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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第五章 北の海編
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アメリカを全滅させてソ連を脅す

●22 アメリカを全滅させてソ連を脅す


「まずは詳しい戦果をたずねてくれ。敵北艦隊の状況だ」


「わかりました」


 なにがしかのやりとりの後、草鹿が戻ってくる。


「第一次攻撃隊の戦果を申し上げます。敵空母一隻に雷撃 ひと、駆逐艦一隻撃沈、二隻大破、つまり、敵の現有勢力は空母、巡洋艦一、駆逐艦一、あとは水雷艇です」


「敵さん、ボロボロじゃないか」

 思わず吹き出してしまう。


 たしかにこれでは、追撃しないわけにはいかない。


 やはり、先の艦隊決戦やトラック沖海戦を経て、円形陣に対する水平移動や駆逐艦雷撃の練度が増した帝国海軍航空隊の攻撃力にはすさまじいものがある。おまけに、飛行機は疾風や天山であり、無線による戦術の優位もあった。


「つまり、ほぼ空母は丸裸ってか?」


「そういうことですね。ここは一気にやってしまうべきかと。空母は沈めてしまわないとすぐ修理されます」


 おれはうなずく。


「わかってる。だが、こちらも今は敵の攻撃にさらされているんだ。那智にうまく攻撃を誘導したものの、さすがに空母隼鷹から第二次攻撃隊を発艦させはじめると、敵機もこちらに向いてくるだろう。なにぶん、ここにいるのは弾切れ隊だからな……そこでだ」


 おれは海図を開いた。


 アリューシャン列島全体を網羅したもので、敵の位置として南と北に大きく丸を描いてある例のやつだ。


「これを見てくれ。敵とわれわれはこのアダック島西の海域で、互いに攻撃しあった。隼鷹は北艦隊と、飛鷹と龍驤は南艦隊とな」


「はい」


 おれは赤鉛筆を取り上げ、四本の攻撃線を描き、龍驤へ向かった矢印にバツを打つ。


「さいわい、龍驤は敵南艦隊の攻撃隊をすでに追い払い安全になり、攻撃の方は飛鷹、直掩隊の加勢もあって数的優位にある。ところが、こちらの隼鷹はピンチで、おまけに第一次攻撃隊ではしとめきれてないと来た」


「そう、ですね」


「そこで、この龍驤と飛鷹の南艦隊攻撃隊を、今すぐ北へ送りたい」


「……」


 矢印を敵の南艦隊から北へと描く。

 草鹿は目を見開いてそれを見つめている。


「まずは北を優先的に各個撃破するんだ。そうすれば今ここにいる編隊は母艦を失うから撤収せざるを得ない。もっとも、アダック、アトカには航空基地があるから、連中が海に落ちることはないけどな」


「なるほど」


「だが言っておくが、それだけじゃ終わらんよ。おれは人使いが荒いんだ。ここにいる敵が引き上げたら、第二次攻撃隊を出し、さらに弾切れの連中を隼鷹と飛鷹に収容、補給したら再び出撃させる。そして南艦隊、次は島の航空基地とを順に叩きつぶすんだ。……もうそろそろ、敵もこっちの電波兵器の威力が分かってきて、まともな艦隊戦はヤバイと気づいてるころだから、今こそ徹底的にやっておかないと、次のタイミングがない」


「たしかにそれはヤバイすね」

 おれたちは笑った。


「わかりました!ただちに命令を出しましょう」

 草鹿が顔を上げ、目で敬礼する。


「たのむ。南を攻撃している連中が爆弾や水雷をなくしたら意味が無いからな。六十マイルなら、十分もかからない。すぐに攻撃目標を南艦隊から北へと変更せよ」


 草鹿が角田や清田、それぞれの艦隊責任者に攻撃隊目標変更の命令を下す。司令部の命令に逆らうはずもなく、この意表を突く作戦にもいたってスムーズに応じている。


「さてと、お次は……」


 命令系統が落ち着くのを待って、次の手を打つことにする。


 今回はまったく忙しい。


 それもこれも、いつもならあれこれ分業で任せられる参謀が、今回は二人しかいないからだ。


「通信員、角田と話がしたい。おれにマイクをくれ」


 連絡が一息ついた草鹿が、不思議そうにおれを見る。


 なにか言いたそうにしているのを手で制し、別の海図にむかう。アッツ島海域の少し大きな海図だ。


 青えんぴつで丸い点を打つ。


 アリューシャ列島の一番西の島、今回おれたちが占領の目的で物資を水揚げしているアッツ島から、さらに西に百マイルの場所だ。


 例の、ソビエトの潜水艦がいるとされている海域である。


「長官、角田司令官です」

「よし」


 おれは通信員の座る机に近づき、マイクを握った。


「音声はスピーカーに出してくれ」


「はっ……どうぞ」


 がしゃ、っという雑音がして、通信卓のスピーカーに相手の気配がする。おれはマイクのボタンを押して、口を近づけた。


「こちら南雲、角田航海参謀いるかい?」


 草鹿がにやっとした。


 角田にはまだ『南雲艦隊の航海参謀』というような、任せ方はしていない。


「「は、はい。角田です」」


「知っての通り、アッツ島の西百マイルにはソビエトの潜水艦が機関故障のため漂流しており、これを警護しろとの大本営命令だ。こっちの戦闘はもうすぐすむから、全艦隊をこの潜水艦に向かわせたい。おまえが指揮をしてくれないか」


 ボタンを離す。


 スピーカーから向こうの音が聞こえるが、声は聞こえない。おそらく真意を考えているんだろう。


「「全艦隊で、ですな?」」


「そうだよ」


「「……アメリカ艦隊からの警護ですか?」」


「いや、アメリカ艦隊はもうすぐ全滅する。そのあとの話だ」


「「……」」


「ソ連の潜水艦はおれたちを見に来ている。だったら、見せてやろうじゃないか。……取り囲んで」


「「ぶふぉ」」

 なんか、変な音がした。


「おれたちの艦隊は多勢のうえ、およそ半径二百マイルにも散らばっている。哨戒で潜水艦の位置をつかみ、みんなをうまく動かすのは至難のわざだ。おれってそういうの得意じゃないから、そっちでやってくれよ。いいかい?」


「「わ、わかりました」」

「じゃあ頼んだよ。角田航海参謀」



いつもご覧いただきありがとうございます。南雲ッち冴えまくってます。 ご感想ご指摘お待ちしております。また、ブックマークをお勧めいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ペテン師が新たな悪だくみを始めたんか
[良い点] 視点が広いうえに現場の描写も重厚。 [一言] いやいやなかなかこれだけの戦略、戦術にバランスの取れたものは読んだ事がありません。なぜか昔読んだ「丸」の実体験戦記ものを思い出します。40年前…
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