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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第六章 原子爆弾編
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熾烈な防戦

●16 熾烈な防戦


 山本五十六率いる艦隊は、一気にあわただしくなった。


 敵の戦法は、こちらの戦闘機をおびき出して叩き、その間に、別方向から山本艦隊を襲撃するというものだった。


 さらに今は直掩機のほとんどが出払って、艦隊の防衛は手薄になってしまっている。


「戦闘機は何機残っているか」


 山本は航空参謀にたずねる。


「出撃した戦闘機は第一次攻撃隊に十二機、迎撃隊に二十一機。直掩に残ったのは九機。いまだ空母に待機せるは七機であります」


「うむ、ただちに発艦して警戒にあたれ」

「はッ」


 どう考えても戦闘機が足らない。敵は空母三隻で、それだけの有利がある。しかも報告によれば新型機を投入してきており、飛行士の練度も高いようだ。艦隊戦が消耗戦だという意味が、ようやくわかってきた。


 だが弱みを見せるわけにはいかない。なんと言っても、自分は太平洋連合艦隊司令長官だ。


「電探に反応!右百五十度、距離五十、機影三十」


「別方向からも来たか」


 海図にすぐさま敵機の位置が記されるのを見て、なるほど、艦隊戦をやっている司令官とは、忙しいもんだな、と山本は思った。


 軍隊においては各人が割り当てられた役割を精一杯にこなす。しかし、部下はいずれもその一部を分担するだけで、総合的な判断をするのは参謀以上の人間に限られる。特に司令官はフルに頭脳を使って、持ち駒を最適の場所に配備していかねばならない。


(これは角落ち将棋だな)


 手駒の足らなさを、山本はそう感じた。


「第一次攻撃隊を呼び戻せ。それと航空参謀、爆雷を積んでいない攻撃機はあるか」


「十機ほどあります」


「ではそれも戦闘機に続いて発艦させよ」


「はッ」


 この龍驤と隼鷹の攻撃隊はすべて新型天山だ。


 後方機銃しかないこの機は、しかし馬力がありやすやすとは墜とされない。追いかけさせ、後方機銃で狙う戦法が効果的だと、これまでの空戦報告書にも書いてあった。山本は一度読んだ報告書はすべて頭に入っている……。




 こちらは坂井率いる第一次攻撃隊だ。


 最初の混乱は過ぎ去り、なんとか落ちつきは取りもどせた。だが戦況が不利なことに変わりはない。


 雷撃機は戦闘機の掩護なしではなかなか近寄ることは出来ず、まだ戦闘機隊は敵機と五分の勝負をつづけている。


 バババババババババ!


 飛来する敵機は速く、しかも上昇性能が極めて良い。


 坂井は空域を離脱しては、天山を狙う敵機の背後から一撃離脱でしとめようとするが、そのたびに別の敵機に狙われてあやうく離脱する。


 こうなったら、すこし危険だが思い切って空母への攻撃を決行するしかない。数にまさる敵戦闘機と長く空戦をやり続けるより、友軍機にはさっさと攻撃させてしまおう。


 機首を眼下に見える巨大な艦隊に向け、スロットルを押しこむ。翼をふって合図を送ると、列機もそれに続く。


「坂井隊、機銃による攻撃を行う。目標、敵空母」


 無線を送っておいて、攻撃の隙を狙う。広い空では、どうやったって万全の弾幕は無理だ。巡洋艦や駆逐艦の数は多いが、隙はかならずある。敵機がいなくなるタイミングで、突撃を行う。


 プロペラの轟音が鳴り響く。


 後方の上空から敵機が飛来するのを目に捉える。


 少しだけ速度を緩め、宙返りしながら機銃を放つ。


 ガガガガガガガガ!


 敵機が横転して飛び去る。その隙に操縦かんをぐっと押しこんだ。


「いくぞ!」

 翼を振る。


 まずは艦隊の一番手前の駆逐艦を目指す。雷装の天山攻撃隊はそれを見て、坂井たちに追随する。


 高度を下げ、水面に近づく。周囲を見て敵機がいないことを確認する。よし、今なら大丈夫だ。


 海面がみるみる近づく。


 高度はすでに三百メートルだ。さらに高度を落としてく。


 そのまま滑るように飛び、駆逐艦が目の前に迫ったところで、機首をぐっと持ち上げる。


 軽く駆逐艦を一撃する。


 ガガガガッ!


 何人かの兵士が頭を下げる。その間砲撃は止む。


 そのまま空母へ……。


 ドンドンドン!

 ババババ!


 黒煙が一発、至近距離であがる。反射的に左へ避けるが、榴弾の破片が翼を撃つ振動がある。


 なにか違和感を感じるが、今はかまっていられない。


 ボンボンボンボン!


 新型空母からも対空砲火があがる。


 曳光弾を読み、軽くバンクさせながら十二・七粍機銃を砲撃手にあびせる。


 ガガガガガガガガ!


 空母の砲撃手に血しぶきがあがる。


 そこから先は天山の仕事だ。大きくバンクして上昇する。


 宙返りして下を覗くと、雷装の天山が一機、黒煙をあげて墜とされるのが見える。もう一機の天山が水雷を切り離している。


 旋回して周囲に注意を払う。


 黒煙があがり、高角砲の弾幕があがっている。


 やはり、なにかおかしい。


 なんだ?


 あれはまるで……まるで……。


 バッバッバッ!


 また黒煙があがる。


 しかしそれは同じ距離で弾幕が広がる高角砲とは違っている。


(近接信管だ!)


 坂井は衝撃を受けた。


 高角砲の黒煙は通常同じ時限信管なのでほぼ同じ距離で爆発するはず。なのに今回の黒煙はあまりに少なく、敵がいないところでは爆発していない。だから違和感を感じたのだ。


 それに、この特徴はよく知っている。わが帝国海軍が先だって開発し、海戦において圧倒的な威力を示したあの近接信管に似ているのだ。


 ただし、精度はあまりよくない気がする。


 近接信管は跳ね返ってくる電波で敵を見つけて自動起爆する仕組みだが、その肝心の敵を察知する反応が鈍いのかもしれない。ほとんどの砲弾は爆発しないか、あるいは反応が遅く通り過ぎているかに見える。


 しかも巨大な砲台には、ちゃんと兵士がつきそって発射している。つまり、帝国の兵器のように、電探連動射撃ではない。


 だが、それでも、ほとんど当たらないと甘く舐めていた高角砲の時代は、もう終わったのだ。


 坂井はすぐさま無線を送る。


「こちら坂井。全機警戒せよ。敵空母の高角砲は近接信管だ。繰り返す、敵に近接信管あり!不用意には近づくな」




敵にはさらなる新兵器。そして防戦一方の艦隊。とうとう空母にも攻撃がはじまってしまいました。 ご感想、ご指摘にはいつも励まされております。ブックマークをよろしくお願いいたします。

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[一言] 負けてる国なのに開発力早すぎません?余力がないうちはともかく生産性を上げるの重視で開発スピードは遅いと思うのですがまだ2年目に入ってないときはアメリカも戦力足りないのにさらに負けこんでいる現…
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