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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第六章 原子爆弾編
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イギリスの暗躍

●12 イギリスの暗躍


 草鹿がダーウィンの鬼たちと戦っていたころ。


 合衆国ハワイ、オアフ島真珠湾太平洋艦隊司令部。


 チェスター・ニミッツはノックにこたえて、副官のアーサー・ラマー大尉を招き入れた。


「失礼します!」


 ポケットに手を入れて仏頂面をしていたニミッツが、ラマーの顔を見てわずかに微笑む。


「なにかいいニュースみたいだなラマー大尉」


「ええ、そうですとも」


 ラマーが笑顔になる。


「サンフランシスコ・ベイエリアのカリフォルニア州リッチモンドで建造していた、カイザー造船所の空母三隻がもうすぐ完成しそうです」


「あのミニ空母か? それは確かにいいニュースだが」


 ニミッツもつられて笑顔になる。


「報告では、あと三十日で就航できます」


「そいつはいい……現場は相当無理をしたな」


「ええ。二十四時間体制で事故や病人も多数発生したそうです。開戦以降、カイザーには緊急造船を命じておりましたので」


 カイザーとはヘンリー・カイザーのことだ。


 現代アメリカ造船の父と呼ばれる実業家にして、西海岸を中心に七つの造船所を所有しており、この太平洋戦争の開始直後から、空母五十隻の建造を軍部に提案していた。


「なるほど。あの爺さんも愛国家だったってことか」


 ニミッツは苦笑する。


 南雲艦隊との攻防で、一隻の空母もなくなっているアメリカにとって、その補充はなによりも重要な問題だ。そしてそれができるのは、パナマ運河に死活を握られる東海岸ではなく、西海岸に展開する造船所を持つカイザーだけだと言われていた。


 ただし、カイザーの提案していたのは護衛空母と呼ばれるミニ空母だった。しかし、南雲艦隊の行動を分析した結果、ニミッツをはじめとするアメリカ合衆国海軍の作戦指導部は、これを三隻機動運用することによって、南雲艦隊を撃破する作戦を立案していた。


「金儲けだけが生きがいかと思ってたんだがな……」


 ニミッツはすでになにかを考えているらしく、太平洋の海図を眺めている。


「あの空母にはたしか艦載機を四十機、搭載できたな」


「そのはずです」

「ふむ……」


 ニミッツは見事な銀髪を撫で、顎に手をやる。


 空母には当然、飛行機が重要だ。そしてそのためにはパイロットを用意しなければならない。しかし……。


「空母とともにパイロットは死ぬか拿捕されている。返還交渉にパイロットは含まれず、訓練もなかなかすすまん……か」


 三隻ともなれば、三百人のパイロットが必要になる。それを支える乗員の訓練だって必要だ。


「それでしたら、もうひとついいニュースがあります」


 ラマーが暗号電文を差しだした。


「ワシントンから?」


 電文を読む。


「合衆国大統領戦時委員会発、太平洋艦隊司令部。現在西海岸で行動中の日本艦隊を阻止するため、合衆国太平洋艦隊司令部は以下の英国の提案を検討されたし。ただし、現在大日本帝国との戦争継続については重大な岐路にあることを念頭に置くこと」


 もう一枚をそのまま声にして読み上げる。


「「わが大英帝国はアメリカ合衆国に対し、大日本帝国との停戦にともない栄光ある王立空軍ならびに空母艦載機乗員を百名規模で派遣する用意がある」」


「イギリスがパイロットを貸し出す、だと?」


「そういうことになりますね」


 ニミッツは笑い出した。


「あいつら、表では日本と停戦しておきながら、裏ではこっそりパイロットを派遣して戦うってのか?!」


 ニミッツの笑いはとまらない。


「こいつはいい。くだらなすぎる」


「では……断りますか? 重大な岐路とか言ってますし」


 ラマーがうかがうような目をする。


 ニミッツは笑いをとめて書類をパン、と机に置いた。


「……いや、ありがたく使わせてもらうよ。西海岸が危機にあることは事実だ。合衆国本土を守るのは喫緊の急務だからな。……だが、どうやってパイロットを輸送するんだ?」


「おそらく、王立空軍にはナチスドイツとの交戦が激化しておりますから、ほとんどは大西洋艦隊からアフリカを経由しての空輸かと」


「なら話は早い……か」


 ニミッツはすばやく計算する。武器の搭載、訓練、編成、それらを合わせると、ひと月あれば準備は整うだろう。あとは航海しながら訓練を重ねればいい。


「では例の作戦を正式に動かそう」


 現在南雲艦隊の動向は不明だが、南米方面に展開している小規模の艦隊は哨戒艇から報告があがっている。それを先にやっつけてしまえば、南雲艦隊にも相当なダメージを与えられる。


「すぐに作戦本部を立ち上げます。メンバーは……」


「たのむ」


「あ、それと……」

 出て行こうとして、振り返る。


「カイザーから、一号艦の名前を決めてくれと言われておりますが、提督からはなにかありますか」


 いつも艦名は現場が提言し、ワシントンが決定することになっていた。


「そうだな……」

 ニミッツは首をかしげた。


「カサブランカってのはどうだ?」


「カサブランカ……」


「映画を見てね。妻がハンフリー・ボガートのファンなんだ」





「おーい草……」


 つい草鹿と言いかけて、あわててやめる。

 そうだった、草鹿はいないんだった。


 こっちを向いて笑っている艦橋の兵士たちを見て、頭を掻く。


「すまん、どうもここんところ、のんびりした航海ばかりで、気が緩んでるな……小野はどこだ?」


「は。情報管理室かと」


「ああ、暗号の更新だったか」


 思いだした。


 本土から新たな暗号方式が届けられ、小野は今その対応に追われているのだ。


「じゃあ、そこは任せて他の連中だけでやるか。みんなを会議室に集めてくれ」


 いつもの司令官サロンへと向かう。空母赤城のサロンは、もうすっかり会議室として使われていた。


 部屋に入ると、さっそく大石や源田、そして雀部たちがやってくる。


 いつものことながら、帝国軍人の行動は迅速で気持ちがいいね。


「よし、これからの作戦を練るとしよう。大石、マーシャル諸島の海図は?」


「その前に長官、少し気になることが……」


「ん?どうした?」



ちょっと気が抜けてる南雲です。そこへチャーチルの暗躍が……。 ご感想、ご指摘にはいつも励まされております。ブックマークをよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アメさんの怖さは物量ですね。 護衛空母でも充分に戦果を上げたのがアメリカの怖さです。 贅沢言わなければ数か月で護衛空母の艦隊を設立出来ます。 搭載機も主翼を大きく折りたためるので数が増える…
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