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太平洋戦争の南雲忠一に転生!  作者: TAI-ZEN
第一章 真珠湾攻撃編
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第三次攻撃出撃セヨ

●11 第三次攻撃出撃セヨ


 青空を駆ける艦載機が、降下に向けて翼を大きく傾けたとき、空母『赤城』の甲板では大勢の兵士が、はじけるような万歳でこれを迎えた。


 第一次攻撃隊が戻ってきたんだ。

「草鹿、源田、吉岡、行こうぜ!」


 おれは参謀長の草鹿と、航空参謀の二人、源田と吉岡をともなって甲板に駆け降りた。

 淵田飛行隊長が真っ黒い顔をして九七式艦上攻撃機から降りたった。キャノピーを開けて、黒煙の中を飛んだんだろう。


「やったね!淵田ごくろうさま!」

 おれは淵田の手を取り、ぶんぶんと振った。

 他の参謀たちもニコニコとして声をかける。


「いやあ、よくやってくれた!ありがとう!ありがとう!」

「お見事です!」

「うん、実に愉快だ!」


 おれたちにとつぜん歓迎されて最初はとまどっていた淵田も、やっとほっとして白い歯を見せた。


「ありがとうございます!」

「いやいやいや、すごい成果だ。おまえにしかできないことだと思うよ」


「しかし、司令官の言われた通り、水雷を先攻したのは正解でした。あのまま信号弾を撃っても、風が強くて、見落としたかもしれません」

「それはよかった。ところでさ、敵さんに異常はなかったかい?実は寸前にモールスで攻撃通告をしたんだ」

「あ!あれがそうだったんですか。英語だったのでわからなかったんです。敵の動きも特には…」


 おれはほっと胸をなでおろした。


 まさかとは思っていたが、あの事前通告で敵が基地に保有する四百機もの戦闘機を一斉にとばし、向かってくる壮絶な地獄絵図だって、ありえたからだ。そうなればこちらが全滅する可能性すらあった。


「それは……本当によかった……まあ、つもる話がある。中に入ろうぜ」

 艦橋へと淵田を連れて行く。


 部屋に入ったとたん、司令官たちがいっせいに沸いて、こぞって握手を求めた。


「おお飛行隊長!よくやった」

「敵の反撃はどうだった?」

「接近時は敵高角砲の反応が早くて、おやっと思いましたが、平気でした」


 みんな、口々に質問を投げかけてくる。


「味方の被害は?」

 淵田はこの時だけは真顔になり、

「おそらく二~三十ほどでしょう」

 と、撃墜された機数を答えた。


「ところで淵田、空母はやっぱいなかったよな?」

 ひとしきりしたあと、おれは尋ねた。


「……残念であります」


 高い上背を少し丸めた淵田は、

「第二次攻撃隊も空母は見つけられへんのですか?」

 と、源田航空参謀に大阪弁で尋ねる。


 二人は関西出身なので、つい気が緩むんだな。


「見つからへんな。……どこにもおらん」

 源田が悔しそうに言った。


「空母の位置ならわかるよ」


 みんなが驚いておれを見た。


「たぶん戦争に備えて、ミッドウェーやウェーク基地に航空機を増やそうと運搬しているんじゃないか?だとすると、敵空母はここからミッドウェー島までの二千キロの間にいることになるな」


 おれの名推理に、みんながはっとした顔になる。

 ……まあ、史実を言ってるだけだけなんだけどね。


「だがそれはあとだ。敵の空母はいずれ叩くとして、まずは真珠湾を壊滅させなきゃな。でないと、うしろから撃たれることになる。淵田、ゆっくり休め、と言いたいところだが……」


