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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第三章 覚醒編
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待てない時間

●41 待てない時間


 一機がふらふらになりながら、こちらに向かってくる。例のロボット高角砲は弾が切れたようだ。さすがに弾倉の取り換えは人間がやるから、その瞬間は他の高角砲でやるしかない。


 そいつが爆弾を投下した。


「退避~~~っ!」


 爆撃機にしてはかなり低空なのは、まともに飛べないせいだろうか。まさにポイッという感じで投下装置が爆弾を投下する。


「くるぞっ!」


 三連装二十五粍機銃が乱射されているなか、翔鶴のほんの百メートル上を、B25がふらつきながら通過する。


 ド――――――――ン!


 水柱が艦橋からは見えない海面にあがり、船が大きくうねった。


 直撃にしては振動が弱い。爆弾はかろうじて手前に着水し、被弾はさけられたようだ。


 反対側の海上へと抜けたB25が、そのまま、海面へと落下する。


 バシャァァァァァァァ!


 衝撃で胴が折れ、中から乗組員が放り出されるのが見える。

 艦橋の窓から上空を仰ぐが、飛んでいるのはゼロ戦ばかりだった。


 高角砲も沈黙している。

 いつのまにか、B25はすべて墜とされていた。


 おれはため息を吐いた。


「敵の乗組員を収容してくれ。……みんな、よくやった」




 敵空母への攻撃を命じられた嶋崎は、少し暗くなった海域に、その艦隊を見つけた。


 小雨がそぼ降り、曇り空だが、海上はよけいな反射がないぶん視界良好だ。二キロほども先の海上に、大小の黒い船影が六つ浮かび、その上空を護衛の戦闘機が舞っている。


 一見してわかるのは、彼らが二隻の空母を数百メートルという、至近距離で運用していることだった。おそらく、レンジャーにはB25しか搭載しておらず、そのためワスプは護衛に並走せざるを得なかったのだろう。駆逐艦四隻もこの二隻の空母を囲むような陣形で進んでいる。


 嶋崎は無線士に、母艦への報告を命じた。


「前方に敵艦隊発見セリ。これより攻撃する」

 翼をふって僚機にも合図を送る。


「待て嶋崎」

 母艦からは意外な返答が来た。


「待てとはどういうことか」


「こちらはかたがついた。これより六機編隊を二つ出すゆえ、増援を待って攻撃を開始せよ」


「……?」


 たしかに、嶋崎隊は爆撃機三、戦闘機三の計六機だ。それに対して、敵の護衛機は……五機は飛んでいるし、これからも離艦してくるから、あきらかに数的不利だ。


 が、F4Fとの格闘には今のところゼロ戦に分がある。

 それに、こっちが発見したと言うことは……。


 上空を旋回していた戦闘機がこちらに向かってくるのが見えた。

(ほうら、おいでなすった……)


 しかし、カタがついたとはどういうことか。あの頑丈なB25の編隊が、すべて墜とされたというのか。


 嶋崎はふたたび無線士に向かって言う。

「待てん」


 無線士が返事を送る。

「嶋崎隊、待てない。敵機に発見されたため、これより攻撃に移る」


「諒解」


(待てと言われても、待てませんぜ)


 味方のゼロ戦が、嶋崎機と並ぶ。横を見ると笑って敬礼をしている。嶋崎が軽く返すと、ゼロ戦は敵機にむかって速度をあげ向かっていった。


 敵機のうち、こちらを迎撃するのは四機だった。一機が空母の護衛に残り、二機ずつが組んでこちらに来るようだ。


 嶋崎はそれを見ながら、爆撃隊の友機二機を率いて速度を落とす。


 いったん上空に逃げ、敵の戦闘機をやりすごす。


 すぐさま、後席の機銃手が追ってくる敵機を狙って銃撃を開始している。この機体には後方に上下の両方へ撃つことができる十三粍の機銃設備があった。


 ガガガガガガガ、ガガガ!


「一機撃墜~っ」

「早いな。下か」

「下です!」


 敵は下へ撃つことが出来るとは思わなかったのだろう。


 大きく旋回し、相手戦闘機との距離を保ちながら、海上の空母を睨む。


 攻めどころを探す。ここからは各機の器量しだいで自由に雷撃させよう。


「嶋崎雷撃隊、各自の判断で攻撃セヨ。目標、敵空母二隻」


 高角砲がバババっと黒煙をあげる。


 一瞬なにも見えなくなる視界。そこへ機銃の曳光弾も飛んでくる。これ以上近よるのは危険だ。


 海上を見ると、空母二隻が、徐々に別方向へとわかれはじめている。


 嶋崎は新たな戦闘機が発進しようとしているワスプを目標に定めた。特に理由はないが、現在地との関係が雷撃に適していたのと、やはり一機で離艦させないようにする方がいいからだ。


 空母の進行方向と速度を目測で予測し、水雷の投下点を決める。


 爆撃機の角度を見てスロットルレバーを全開する。


「いくぞ!」


 高角砲をかわしながら、機体を左右にふる。その姿勢で空母への進路を決める。ワスプは思った通りのコースで、移動しつつある。


「発射!」

 水雷投下レバーを押す。


 胴体から重い水雷が送りだされ。ふっと機体が軽くなる。その勢いのまま、バンクして離脱する。


 右へ素早く旋回する。雷跡を確認するためだ。

 上空へ移動しつつ、魚雷の行方を追う。


 どうだ。いけるか?

 まずい!駆逐艦が割り込んで来た。


 砲撃で水雷を破壊する気だ。

 雷跡にむかってやたらと機関砲を乱射している。


 やられるなよ……。


 雷跡がすうっと消えたかに見えた直後、


 ド――――――――――ン!


 水柱があがった。


 祈るようにして見るが、空母に黒煙はあがっていない。


「駄目です!」

 後席で無線士が叫ぶ。


 空母ワスプの右舷後尾部を狙った嶋崎の水雷は、駆逐艦の砲撃により途中で破壊されてしまったのだ。


「くそ~~~っ!」


 九七艦攻の行方を捜す。二機の僚機のうち、一機はすでに雷撃をしたあとで、どこにも煙が上がっていないところを見ると、そちらも外したらしい。もう一機はまだ腹に水雷を抱いている。それは空母レンジャーを狙っていた。


「増援はまだか」


 あれから十分にはなる。そろそろ後で離艦した隊が来てもいいころだ。あいかわらず敵艦の抵抗は激しいが、少なくとも一発は命中させた。今がチャンスなのだ。


「僚機が!」


 無線士が叫ぶ。見ると、魚雷を抱いていた九七艦攻が砲撃にやられて翼を破壊され、激しく回転しながら海に落ちていくところであった。


「ちくしょうっ!」


 このままでは、三機の爆撃隊は成果なし、となってしまう。





いつもお読みいただきありがとうございます。嶋崎の操る機体はのちの天山という設定になっております。感想やブックマークをありがとうございます。とても励みになっております。

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[一言] 握りこぶしをつくってしまう……
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