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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第六章 原子爆弾編
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撃墜マークを斃せ

●8 撃墜マークを斃せ


 北の海は厳しく獰猛だ。


 少年は木船のへりに素足で立ち、銛を構えて海を睨んでいた。もう秋だというのに、袖のない粗末な着物をはおり、下はパンツ一丁である。


 しかし波風に耐える脚は強靭で、その眼は小学生とも思えぬ熱を帯びている。


 漁師でもない子供に、魚は突けまいと言われ、反発した。嘲る大人たちを見返すため、船を借り海に出た。ただし、まだ一度も突けたことはない。


(必ずやってやる!)


 なにごとにも果敢に取り組み、努力と工夫を重ねて粘り強く行う。それが警察官を父に持つ少年の、持って生まれた資質だった。


「いやあッ」


 海面にバシャっとしぶきが上がる。


 俊敏な動きで引き上げた銛の先には、体長六十センチもの大きなホッケが、ピンと張った尾を激しくふりながら暴れていた。


「やったああ!ざまあああ!……うわ」


 ドボーン!


 少し喜び過ぎたようだ。


 少年は海に落ち、せっかくの獲物を捕り逃がしてしまった……。




 樺太生まれの少年が、父親の勤務地変遷にともなって、北海道から島根へと移り住み、その後軍人を志した時、父親は当然のように反対した。


 四人兄弟の三男である少年には、上の男兄弟二人が家に帰ってこないぶん、地元に就職してほしいと願ったのだ。しかし少年の決意は固かった。


「俺は三男だから、国に命を捧げる」


 そうはっきりと告げ、1934年、呉海兵団に四等航空兵として入団した。


 その後、若者は整備兵から操縦員を志望し、1936年霞ヶ浦海軍航空隊に入隊。中国戦線に送られ、戦闘機乗りとして才能を開花させていくことになる。


 日本の撃墜王、岩本徹三の誕生であった。




 岩本は目の前の敵編隊を見おろし、しめた、と思った。


 使い慣れた零戦から疾風になり、


「疾風は確かに速いが、舵が重うて小回りが利かん」


 などと文句も言ったが、慣れれば倍の二千馬力はやはり気に入った。


(これなら、あの爆弾が使えそうじゃ……)


 疾風の馬力を生かして新開発の爆弾を使う空戦を、岩本は嶋崎に提案していたのである。


 岩本は友軍機の突入を見ている。


 ただし、まだ今は混戦がはじまったばかり。新型爆弾の使用はもう少し先にしよう。岩本は観察を続けた。


 一機の友軍機がぐうぜん二機の双発三胴機に追われだした。


 すかさず割って入り、司令部からの通達通り、両翼の真ん中を狙って一撃を加える。そこが操縦席なのだ。


 ガガガガ、ガガガガ!


 双発機はどばっと片側のエンジンから火が噴かせ、横転しながら落下していく。操縦士が直撃弾をくらったらしい。


 もう一機を狙いに行きたいが、今はまだ交代のときじゃない。


 岩本は冷静に観察役にもどる。


 今回の作戦では、四方から攻める部隊を、その中でも二つにわけて、片方は攻撃、もう片方はその間観察と掩護にあたると決めていた。


 掩護側は攻めている友軍機が背後を取られたりして不利な状況になれば、ただちに介入して敵を倒しにいく。これによって、単機の格闘だけではなく、編隊全体で勝率を高めようとしたのである。


 岩本は観察をするうちに、一機の敵機に目をつけた。


 のびのびと飛び、わざと大きな動きをして敵をひきつけ、双発三胴のから銃弾を叩きこみに行く。


 胴体には、おそらく撃墜した日本軍機の数だろう。奇妙な旭日旗がたくさん貼ってある。それは、桜のマークを撃墜数として貼っている岩本にはすぐにわかった。


(あいつだ!)


 本能的にそれが例の戦闘機だとわかる。


 この海域で、やたら威勢のいい敵がいて、暴れまわっていることは、岩本にも伝えられていた。こいつのせいで、もう何機もの帝国軍機が、未帰還となっているのだ。


 岩本は無線をとりあげる。


「岩本隊、そろそろ行きます」


 その声に反応するように、くん、と機首を持ち上げた友軍機があった。嶋崎隊長の機体だ。


『……よし、頃合いだ。掩護交代せよ』


 その合図を聞くともなく、岩本は列機とともに混戦空域へと突入していく。


 ガガガ、ガガガ、ガガガガ!