「いえ!何度でも出撃します!」

 よかった。淵田、やる気まんまんだ。


 おれは吉岡航空参謀を見た。


「わるいけど、第一次攻撃隊にはもう一仕事してもらいたいんだ。できるかな、吉岡航空参謀」

「はい。第三次攻撃ですね?」

「うん」


 さすが吉岡って冷静だな。


「目標は、残存戦闘機、修理工場、オイルタンクだ」


 夕べ根回ししてあっただけに、草鹿も淵もすんなりうなづいてくれる。やっぱ、根回しって大事だよ……。


 草鹿がなにかを計算しはじめた。


「え~と、今が十一時前ですから……全機帰投、格納、整備、給油、水雷と爆弾の積み込み、飛行士の準備その他考えても……1630には発進できます」


「んじゃ、それでたのむ。……淵田、それまでゆっくり休んでくれ。まずは風呂に入ってその顔洗ってこい」


 淵田は笑顔で敬礼し、退室していった。


 おれはあらためて艦橋から下を見渡した。こうしている今も、窓の外では続々と艦載機たちが着艦している。


「みんな、聞いてくれ」


 居ずまいをただす一同を前に、おれは自分の考えを話す。


「まずは奇襲が成功してよかった。源田、吉岡、ありがとう」


 源田と吉岡の両航空参謀が敬礼する。


「しかし、みんなも知ってのとおり、やっぱ空母がいないんだ。空母だけじゃない。空母がいないってことは、空母三隻に随行する最新鋭の護衛船団もいないってことだろ。これじゃあこの真珠湾攻撃の意味がない。」


 おれは真珠湾攻撃が終わっても、このまま空母を追いかけるつもりだった。

 もちろんそうすることで、数日は史実より時間をロスするが、あとでいくらでも追いつける。


「つまりだ、さっきも言ったように、おれは相手空母がミッドウェーとハワイの間にいると睨んでる。だからまずは三次攻撃を行い、真珠湾の航空機、修理工場、オイルタンクを徹底的に破壊したうえで、その後は、敵空母との決戦に挑みたいと思う」


「賛成や!わが航空部隊は徹底的にやりまっせ!」


 源田が打ち合わせ通り、助け舟を出してくれた。


 吉岡もこれにつづく。

「やりましょう!」


「ありがとう。おまえらの意気は頼もしいかぎりだ。だけど、ここに問題がひとつあるんだ」


 みんなは黙っておれの次の言葉を待った。


「もしも、仮に米空母エンタープライズが朝八時の時点でオアフの南西二百二十海里の地点にいて、急報を受け時速二十五ノットで帰ってくるとすると、真珠湾到着には約九時間、つまり1700にはオアフに来ることになる。さっき言ってた第三次の出撃は何時だ?」


「ひ、1630、でしたよね?」

 草鹿がおずおずと答えた。その意味するところを考えて、青ざめている。


「そういうことよ。つまり、この第三次攻撃は、つねに敵空母からの攻撃を警戒しながらやらないといかんことになる。なんせ十七時を過ぎたらもういつやってきてもおかしくないんだ。おれたちが真珠湾に行けるってことは、敵空母の艦載機だって、こっちに来れるわけだかんな」


 これは本当の話だ。史実でも、敵空母はオアフの北にいる南雲艦隊に、単に気づかなかっただけなのだ。


「どうだろう。それでも、この第三次攻撃の遂行と、敵空母との決戦に賛成してくれるかい?」


 みんなの顔をみる。


「賛成っす!」

「異議なし!」

 口々に言う。


 おれはほっとした。


 史実を知っているとはいえ、結局はこの場の空気がものを言うからな。みんなを説得できるかどうかが、一番気になっていたところだ。


「みんな、ありがとう!……よし、そうと決まったら、善は急げだ。通信参謀、第二航空戦隊の山口、第五戦隊の原にもその旨の伝令を出してくれ。ただし大本営にはまだ知らせるな」


「わかりました!」

 小野通信参謀が敬礼でこたえた。


 例の宣戦布告電信が原因で、その時点での艦の位置は敵に知られているおそれがある。だから今、艦隊は全速力で移動して、位置をごまかそうとしている。


 そのため、まだとうぶん大本営に無線を飛ばすことは出来ない。


「源田、吉岡、第三次攻撃の目標は相手基地を徹底的に破壊することだ。くり返しになるが特に敵戦闘機、修理工場、そして重油タンクは絶対にやってくれ。それとな……」


 おれはにやりと笑った。


「まず、飛行機隊には飯を喰わせてやって。腹が減ってはいくさはできん、だろ?」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 源田さんは広島県呉市出身です 地元の旧制中学校を出て、江田島の海軍兵学校に進んでいるので広島弁を話されていたのでは?
[気になる点] 口調がどうみても50代の発言ではないのですんなり受け入れられてる事に違和感が。
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