009 スカイと一緒に
もう、そろそろ限界かもしれません。
明日か、明後日か、隔日の投稿したいと思います。
本当にすいません<(_ _)>
竜星杯に出場すると決めてからは生徒会の仕事を抑えて、放課後はスカイと一緒に自主練習をするようになった。
サラ先輩に竜星杯の出場のことを話すと生徒会のことは気にせず、大会に備えて頑張ってほしいと応援してくれた。
今日も校舎裏の訓練場でスカイと一緒に模擬戦をしている。
武器は刃を潰した訓練用の物を使い、大会前なのでお互いに怪我をしないように気をつけてはいるが、つい熱くなってしまう。
スカイが長身を活かし間合いの外から連続で槍を突き出す。
それらを余裕で躱し続けタイミングを掴むと、槍を引く瞬間を狙い、一気に詰め寄り、鳩尾にショートソードを当てる。
俺が一本取ったことで互いに距離を取る。構えを解いたスカイが、悔しそうに話しかけてきた。
「くそ、また、1本取られたな。よくそんなに動けるな」
「まぁ、俺は魔力が少ないから、なるべく強化魔法を節約して自力で動けるようにトレーニングをしてきたからね」
俺は前世の記憶を思い出してから、ずっと忍びのころに行っていた過酷な訓練を行っている。
魔法があるこの世界では至近距離で戦う技術があまり発展していない。
さらに人間同士で戦うよりも魔物相手に戦うことが多いため、対人戦闘はそこまで重要とされてこなかった。
とはいえ、戦争が無いわけでないので、それなりに発展はしている。
ただ、その内容は身体強化魔法で懐に飛び込み斬りつける――全くと言っていいほど洗練されていないものだ。
この五年間で新たな属性魔法が発見されてからは、さらに接近戦を行う者は少なくなった。
十メートル以上距離をとったスカイが槍を構えると、こちらに向けて勢いよく突き出す。当然届くわけはない。
だが、スカイの槍の穂先から鋭い魔力の塊が放たれて、凄まじい速さで迫ってくる。
――そう三年前に発見された魔法……無属性魔法を使って、スカイが刺突を飛ばしてきた。
俺はとっさに身体を捻って避ける。スカイはニヤリと笑って、連撃を飛ばす。
体勢を崩した俺は、地面を転がり起き上がる。次々と飛んでくる攻撃を後方に倒れ跳んで回避すると、そのまま地面に手をつき、回転して避け始める。
いつまでも攻撃が当たらず焦れたスカイは、槍を横薙ぎに払うと、鎌鼬のような斬撃を放つ。
すぐに俺は回転を止めて、地面に手をつけると魔法を発動した。
「土壁 (ウォール)」
人一人が隠れるほどの壁を地面から出現させると斬撃を防ぐ。
ガンッと音がすると同時に、飛び出した俺は地を這うように迫る。その動きを予測していたスカイは、槍を構えて迎える。
体勢を低くして迫る俺にスカイは槍を思いっ切り引いて突き出そうとする。だが、走りながら地面に手を触れて魔法を仕掛ける。
「土槍:微 (スピア)」
スカイの足下がわずかに盛り上がり、体勢を崩そうとするが、スカイは強引に踏み込み土塊を踏み潰すと刺突を繰り出す。
一瞬の隙を作り出した俺は、下半身に強化を集中して一気に詰め寄った。
目の前に迫る穂先を前方に倒れ込むように避けると、地面を転がりつつも、すぐに起き上がる。
渾身の突きを避けられ体勢が大きく崩れたスカイの背後に回ると、そっと首筋にショートソードを当てた。
「まいった、俺の負けだ。相変わらず器用な戦い方をするな、走りながら魔法なんて、普通は発動できないぞ」
両手を上げ降参する仕草をしながら、スカイが溜息混じりに呟いた。
「それを言うなら、スカイだってあんなに連続で無属性魔法を展開するなんて、誰もできないよ。一回発動したら――ある程度は溜めを作る必要があるのに、あのスピードが異常だね」
首に添えられたショートソードを戻し苦笑いを浮かべながら答えると、二人で地面に座り込む。
呼吸を整えながらも、互いに模擬戦の感想と反省点を述べ合った。
王国を守護する騎士の中でも魔物討伐のために結成された第三師団への入団を希望しているスカイは最近、めきめきと実力をつけてきている。
とくに無属性魔法を使うようになってからは、手がつけられない程に強くなった。
もともと魔力は多かったが、魔力操作が苦手で発動する前の属性変換に手間取り、魔力と時間を大幅に使っていた。
だが、無属性魔法は属性変換が不要なためスカイに合っていたようだ。
魔力を溜めて放つという一見単純にみえて、実は複雑な作業を何度も繰り返すことで、素早く無意識に行えるようになっていた。
持って生まれた才能と努力が、スカイをここまで強くした。
高等部になり武術の授業でも魔法を使えるようになったら、スカイに抜かれてしまうだろう。
だが、親友が夢に向かって強くなっていくことが、心の底から嬉しくて応援したいと強く思った。
◆
――魔法ありの模擬戦なら俺の方が有利と思ったが、なかなか勝たせてくれない。
地面に座って色々とアドバイスをするアークを眺めながら、思わずぼやいてしまう。
アークとは小さい頃からずっと一緒だった。
年齢が一緒でカインズ公爵家の寄子であるガンブルク侯爵家の次男として生まれた俺は、ジークともどもよく公爵家を訪れていた。
小さいころは大人しいアークは、ジークとばかり話していたが、ミューズネイト学園に入学する前ぐらいから積極的に俺とも話すようになった。
運動が得意な俺と勉強が好きなジークは双子だったが、あまり反りが合わなかった。
そんな俺たちの間を取り持つようにアークは、いつも気にかけて色々とお節介を焼いてくれた。
運動が苦手なジークには体を動かす大切さや楽しさを伝え、勉強が苦手な俺には一緒に本を読んだり問題を解くコツを教えてくれた。
そのおかげでミューズネイト学園に入学してからは、ジークとも普通に話せるようになった。
宿題を教えてもらったり、一緒に運動を楽しんだりと兄弟の仲を深めることができたのは、アークのおかげだ。
楽しそうにアドバイスを送るアークを見ながら、昔のことを思い出していると、遠くからジークが手を振り歩いてきた。
「二人ともお疲れ様。まだ、訓練は続けるのかな? もし終わりなら一緒に帰らないか」
ようやく呼吸が整った俺は、少し体を動かし、まだ余裕があることを確かめるとアークに尋ねる。
「どうする、アーク。もう少し続けるか?」
「いや、もうヘトヘトだよ。スカイは本当に元気がいいね、羨ましいよ」
その言葉に肩をすくめ立ち上がると、土埃を払う。
まだ起き上がれずにいるアークに手を差し出すと、苦笑いを浮かべながら握り返される。その瞬間、思いっきり引っ張った。
突然、強引に起こされたアークは、たまらず俺にもたれかかり胸元に顔を埋めると同時に、「キャー!」と校舎の方から女たちの悲鳴が聞こえてきた。
ジークを見やると、やれやれと首を横に振って溜息を吐いていた。
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また、「呪術と魔法は脳筋に」という作品も投稿していますので、読んで頂けたら嬉しいです。