 やはり空戦の基本は一撃離脱だ。


 敵の翼が飛び散り、たちまち撃墜されていく。


(さあ、どこへ行った)


 いったん下へ抜け、背面からひねりを加えて宙返りでもどる。


 左に切って一撃、こんどは馬力を生かして離脱しておき、反転してもう一度掃射する。


 ガガガガガ、ガガガガガ!


 また一機、敵が墜ちていく。


 混乱が敵の編隊に広がっていく。


 そのとき、僚機があの撃墜マークに向かっていくのが見えた。


 射線が重なり、このままでは相打ちになってしまう。そう見た岩本は、無線に指示を飛ばす。


「おい岸、相打ちになるぞ。撃ってきたら躱せッ!」


 そう言って、僚機の後ろに着く。


 慎重に射線を微妙にずらしておく。やや下につき、目線は例の敵機を睨む。


 ババババババババババ!


 双発三胴機は、大量の銃弾を撃ちだした。


 ひらりと岸がバンクして、いなくなる。すかさず岩本が上昇して、敵機と向き合う。


(さあ来い!)


 ババババババババ!


 三胴機が撃ってくるタイミングで、岩本はくるりと横転して背面になった。


 その一瞬後、こちらから二十粍機銃を掃射する。


 ガガガガガガガガガ!


 敵がぎりぎりで上昇し、銃弾を躱すのが見える。


(やるなあ……)


 背面のまま下降して宙返りしつつ、水平に戻す。


 勘で敵機の位置を計り、さらに横転しつつ宙返りで追う。飛んでいるときの彼には、背面も横転も関係なかった。


(あれだな?)


 撃墜マークの敵機が四十五度のきれいな迎角で昇っていく。


 わざと並走して目を向けると、操縦席の男がふりむく。


 一瞬目があった。


(笑ってやがる……)


 馬力にものを言わせ、翼をふって離れていく。しかし微妙に右へ左へと機体を振り、後ろにはつかせない。後ろに目があるようだ。


 ふりかえると僚機がいない。別の戦闘に入ったのだろう。


 岩本は冷静に状況を判断する。飛行する先には双発三胴の敵機が数機ばかりいて、どうやら俺を誘い込む気らしい。友軍機は見えず、このままでは一対多数になりそうだ。


(だが……それがいい)


 夢中に追うふりをしつつ、タイミングを計る。


 撃墜マークがあの機体で器用に宙返りをはじめた。


(撃ったら横転して反撃する気だ)


 瞬間的に悟る。


「こちら岩本、これより三号爆弾を使用する」


『諒解。各機近づくな』


 ガガガガ!


 機銃を軽く撃ち、注意を引きつける。


 付近の敵機がこちらを狙って撃ち始める。


 バババババババ!


 いくつかの銃線を横転して躱す。そのまま背面飛行になる。


 敵機がさらに集まってきて、岩本に集中攻撃をはじめる。餌食とでも思ったか。


(よし、今だ!)


 爆弾を切り離す。


 一気に高度を下げる。


 爆弾がひゅん、と飛んで敵機の降下と交差する。


(……よし)


 ドオオオオオオオオ――――ン!

 ババババババババババ!


 三号爆弾は空中で爆発をおこし、シャワーのように半径百メートルもの範囲で榴弾子を撒き散らした。


 数機が一瞬にしてその弾に貫かれ、爆発をおこす。


 さらに燃えつづける弾子は飛行する敵機にあたり、機体を貫いて誘爆をおこさせた。


 岩本は十分な距離をとりつつ、戦果を確認すると無線で報告する。


「三号爆弾成功セリ。敵四機撃墜、二機大破……こいつは、使えるッ」



岩本さんが三号爆弾を使っていた記録があります。ここではまだ近接信管が搭載されておらず、時限式という設定です。ところでボングは……? ご感想、ご指摘にはいつも励まされております。ブックマークをよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] (*゜∀゜)=3つ★★★★★
[良い点] ボングが逝ったらトーマス・マクガイアが居ます。 >ボングに次ぐ38機撃墜です。 遠慮無く逝かせてください。 3号爆弾は岩本徹三の必殺技の一つになりました。>トラック諸島迎撃戦で大量に撃破し…
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