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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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041 ルキフェルの記憶

連日、投稿、つらい……

私はミゲイルの目を通して、白銀に輝くオーラに包まれたアッくんを見ている。


度重なる守護神霊(・・・・)との一体化で私は、意識を失うことなくミゲイルと意思を共有できるようになった。


『ミゲイル、アッくんに翼が生えたけど大丈夫なの!?』

『はい、問題ありません。私に触れたことで天使の力の一部を取り戻したのです。あの白く輝く美しい白銀のオーラを見るのは何億年ぶりでしょう……』


ミゲイルは目に涙を浮かべて、白銀に輝くアッくんを恍惚の表情で見ている。


一体化したミゲイルの気持ちは、私の心の中にも流れ込んできて、アッくんに愛情以上の特別な感情を呼び起こす。


そして、ミゲイルの兄である熾天使ルキフェルとの記憶も頭の中に流れ込んできた。



――――――――――



「ルキフェお兄様、今日も鍛錬に精が出ますね」


私は神樹ユグドラシルの下で鍛錬をするお兄様に声をかける。


白き神剣を舞うように振るうお兄様の姿は、我が主に祈りを捧げる演舞のようで、私をはじめ大勢の天使から羨望の眼差しを集めている。


今も神樹を遠巻きに囲むように多くの天使たちが、お兄様の鍛錬する様子を見ている。


「ミゲイルか、お前も鍛錬をしに来たのか?」


お兄様は鍛錬を止めて私に近寄り、何か用があるのか尋ねる。神樹を取り囲んでいた天使たちは、お兄様が鍛錬を止めたと分かり各々の職務に戻っていった。


そして、神樹の下には私とお兄様の二人だけとなった。


「すいません、特に用事は無かったのですが、近くを通ったので声をかけてしまいました」

「いや、気にすることはない。私の方こそ、すまなかった。私たちは、兄妹なのだから声をかけるのに理由は必要ない」


理由もなく声をかけ鍛錬を止めてしまった私を、お兄様は頭に手を置いて優しい眼差しで見つめた。


思わず、その光り輝く星空のような瞳に魅入ってしまい、不覚にも我を忘れてしまう。


私の様子がおかしいことに気づき怪訝な表情を浮かべたお兄様は、じっと見つめて小さく頷く。


そして、いつもの優しい顔に戻り頭を撫でると、私を白銀のオーラが包み込み、温かく力強い何かが流れ込んできた。


「ミゲイル、少し疲れているようだ。私の神気を分けてやろう、これで少しでも元気になれば良いが……」


お兄様の力強くも慈しみに溢れた神気がゆっくりと私の体に染み込んでいき、身も心も癒していく。


我が主に次ぐ強い神気を渡された私は体中が熱くなり、不甲斐なく、へたり込んでしまった。


「大丈夫か、ミゲイル? 少し神気を渡し過ぎたか、立てるか」


お兄様は地面に座り込んだ私を見下ろすと、苦笑いを浮かべて手を差し伸べる。


私は救済の手を差し伸べるお兄様を見上げると、十二枚の翼を広げ白銀に輝くお姿に再び、目を奪われて惚けてしまった。



――――――――



ミゲイルの記憶(ゆめ)から目覚めると、目の前に心配そうに私を見つめるアッくんの姿があった。


その顔は、ミゲイルを心配そうに見るルキフェルの顔そのもので、先ほど見た記憶(ゆめ)を思い出させる。


「大丈夫、サラ? それとも、ミゲイルかな?」

「ええ、大丈夫よ、アッくん(・・・・)


私が無事を伝えると、安心したのか大きく息を吐き、腰を下ろした。


私もアッくんの隣に座り、先ほど見たミゲイルの記憶のことを話して、アッくんに翼が生えた理由を説明した。


「なるほど、そういうことか。けど、正直、何か特別な力に目覚めた覚えはないけど」

「そうだにゃ、アーたんに翼が生えたときは驚いたけど、すぐに消えたにゃ」


ミザリー先輩の話だと、ミゲイルと一体化した私に触れたアッくんは、白銀に輝き翼が生えたが、すぐに元に戻ったとのことだ。


周囲の観客たちも一瞬のことで、何が起きたか分かっていないと思うと教えてくれた。


「そうですか、一瞬ですか……。わざわざ説明して貰って、ありがとうございます、ミザリー先輩」

「気にすることないにゃ、大事な旦那さまのことだから、当然にゃ」


ミザリー先輩が何かとんでもないことを言い出した。私は再びミゲイルと一体化して粛清しようとする。


けれど、アッくんがやんわりと否定したので、とりあえず処分保留とする。


「ミリー、揶揄わないでくれ。俺はまだ、誰とも付き合うつもりはないよ」

「けど、そのうちするにゃ。その相手は私にゃ、決まってるにゃ」


ミザリー先輩が器用にも起きながら、寝言をほざいている。アッくんと結ばれるのは聖女である私であり、それは神が決めたことだ。


それにさっき、アッくんが言った言葉を聞いてなかったらしい。アッくんは「俺はまだ、(サラ以外の)誰とも付き合うつもりはない」と言ったのだ。


ミザリー先輩は獣人のくせに耳が悪いらしい……その四つもある耳は飾りか!





何故かサラとミリーが険悪な雰囲気となり、俺を挟んで睨み合っているが、勘弁してほしい。


俺は決勝トーナメントで対戦するかもしれない出場選手を偵察するために来たのだ。


このままだと、二人に振り回されて何も見ることなく予選トーナメントが終わってしまう。


俺はトイレに行くので席を外すと二人に伝える。


すると、何故か二人とも付いてこようとしたので、何がしたのか尋ねたら声を揃えて「手伝いたい」と言った。


トイレを手伝ってもらう年齢ではないし、正直、少しの時間だけでも一人になりたい俺は、すぐに戻るから待っててほしいと懇願して解放してもらった。


トイレに入るとアイムさんに頼んでおいた狐のお面を被り変装をする。


東洋連合国から取り寄せたお面は、前世で神楽のときに付けていた狐面そっくりで、口元を出している以外はほぼ同じだった。


全身を黒装束で身に包み、狐のお面を被りトイレを出ると、俺はサラたちとは反対側の観覧席に腰を落とし、予選トーナメントをじっくりと観戦した。

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最後に「呪術と魔法は脳筋に ~魔族から人間に戻りたいのに、なかなか戻れません~」という作品も投稿していますので、読んで頂けたら嬉しいです。<(_ _)>

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