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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第五章 北の海編
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五二型は無線が優秀?

●9 五二型は無線が優秀?


 とにかくもう一度反応を見る必要があった。


 反応があって次の着色料が海面に落ちれば、その二点で目標がどこに向かっているかを知ることができ、それがわかれば、敵の進行方向すら、おおよその推測ができるのだ。


 隊長機である桜山たちは、最初の反応地点を中心に、渦を描くように旋回を始めた。その周囲を、他の四機がさらに大きな同心円を描く。


 レシーバーにサアッというノイズが走った。


「……こちら三番機、磁気反応あり」


「諒解。そのまま旋回せよ」


 着色料投下は一機につき三回まで作動可能だ。それまでは、投下を続ける。


 桜山は風防から顔を出して位置を確認する。


 深い緑の波間に、黄色い塗料で着色された部分が二か所、ゆっくりと海を漂っている。


 もう間違いない。この海には、潜水艦がいる。




 ただちに百キロ四方を俯瞰する哨戒機が海域にやってくる。


 この時点で、着色反応は五つを数え、海域にはさまざまな色が漂っている。


「磁気探知による着色料を確認」


 そう哨戒機からの報告を聞いたおれは、ただちに駆逐隊への指示を行った。


「南北を駆逐艦で封鎖、四隻は海域に爆雷を投下せよ。バルディア島東部には潜水艦をまわせ」


「第一、第六駆逐隊は取舵左二十、北へ移動しろ」

「第二十一駆逐隊は面舵二十、南にまわれ」

「第七駆逐隊および第十三駆潜隊は着色海域に爆雷を投下せよ」


「空母隼鷹、飛鷹は北の駆逐隊に、龍驤は南に回頭して敵の艦載機にそなえろ。哨戒機も増やせ」


「海域に駆逐艦が出払って空母ががら空きになるのは困る。うまく外に出ろ」


 司令部が一気にあわただしくなる。

 各人が的確な指示を次々に行う。

 

 潜水艦は遅いが、その退治はなかなか困難で、うっかりすると手痛い反撃にあうこともままある。


 史実でやられたということは、おれたちだって十分その危険があった。


 きっと、ここには腕利きの潜水艦乗りがやってきているのだ……。




 潜水艦発見の報があってしばらくすると、那智の電探に反応があった。


 今回はにわか作りの艦隊ではあったが、さいわい重巡洋艦の那智には最新鋭のレーダーが搭載されていた。


「方位角三十に反応。機影わずか」

「偵察機だろう。疾風で墜とせ」


 ようやく敵の哨戒機がやってきたようだ。


 電探技術のおかげで、一歩早い手が打てている。おそらく、彼らはバルディア島近海でおれたちを雷撃したあと、哨戒機がおれたちの移動先を報告し、攻撃隊を飛ばしてくる気だった。


 だが、残念ながら敵の潜水艦も哨戒機も、彼らの多くは海の藻屑になるだろう。


「こちらの哨戒機はどうだ、まだ敵艦隊の報告はないか」


「まだ、ありません」


「しっかり探せ。かならずいる」


「はっ!」


 まだ心配なこともあった。


 最新鋭のレーダーは那智にあったが、あの新兵器、電探連動高角砲は同じく那智と、空母龍驤に、それぞれ四機しか間に合っていない。


 本来ならすべての駆逐艦に配備して、鉄壁の防御をとりたかったが、それはかなわなかった。だから艦隊から一万五千メートル以上離れた場所でほとんど撃墜しておく必要がある。


 そのぶん、今回の艦載戦闘機は、龍驤はすべて疾風と天山、商用隼鷹と飛鷹にもほぼ半数の新型機が艦載されていた。これでいつF6Fが大量にやってきても、大丈夫だ。


 さらに……。


「なあ草鹿……」

「は?」

「あれ、楽しみだな」

「あれって、なんですか?」


 草鹿がなんのことかわからず、おれを見た。


「ほら、あれだよ。理系学生の大量動員で完成が早まった零戦の……」


「ああ!」


 言われて、草鹿は狭い隼鷹の左舷艦橋から下を見おろす。


「……いますよ、ほら!」


 おれも釣られて窓を覗きこんだ。

「おお、いるいる」


 おれは目を細めてその姿を見つめた。


(やっぱ、格別だよなあ……)


 そこには零式艦上戦闘機五二型の雄姿があった。




 そのはじめて実践投入される、新型ゼロ戦、五二型の操縦席にいるのは、小八重幸太郎こやえこうたろう一等飛行曹長だ。1923年生まれの弱冠十九歳。まだ血気盛んな若者である。


 すでに何度も試験飛行や訓練はおこなっていた。

 

 空母瑞鶴で任務についていたところ、新型ゼロ戦の試験搭乗員を募集していると聞いて、真っ先に申し出た。


『弘法筆を選ばず』


 旧型の二一型をそううそぶいて操りながらも、完成が早まったと聞いた新型ゼロ戦に、興味は隠せなかった。


 小回りは効くが馬力に不満のあるゼロ戦がどう変わったのか、噂によれば上昇時の体感がすごいらしいが、本当なのか。


 逆に、南雲司令長官の助言で強化された防弾装備は邪魔にならないのか、どうしても自分が実際に乗り、試してみたかった。


「でさ、この新型機ってどうなんだい?」


 甲板の兵士が問う。


 小八重はそのやや乱暴な物言いに憮然として、


「無線が便利」


 と、一言だけつぶやいた。


 実はこの五二型には、天山や疾風に搭載された新型のFM無線機があった。


 その無線に司令が入る。


「各機、エンジン回せ。敵艦隊を発見した」



いつもご覧いただきありがとうございます。南雲ッちの先導で工業力と資源の確保はすすみ、ついに52型も投入されます。ご指摘、ご感想お待ちしております。とても励みになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦か……
[気になる点] 「艦上零戦戦闘機」は「零式艦上戦闘機」では?
[気になる点] 「北進してへむかえ」は「北へ向かえ」または「北進せよ」では?
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