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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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091 蘇る記憶

――十二枚の漆黒の翼を広げて、金色に輝く天使と対峙するアーク(ルキフェル)の姿が私の目に映る。


……確かヘルネストたちを追うため王城に向かっている最中だったはずだが、今は暗く冷たい大きな部屋で二人の天使と言い争いをしている。


「ルキフェお兄様、そこを退いてください。お兄様はサタナルに騙されているだけです。きっと、今戻れば我が主も許してくれるはずです。……ですが、もしここで、そいつの味方をするようなら容赦はしません」

「待ってくれ、ミゲイル。何か誤解をしている、サタナルは私に付いてきただけで何も悪くない。むしろ私の方が彼女をかどわかし、魔界に堕天させた張本人なんだ!」


ルキフェルは二人の天使の前に立ち私を庇うように両手を広げていた。


自らの罪を告白して(サタナル)の無実を訴えるが、二人の天使はそれすらも私の甘言に騙され踊らされているだけだと一蹴する。


もはや話し合いでは解決できないと思った私は、ミゲイルとケビエルに対峙するためにルキフェルを下がらせようと肩に手を置こうとした――


そのとき、ミゲイルが激高して斬りかかってきた。


「その汚らしい手でお兄様に触れるな!!」


ミゲイルは神から授かった神剣レーヴァテインを振り上げて猛然と詰め寄り、一気に私を目がけて振り下ろす。


それに対して私は万物変化魔法で目の前の大気を硬質化して防ごうとした。


しかし、神剣レーヴァテインはミゲイルの神気を万物を燃やす神炎に変えて、大気を燃やし尽くし、そのままの勢いで私の頭上に迫る。


神剣の力を侮った自分に舌打ちしたくなるのを堪え、すぐに愛用の神銃アクケルテを抜いて防ごうとした。


――突然、肩を掴まれ、後ろに引かれる。


大きく体勢を崩した私は受け身も取れず、腰を強く打ちつけ鈍い痛みが走った。


すぐに起き上がり追撃に備えようとしたとき、ミゲイルに斬りつけられるルキフェルの姿が目に飛び込んできた。


ルキフェルは斬撃で左半身を斬り落とされ、そこから大量の神気があふれ出していた。その姿に血の気が引き、顔が真っ青になる。


想像を絶する苦痛の中で、ルキフェルは残された右手をミゲイルの背中に回して抱き寄せると「愚かな兄を許してほしい」と呟く。


そして、ゆっくりと顔を上げて、口元を押さえ震えるケビエルに視線を向けて「これからも妹を支えてほしい」とお願いする。


――最後に私の方を向き「後は頼む」と告げ、悲しく微笑むと、「先に逝く自分を許してほしい」と口だけを動かした。


すべて伝え終えたルキフェルは満足そうに頷くと、残りの神気を振り絞り空間を切り裂き、ミゲイルとケビエルを神界へと送った。


もはや半分以上が崩れ去り、神気となって宙に消えていくルキフェル。


悲痛な光景を何もできず見つめる私に、最後の力を使って声をかけた。


「……君が、……死ななくて、よかった」


――そして、優しく笑って消えていった。





(きおく)から目覚めた我は、こちらに矛先を向けるケビエルから我を庇うように立つアーク(ルキフェル)の肩に手を置き、後ろに下がらせる。


そして、拳銃を抜いて構えると、これ以上アークを困らせるなとケビエルを睨む。


「おい、ケビエル、いい加減にしろ。貴様たちの誤解がルキフェルを死の直前まで追い込んだことに、なぜ気づかない。そして、また同じ過ちをしようとしている」

「ふざけるな! サタナル、お前の戯言に貸す耳などない!」


我の忠告を一切聞こうとしないケビエルに溜息を吐きたくなるのを我慢する。


ルキフェルが、なぜ魔界に堕ちたのか理由を話そうとしたとき、突然、上空からミゲイルが現れて斬りかかってきた。


――どうやらミゲイルも人間を守護するために人界に顕現したようだ。


守護する人間と一体化して受肉していた。加えて、依り代になっている人間との相性がいいのか天使としての力を遺憾なく発揮している。


ミゲイルが振り下ろす神剣を、(われ)が銃身で受け止める。その隙を突いてケビエルが、我の心臓を目がけて神槍を突き出した。


