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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第三章 覚醒編
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実は通訳大活躍

●14 実は通訳大活躍


 おれの言葉に、マッカーサーは眉ひとつ動かさない。


「どういうことかね? 言っておくが私は軍人だ。共産主義者のようなくだらない議論はしたくない」


 思いのほかガードがかたい。

 まあ、こういう時代の軍人って、そうだよね。


 それに、今は捕虜として軟禁されている身分だから、身がまえるのも無理はない。まずは心を開いてもらわないと……。


 おれたちのそばで、少し控えてすわっている通訳に目をやる。

 しっかり伝えてくれよ……。


「おれはこの戦争を終わらせたいのです」

 通訳は必死に言葉を選んで説明している。


「……おかしなことを言う」

 ふっと笑う。

「君らが始めた戦争だろう?」

 マッカーサーはにべもない。


「こうなったのには原因があります。閣下もよくご存じでしょう」

 おれは身をのりだす。


「そもそもは日露戦争のあと、日本がそのまま中国にいすわったことから貴国とは仲が悪くなった。しかし、日露の開戦当時は、どんどんやれ、面倒は見てやる! そんな感じでしたよ」


「……」


「もちろん、いすわったのにも理由がありました。日本の払った犠牲はあまりにも大きく、賠償金ももらえない。それくらいしなければ、日本の国民が納得しなかったからです」


「私が駐日アメリカ大使館づきの武官として来日したのは、日露戦争が終わった1905年10月のことだ。そのころのことも、その後のことも、もちろんよく知っている」


「そして1931年、満州事変がおこった」


「満州に傀儡国家を建てるなんぞ、まさに前代未聞だったよ。世界中が君らの動きに眉をひそめる中、しかも植民地の自立を英国ですら認めようという機運の中でな」


「そのとおりです」


「君は――!」

 いらついたのか、マッカーサーが声を大きくする。

「君はいったいなにが言いたいんだミスタナグモ! この私に懺悔でもしたいのかね?」


おれは首を振る。


「おれは歴史は連続している、ということを申し上げているのです。そして戦争の始まりと終わりを決めるのは、軍でも政治家でもなく、世論だと言うことです」


 おれって社会の先生だから、そういう視点はおてのものだ。

 今はそれが南雲ッちの胆力でおれの口から放たれている。


「そこからの歴史もまた、連続した流れで築かれていった。アメリカは日本に禁輸措置と資産凍結、逆切れした日本は真珠湾を攻撃、かつ南方の資源をぶんどりまくり。マレー、インドネシア、シンガポール……そしてあなたのフィリピン」


 ぴくっとマッカーサーの顔ひきつる。

「もういい!」


「そしていま、アメリカは怒っている。当然でしょう。実力があるのに東洋のジャップにコケにされた。これは痛い目にあわせてやらないと気が済まない。時を稼いで挙国一致の工業力と科学力で兵器の大量投入を行い太平洋で制海権を得て、次は島々を攻略、最後は本土空襲、民間爆撃、日本人はみなごろし」


「もういちど言おう。諸君らが始めた戦争だ」


「ご存じとは思いますが、英国とはすでに停戦和議がはじまっています」

「合衆国はちがう」

 おれとマッカーサーは睨み合った。

 通訳はふるえあがっている。


 沈黙のあと、おれはため息をついた。

「でも、そうはならないんですよ閣下。アメリカが時を稼ぎ、空母やF6FやB29や潜水艦や、そういう兵器を大量に作って反撃することは絶対にできない。なぜだと思います?」


「わからん。なぜだね?」

「今の大日本帝国には、この、南雲忠一がいるからです」

「……ふっ」

 マッカーサーがポケットから刻み煙草を取りだし、火をつけた。

 吸い込んで、煙を吐く。

 通訳がたちあがり、灰皿を持ってやってくる。


「……南雲提督がこれほどのうぬぼれ屋とは」


「いいえ閣下、真実です。これからそのことをお話しましょう。そしてわれわれがとるべき道をね。人類の未来と世界の平和に対する責任について、ご相談したいのです」


「……」


 さて、ここからが真剣勝負だ。

 過去と現在の話は簡単だ。

 なんといっても、それは事実だから。


 今の世界情勢なら、マッカーサーでなくても新聞ていどの情報さえあれば誰でも知っている。


 それがたとえ、偏見に満ち、事実が正しく伝わっていなくとも、たしかな現実があるなら、それを丁寧に積み上げていけば、なんとかなる。


 しかし、未来は……。

 未来はそうはいかない。


 未来は常に不確かで、人々の選択と偶然に支配されている。誰かがこうなると予言しても、次の瞬間、それはあやふやで気まぐれな白い霧のむこうに消えてゆく。


 だから、マッカーサーには、どうしても、このおれを信用してもらわないといけない。そしてそれには、人間と人間の、心の交流だけがそれを可能にするんだ。


「閣下、アメリカ合衆国が、今の戦況を逆転するほどの大量の兵器を実践投入するには、あと半年かかります」


「心配には及ばんよ提督。もうすぐ新空母群も続々と就航される。航空機は年間五万機以上だ」


「それでも半年は形勢逆転までにはいたらない。そして、この半年以内に、おれたちは原子爆弾という人類の未来をも左右する強烈で非人道的な爆弾を開発します」


「なに? アトミック……ボム?」


「原子爆弾はウラニウムという物質を分離濃縮することで製造できますが、この新型爆弾は一トンで火薬一万五千トンと同じ威力があり、さらに爆発後も放射能という人体を破壊しガン化させる放射線が何年も残留するという恐ろしいものです」


「なん……だと」


「閣下、これは嘘ではありません。おれたちはすでに国内にウラニウム鉱山を持ち、技術的問題も解決ずみです」


「……」


「さらに言うなら、これを貴国に投下するための、高高度飛行ジェットエンジン搭載、超大型爆撃機『富嶽』を、半年以内に実戦投入します」


「……そんな与太話を、私が信じるわけは無かろう」

 マッカーサーの額に、汗が流れた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] マッカーサー家はフィリピンの利権屋だから大陸権益が第一ではないけどね。 大陸権益第一なのはアヘン売買で財を成し、浙江財閥と関係が深いディラノ家。フランクリン・ディラノ・ルーズベルト。…
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