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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第六章 原子爆弾編
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敵艦隊発見!

●39 敵艦隊発見!


 昭和十七年九月九日。午後二時四十五分。


 空母赤城に、ついに敵艦隊発見の報が入った。 灰色の廊下を転がるように駆けてきた兵士が、おれの部屋の手前で足音高くたちどまり、手をついてはげしく喘ぐ。


 おれと山本さんは顔を見合わせ、立ち上がった。


 兵士のたてるけたたましい音は、声を聞かずとも用件を告げていた。


「南雲司令官に申し上げます! ただいま敵艦隊を……」


 開けられたままのドアを出て、おどろく伝令兵の肩を叩く。


「敵発見だよね、さんきゅー」

「委細承知、ご苦労ッ」

「は、はいッ」


 恐懼して敬礼する兵士を残し、おれたちは艦橋へとむかう。


「南雲くん」


 山本さんが階段への曲がり角でおれを呼び止めた。


「俺は大和と武蔵の件を大本営に具申してくる。今夜のうちには出発させたいからな」


「わかりました」


「あとのことは、任せた」


 おれは笑ってうなずいた。


 山本さんと別れ、最後の階段を上って艦橋に入る。 ドアの開く気配に、執務する兵士たちが、一斉に立ちあがる。 曇り空の広がる窓の明るさに、思わず目をすがめる。そこには海図を手に待ちかまえる大石がいた。


「お待ちしておりました」


「よくやった。みんな配置についてくれ」


「はッ」


 指令室の各員が、着座して自分の仕事に戻る。


「大石、敵はどこだい?」


「は。南緯二度、東経百六十七度、ナウル島の南方約六十マイル。同島第七五五空の中攻機が発見いたしました。敵艦隊の構成は空母六隻を含む二十隻あまりとのことです」


 おれは海図を受けとり、印が打たれたその海域を見る。


 ナウル島からほとんど直線に南に百キロほどの海域である。やはり思った通りだ。やつらは全艦隊のまま、裏口から侵入してきた。


 この海域からわれわれの艦隊までの距離は六百五十マイルほど。だとすると、すでに攻撃機が発艦していてもおかしくない距離だ。


 つまり、われわれの攻撃隊と彼らとは、この距離のどこかですれ違い、その後、ほとんど同時にお互いの艦隊を攻撃しあうことになる……。


 おれは壁に掛けられた時計を見る。


 午後三時前。


 もうすぐ夕暮れということは、夜になって決着がつかなければ、逃げられる可能性が高いということだ。戦いの勝敗とは別に、時間の制限がおれを悩ませる。さて、どうしたものか。


 思案するおれの顔を見て、大石が続けた。


「現在、敵を発見した中攻による雷撃が開始されております。ナウル島の他三機は現場急行中、われわれの攻撃機も一時間以内には到着、攻撃を開始いたします」


「なあ大石」

「なんでしょう?」

「この近くに零式司偵はいないか?」




 敵艦隊がわずか数キロ先の眼下に見えていた。


 六隻の空母は二隻づつ三列に並び、そのぐるりを多数の駆逐艦や巡洋艦ががっちりと取り巻いている。その典型的な輪形陣には、簡単には攻撃させないという、強い意志を感じさせた。


 第七五五海軍航空隊の一式陸攻一番機は、やるべき指令部への連絡を滞りなく行い、次の作戦へと士気を高揚させていた。


 隊長が麾下六名の乗組員全員を操縦席付近にあつめ、攻撃前の説明を行なう。


「いいか。これからが本番だ。一度しか言わんからよく聞け」


 操縦は副操縦士に任せている。背もたれごしに見る隊員たちはみな、押し黙って耳をすませていた。機内には時速三百キロで飛行する航空機のプロペラ音が、轟々と鳴り響いている。


「第三百二十二號の当機は、これより敵艦隊前方の高度三千より螺旋落下を行い、高度十で雷撃したあと、上昇して離脱する。交戦中は相当の揺れを覚悟しろよ」


「はッ!」


 それだけ言うと、隊長は前を向いた。すぐにエンジンがふかし、機体を傾ける。


 この中攻と呼ばれている一式陸攻は、もともとが敵基地への爆撃や、艦隊への雷撃を主目的につくられた。ゼロ戦などと同等の速力を持ち、戦闘機と協調して作戦行動を行う。


 しかし、一時的にせよ中攻だけになったこの航空隊は、今回のようなケースに備えて、独自の攻撃理論を生み出し、訓練を重ねていた。それが、さきほど隊長の言った螺旋落下を使った攻撃方法だった。


 螺旋落下で迎撃機を引きつけ、攻撃目標をわからぬようにして、駆逐艦などの間隙を縫い、敵空母へ八百キロの魚雷を発射したのち離脱する。そうすることで、敵の攻撃隊を巻き込み、いくぶんかは敵艦からの対空兵器をけん制することができる。