だが、とっさに割り込んだアークがショートソードで弾き返すと、我の隣に立つ。


「お兄様、なぜ邪魔をするのですか!? そいつは我が主の敵で、お兄様を騙して魔界に堕とした大罪人です!」

「そうです、先輩。どうか目を覚ましてください。ようやく我が主からも罪を許され、再び天界に戻ろうというのに、なぜそいつを庇い罪を被ろうとするのです!」


ミゲイルとケビエルが我の隣に立つアークに神の意向を無視して、再び魔界に堕ちるつもりかと訴える。


その言葉にアークは首を横に振り、自分はルキフェルではなくアークであり、大事な友人――フォルテを助けたいだけだと二人に返す。


「何を言ってるんですか、お兄様。確かにアークとして生まれ変わりましたが、その魂はお兄様のままです。そして、悪魔に憑かれたフォルテには同情しますが、その呪われた運命から解放するのも救いになるはずです」

「そうです、先輩。サタナルに憑りつかれたフォルテは、いつ人界を脅かす存在になるか分かりません。今、ここで罪を犯す前に天に還すことこそ救いになるのです!」


アークは二人の言葉を聞きながら、悲しげに首を横に振り、それでもフォルテを助けたいと呟き、強い眼差しを向ける。


その光景に既視感を覚えた我は、再びアーク(ルキフェル)がいなくなるのではと焦燥に駆られ、こめかみに銃口を当てて叫ぶ。


「二人とも、もうこれ以上アーク(ルキフェル)を追い込むな! 我が魔界に還ればいいのだろう……。フォルテには悪いが、お前たちの望み通り今から還ろう」


魔界に還るために依り代であるフォルテの命を絶とうと引き金に指をかけようとした――その瞬間、いきなり背後から手を掴まれて拳銃を奪われる。


突然の出来事に焦りながらも振り返ると、空間の隙間から手を伸ばし我の手を掴むベルゼガが目に映る。


「貴様、一体どういうつもりだ!」

「貴様とは酷いな、一応、貴女は私たちの王なのだからお守りするのは当然でしょう」


我を一瞥したベルゼガは興味なさげに奪った拳銃を投げ捨て、ミゲイルたちにフォルテを殺すのは止めた方がいいと忠告する。


そして、(われ)が訝しげに睨んでいることに気づくと、肩をすくめて理由を説明する。


「本当は話したくないんですが、仕方ありませんね。今、フォルテを殺すと魔界と人界を繋ぐ門が消滅して、二つの世界が一つになり、何が起きるか分かりません。運よく道が繋がるだけかもしれませんが――恐らくは二つの世界を構成する時間や現実の整合性が大きく崩れ、両方の世界そのものが崩壊するでしょう」


ベルゼガ曰く、フォルテは大規模な魔族召喚魔法の媒介にされたが、一度目はアークが身代わりとなってしまった。


我との繋がりが強いアーク(ルキフェル)が媒介になった召喚魔法は、本来なら召喚できない強大な魔神気(ちから)を持った我を強引に人界に呼び出したらしい。


その結果、魔界と人界を繋ぐ門は、大きな損傷を受けて存在を維持するのが難しくなった。


しかし、媒介となったフォルテをエネルギー供給する装置に代用することで人界の魔力を受け取り、何とか存在を保っていると話した。


「――――というわけで、今、フォルテに死なれるとワタシが愛する魔界が崩壊して、神界だけが残るといった面白くない結果になるんですよ」


ベルゼガは神界だけが残る結果だけにはしたくないと忌々しげに我を睨んだ。


だが、すぐに恍惚とした表情を浮かべ、アークに視線を向けると、恭しく頭を下げて別れの言葉を口にする。


「ワタシが愛するルチーフェ……。未だ記憶が戻らず天使どもの虚言に騙されて、本当の記憶も目的も思い出せない可哀想な愛しきワタシの親友。今回は無理でしたが、必ず本当の貴方に戻ってもらい、真の魔界の王として君臨してもらいます。それまで、どうかご壮健で……」


ベルゼガが淫猥に微笑むと突然、ミゲイルとケビエルが詰め寄り、斬りかかろうとした。


しかし、そんな彼女たちの行動を嘲笑うかのように、ベルゼガは空間に隙間をつくると、別の場所へと消えていった。

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あと、「呪術と魔法は脳筋に ~魔族から人間に戻りたいのに、なかなか戻れません~」という作品も投稿していますので、読んで頂けたら、なお嬉しいです。<(_ _)>

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