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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第六章 原子爆弾編
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敵影見ゆ

●15 敵影見ゆ


 坂井の場違いの歌を聴いて、疾風の搭乗員たちはようやく落ち着きを取りもどした。


 漫然と追いつこうとしてダイブしては、機体が耐えられる限界を超えて引き離されるのは得策でないことに、みんなが気づき始めた。


 そして気づけば、いずれも熟練の飛行士ぞろいだ。対応は早い。追わずに上空で待ちかまえる戦術へとそろって移行していく。


 ただし、上空には重い雲が垂れており、高度三千五百より上では空戦が出来ない。しぜん、その直下を取り合う形になる。


(それにしても、なんだあの小さな機体は。しかも相当馬力があるぞ)


 坂井は上方からの機銃を避けつつ、観察する。


 バババババババババ!


 機銃の発射速度がものすごく速い。しかもどうやら四基の機銃を装備している。音からしておそらく口径は十二・七粍か。あれが二十でなくてよかった。


 全長は疾風より、いや、零戦よりも短く、空戦性能は良さそうだ。これはよほど慎重にかからないといかんだろう。


 ふと見ると、一機の天山が新型機に追われている。


 坂井は慎重にその様子を見る。


 天山は振り切ろうと大きく旋回する。しかし敵機は大きな半径と、小さな半径という、ふたつのコースをとりながら、徐々にその距離をつめていく。


(手練れじゃあないか!)


 敵の飛行士はどうやら空戦に慣れ、しかもかなりの腕前みたいだ。これまでの海戦でもうほとんど優秀な操縦士は残っていないはずなのに、よくこんなエースを隠してたものだ。


 坂井はいったんダイブして降下すると、その旋回半径の中心に向けて機首を持ち上げた。すくなくともこれで天山の危機は救えるだろう。


 その視界に敵の機体を収めた瞬間、スロットルを押し全開にして加速する。照準よりも接近が大事だ。


 ぐんぐん距離が詰まる。

 

 あと二百……ようやく射程距離になったが、まだ遠い……百五十……もう目の前に敵が見える。まだだ……もう少し……百……。


 グオン!


 機銃のレバーに手をかけ、撃つ寸前になって敵機が軌道を変えた。


(気づかれた!)


 バンクした敵機が旋回の円から降下離脱していく。坂井は追うが、やはり速度が速く、これ以上は危険だ。


(失敗か……)


 唇を噛み、それにしても……と、坂井は思った。


 今海上に見えている空母艦隊は三隻だ。軽空母だから龍驤とほぼ変わらない搭載機数だとしても、百機は搭載できるはず。なのに、この空域にいる連中は戦闘機ばかりで、しかも三~四十機がいいところだ。


 なぜだ……?


(くそ。飛行機乗りの六割頭か)


 思わず自分の頭を叩く。


 六割頭、とは飛んでいる間は地上にいるときの六割しか考えられない、という意味だ。


 空母艦隊に針路をとる。


「坂井隊、いるか?」


「岸辺おります」

「飯田います」


 よかった。まだ列機は無事のようだ。


「空母を確認しろ。発艦中か?」

「……いえ、違うようです」


 やはりそうだ。


 敵はもう出すべき飛行機を出し、攻撃をすませている。


 搭載数百機を超えるはずの飛行機のうち、残りの六十機は攻撃に向かったのだ。


 坂井はチャンネルを切り替える。


「攻撃隊坂井よりC1」


『……こちらC1』


 龍驤の司令部が出た。


「空母艦隊の直掩機は約四十。攻撃隊はすでに出た模様。警戒されたし」


『……C1諒解』




 坂井からの報を受け、山本艦隊は四方への警戒を厳にする。


 残った二十機ほどの戦闘機を発艦させ、さらに爆装しない天山やわずかな零戦までも飛ばしていく。


 なにより航空機は早く、電探の探知距離は六十マイル(百キロ)がいいところだ。これは機速二百マイルなら二十分で到達してしまう距離であり、電探で発見してから発艦、では間に合わない。


「空母三隻なら、十分ありうるな」


 空母艦隊戦は先に見つけて叩くが基本、南雲からはそう聞かされていた。あとは消耗戦でどちらがより多くの攻撃機を相手に飛ばせるかが重要とも。


「電探に敵影!」


 情報管理室から報があがる。


「うん、来たか!」


「左百七十度距離六十、高度四千、機影……二十、いや、三十!」


「よし、敵から距離をとれ。航海参謀は艦隊を維持、直掩機は迎撃に向かえ。対空戦闘用意」


「二時の方向、全速前進」

「各戦隊は艦隊の維持せよ」

「機関砲、電探連動砲用意」


「対空戦闘……準備よし!」



いよいよ山本さんの真価が問われる……? ご感想、ご指摘にはいつも励まされております。ブックマークをよろしくお願いいたします。

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[気になる点] ゼロについての知識無しにベアキャットは作れんはずだが
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