 搭乗員たちはそれぞれ銃座についたようだ。上部の銃座に身体を入れ、左右にあるスポンソンと呼ばれるガラスの半球を開き、下部と尾部の銃座についてベルトをきつく締めなおす。


 一式陸攻の搭乗員たちはなんでもこなした。誰もが操縦が出来たし、電信も打てる。そういうふうに、日ごろから訓練を繰り返してきた者たちだった。


 突然、後方の搭発員が叫んだ。


「尾部に敵襲ッ!」


 いったんは艦隊から離れたように見えた日本の中型機が、突如機首をひるがえし、接近する構えを見せたため、米軍の直掩機たちが迎撃に転じたのだ。


 スロットルを戻すと同時に操縦かんをひねり、機体をぐっと傾ける。


 落下のGが激しくのしかかってくる。尾部につこうとしている敵機に、脚で操作する二十粍機銃が火を噴く。


 ガンガン、ガンガンガンガンガン……!


 敵機が上方に流れると、こんどは上部銃座の七・七粍が発射をはじめる。


 ガガガ、ガガガ、ガガガガガ!


 敵機は被弾せず飛び退ったが、別の方向からあらたな敵がまとわりつき、雨のように激しい銃撃を浴びせてくる。


 数機が、周囲を取り巻こうとするたびに、一式陸攻は高度を一気に落として旋回した。螺旋落下だ。追いすがる敵機は、曳光弾を虚空にむなしく放つ。


 操縦士は全速で旋回しながら徐々にその輪を小さくしていく。高度を連続的に下げ、ついにナウル島の離陸時に合わせた高度計が、ほぼゼロを指す。


 海面から数メートルという超低空飛行となって、わずかに駆逐艦から頭を出した一隻の空母に狙いを定め、水平に機体を安定させる。


 艦隊との距離は約三千だ。


 案の定、巻き込まれた形の敵機は、いまだに十機ほども追いすがり、上空から銃弾を撒き散らしてくる。これでは艦隊からの対空攻撃は手が出せないはずだ。


 だが、雷撃には千ほどに近づく必要がある。ここからが勝負なのだ。


 そのとき、真正面から三機のグラマンがこちらに向かって突撃してきた。白波の立つ海面近くまで高度を落とし、こちらに針路を合わせてくる。


 隊長は機銃を放ち、敵もほぼ同時に呼応する。


 ガガガガガガガガガガ!

 ダダダダダダダダダダ!


 中型攻撃機は重い。


 戦闘機のようには器用に水平移動もきりもみもできない。


 躱すとすれば重い図体を斜めに倒して上空を目指すくらいだが、そうはしたくない。


(撃たれる!)


 隊長がそう思ったとき、上空から曳光弾が降り注ぎ、グラマンF8Fのキャノピーを射抜いた。


 ダダダダダダダダダダ!

 バキン!ドドーン!


 キャノピーを撃たれた一機は海面にぶつかりもんどりを打つ。


 あわや激突しそうになり、隊長は左へ機体を傾ける。


(誰だ?!)


 そう思わず上を見あげると、仲間の一式陸攻がその巨大な翼をバンクさせて飛んでゆくのが見えた。


(おお、来よったか!)


 ふたたび右に倒し、重い機体を水平にもどす。敵機は遠ざかり、艦隊の対空砲火が激しく鳴る。


 ボンボンボンボン!


 榴弾の破片が機体を打つ。しかしこうなったら構ってはいられない。


「よし! このまま行くぞ。雷撃用意!」

「ちょい右」

「ヨーソロー」


 艦隊が近づく。


 正面を横ぎる空母が標的だ。駆逐艦の甲板にいる兵士の顔がわかる。蝟集しているぶん、どれでもよければ狙いは簡単だ。しかしできることなら空母をしとめたい。


「ちょい左!」

 隊長の意思が通じたように、狙う副操縦士が短く言う。隊長はわずかに操縦かんを左に切る。


 だがその瞬間、至近距離で高角砲が爆裂した。


 ドーン!


 ざあっと榴弾をかぶる。なにかが身体に突き刺さるが、気になんてしてられない。


ェェェェェェェェッ!」


 隊長は水雷の投下レバーを押しこんだ。



ついに敵発見です。ナウル島の一式陸攻が意地を見せますが、首尾やいかに?ご感想、ご指摘にはいつも励まされております。ブックマークをよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一式陸攻の雷撃は生き残りが少ないのですよね。 高橋淳さんが例の超低空飛行の生き残りですが、ペラが海面を叩く程の低空を飛び、雷撃して生き残ったそうです。 髪の毛一本以下の運命の違いが生死を分…
[一言] 日付をミス
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