾斜が上がっていく。一旦、頂点まで引っ張り上げて、後はその落差によって前進する仕組みのようだ。
まんま、ジェットコースターだよ!
おれは、手汗どころか、全身から汗が噴き出してきた。
ついに、頂点に達し、下り始めると、レールの先がどうなっているかがハッキリ見えた。
えっ、ええっ、どうして、左右にカーブしたり、スパイラルしたりしてるんだよー!
「ひえええええええ~っ!」




